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愛について。⑧

代わりに、後ろに何人も部下を従え、怒りで無表情になっているルイ君の姿に驚くばかりだ。 「ルイ君、ありがとな」 「吾妻君の為なら、うちの親も寛大なんだ。土御門家の財力のサポートでうちは議員一族って言われるまで成長できたらしからね」 俺の顔を見ると、照れくさそうに真っ赤な頬を人差し指で掻く。 そんなルイ君のお陰でこんなスピード解決になった。 けどルイ君が居なかったら無理だったかもしれない。 暇は自分の生い立ちや気持ちや感情は表に出さないし、発見するのに時間がかかっただろう。 暇は、閉じ込められていた今でさえ、別に何事もなかったような振る舞いだし。 *** 「あのさ、暇を助けてくれた子は、すげえ弱くて繊細な子でさ、それでも暇を助けたいって立ち上がってくれた子なんだ」 「へえ」 「自分が一人だとか、自分は一人で良いとか、勝手に思うなよ」 俺がもっと格好良く伝えられたらよかったんだけど、情けなくもそんな感じでストレートに言ってしまった。 「何してるんですか? 暇さん、来てください」 襖が開けられ、花渡が俺たちに早く来いと促した。 「花渡、本当に来てたのかよ」 わーお、と外国人並みに暇が驚くけど花渡は嫌そうな顔で睨む。 襖を開けた向こうでは、数人のどう見ても普通じゃなさそうな迫力ある方々、そしてルイ君が座っている。 「え、未成年!?」 「大学生だから。暇の命の恩人だから」 ルイ君の隣にも、今にも全員切り倒しそうな強そうなおじいさんが座っている。 「初めまして。暇さんの熱狂的なただのファンのルイです。後の処理は俺がしますので」 キラキラと輝くルイ君の瞳に、暇が固まって俺と花渡を見る。 ルイ君の隣に居る方はルイ君のお世話係兼顧問弁護士さんで、今回花渡の隣にも暇の相続手続き等に呼ばれた弁護士もいる。 向こうの暴力組員たちも、法的な手続きの前では案外大人しい。 「えっと、ありがとう? あーでも複雑。こんな純粋そうな男の子に迷惑かけちゃったかあ」 「そ、そんなことないです! 俺が一方的にしていることなので、大丈夫です!」 ルイ君の迫力に、流石の暇も呆然としている。 確かにこの汚れたメンツの中で、ルイ君だけは場違いなオーラを放ってるけど、暇は暇でそんな彼を巻き込んだことに焦っているようだ。 「あとでサインください! で、さっさと遺産放棄の手続きしちゃいましょう。こんな古臭い名前に縛られた金のない組なんて暴力以外怖がることはないですよ!」 「きゃールイ君、頭が空っぽの連中を刺激することは止めてあげてー。一応あれだから! 低級な奴らはナニするかわからないんだから」 暇も我に帰るようにルイ君を止める。 そんな暇を見て、花渡はひざ裏に蹴りを入れた。 「さっさと座って、手続きしてください。貴方の弁護士と一応私、そしてルイ様のお力と土御門家で、この事件は穏便に済ますことになりましたので、経緯をご説明します」 「はいはーい。あ、難しい事は分んねえからな」 「大丈夫です! 俺が説明しますから任せてください」 「うわ、ルイ君やっば。まじ良い人」 暇は茶化しながらも、俺に冗談で口説くようなセリフは一度もルイ君には言わなかった。 からかわない方が良い相手だとは分かるらしい。

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