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愛について。⑨
向こうの組の弁護士と花渡、そして急遽担当になった暇の弁護士、そして念のためにと録音まで始まり、俺は居心地の悪さを感じていた。
難しい話はよく分かんねえなと暇を見たら暇も同じ気持ちなのか、苦笑いした後、俺の耳に顔を近づけた。
「あのさ、ルイ君にお礼は身体で払えって言われたらどうしよう。チンコ起たないって正直に言っていいの?」
「そんなこと、言わないよ。そんな人じゃないし」
「えーでも此処までしてもらって何もないってどうよ。あ、掘られようか。そっちならできるかも」
「……」
ルイ君の方が華奢だし、暇を押し倒す想像が全然できないと言うか絵面的にちょっと俺には無理だ。
「あ、俺のAV! 俺のAVなら全部やるよ。サインも、使用済みのパンツとか」
「あのさ、今、暇の為に花渡たちが頑張ってるんだから静かにしてくれない?」
緊張感のない暇にそう告げると、きゅうにぎゅっと抱きしめられた。
「――うん。いい子にする」
「良い子にしてて」
「今日は、四人で一緒に抱きあって寝ようね」
その後、話し合いが終わったあとの花渡に暇は当然ながら拳骨で殴られていた。
俺も思いっきり噛みついておいた。
「ルイ君、まだかな」
「本当に四人で寝るんですか?」
花渡の嫌そうな言い方に、暇がベッドで土下座して謝り倒していた。
「ごめんなさい! すいません! ほんと、すいません! でも身体で返せないってか反応できないから、許して」
「許しませんが、それと彼を呼ぶのはどうしてですか?」
「三人より四人がいいかなって」
花渡の拳骨がもう一度暇の頭に命中した。
というか、俺のときだってそんな手を出したことなかったのに、暇には手加減せず手を出すのが意外だった。
ルイ君は、親に報告をしに行き、暇の弁護士も暇の義父や兄に報告しに行き、俺たちは花渡が用意したホテルに泊まることになった。
ルイ君用にロイヤルスイートルームで、俺達三人の部屋はその次のランクのスイートルーム。
だから俺達の部屋にルイ君を誘うより、ルイ君の部屋に行きたいんだけど……。
花渡はネクタイを緩めながら不機嫌な顔を崩さず、暇にそれはそれは冷たい視線を向けていた。
「吾妻さんが貴方をとても心配してたから、私も仕方なく仕事として今回は処理しました。でも次はありませんから」
「花渡っ」
次ってなんだよ、と思ったら暇は、明るくふるまい笑っていた。
俺よりはやく異変を察して心配していたくせに。
「次って絶対無いってことはないよ。俺、生まれも家も、育ちも、全部汚れてるから。嫌なら、関わらないで良いよ! 吾妻とはお金で割り切って――」
暇が言い終わらない内に、俺は暇の頬を、花渡は容赦なく鳩尾を殴っていた。
「え? え、えー?」
頬とお腹を押さえながら、あたふたする暇に花渡は髪を掴んで顔を上げさせた。
「……貴方は、こうなると分かっていて私以外の弁護士を立てましたよね。それって、私の為、ですよね? そこに愛があると感じていいのですよね?」
「……ちんこが立たない愛だけど」
不貞腐れたように視線を逸らして暇が言うと、花渡が大きく溜息を吐く。
「貴方も、吾妻さんも――私の思い通りにはいかないんですよね」
掴んだ髪を離すと、ベッドに突き飛ばす。
眼鏡を外しながら、花渡は怪しく微笑むと俺を見た。
「次はどう致しましょう、吾妻さん」
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