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愛について。⑩
――私の思い通りにはいかないんですよね。
その綺麗な唇が、そんな卑下するような言葉を吐くとは思わなかった。
暇には、こっそり感謝してる。
花渡の感情の琴線を震わせてくれて。
不謹慎だと言われてしまうだろうけど、暇が誘拐されなかったら花渡は自分の欠落していた感情に気付かなかったと思う。
それを俺ががむしゃらに気付かせようとしてもきっと気付かない。
他人を、――慈しむこと。
花渡は自分と式部ちゃんが生きていけるならば感情は要らないとか思って生きてきたんだと思う。
それが今、少しずつ、歪ながら前へ進んで行って……俺を見てくれてる。
「吾妻さん?」
「あ、うん。裸にして、やっちゃおう。ルイ君も来たら混ぜよう。ルイ君、すっげ可愛いんだぜ」
「……それはどこまでサービスしてたんですか?」
「そーゆう店だろ。俺とルイ君は恋人みたいなもんだから混ざっても問題ないんだってば」
四人で――は流石に経験ない。
暇は多分あるだろうけど、俺と花渡はお互いの気持ちに寄り添いだし始めた中で、二人の距離を埋める前に、大きな回り道をして四人でベッドに入ろうとしていた。
「……えっと、えっちすんの?」
暇は戸惑いながら俺と花渡の顔を交互に見ている。
「今したら優しくは出来ないですね」
花渡が面倒くさそうに言うと、暇は安堵のような複雑そうな顔をした。
「俺が居ない方が、二人はいいとか」
「そんな弱気なこと言う暇の唇は塞ぎます」
音を鳴らして唇を重ねると、呆然としたような、目を見開き迷子のように俺と花渡の顔を交互に見た。
いいなあ。花渡からのキス。俺もしたい。
悔しいから花渡に、自分の唇を指さした。するとすぐにキスしてくれた。
「……いいの?」
「私は自分の人生が歪んでいたので、不道徳だの道ならぬ関係だのこの際もうどうでもいいです」
「や、ちがくて」
暇が俺に縋るように見る。欲しい答えはそれじゃないと目で訴えている。
「うん。俺と花渡はお前がちゃんと好きで、――ここに帰ってきてほしいって思ってるよ」
花渡の後ろに回り、後ろから両腕を掴んで広げた。
俺と花渡の胸に飛び込んでおいでと。
「やべ。……こんなの絶対おかしい」
前髪をがしがしと掻きむしった後、暇は花渡の胸の中にダイブし、三人でベッドに沈んだ。
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