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その日から始まったんだ。④

相手を押し倒して、えっちしたいだけじゃないか。 しかも婚約者の弟を襲うとか、変。 俺と暇は最初、確かに花渡に色々しようとしたし、俺だって気を向かせようとこんなバイト始めたけど。 今は相手を焦がれるほど思ってる。 花渡を、どうしようもないほど求めて、甘えて、好きで、焦がれて、今でも実感なんて沸かないよ。 暇と俺と花渡の関係は歪だけど、暇を一人にしておけないし、暇も大切だと思ってる。 だから――。 ゴチャゴチャ思いながら、社長に話を付けようと事務所に戻って社長室へ向かう。 すると、開いたドアの向こうでソファに座る暇の下に花渡が居るのが見えた。 「俺、30分で気持ち良くさせれるけど?」 「いえ。社長の元へ向かいますので」 「俺達ってさ、吾妻が居ない時は二人でエッチしないじゃん?」 二人が妖しい体制で、会話を続けていて思わず息をのんだ。 「それは暇さんが嫌だと言ってたからです」 「嫌って言うか、俺は気持ち良くならなくてもいいんだけど、花渡のイく顔とか一人占めして見たい。舐めて良い?」 カチャカチャとベルトの音がするが、花渡はすぐに暇を押しのけて立ち上がった。 「ダメです。私は仕事中ですので」 「でも花渡って絶対どSでしょ? 吾妻に優しい可愛いエッチだけで満足してないでしょ? 俺、喉の奥にガンガン当たっても、酷くされても好きなんだよねえ」 「暇さん」 花渡は乱れた服を整えながら、暇の手を握る。 「私と貴方は似ていると思っていますし、貴方が一人は嫌だと言うならば傍に居ますよ。三人でも私たちはおかしいとは思いません」 花渡の言わんとすることは、分かってた。分かっていたけれど、どうしていいのか俺たちは分からずに三人のぬるま湯の中に居たんだ。 「でも、吾妻さんが居ない時に二人でするのは違うと思うんです」 「花渡は吾妻と二人でエッチすんだろ?」 「しますよ。吾妻さんを愛してますので」 愛!? 普段、淡々としてるじゃんか! 俺がシャワー浴びて、花渡の部屋に向かうともう裸で布団の中に待ってたりとか。 ムードも作ってくれない癖に、機械的に俺のいいとこばっか攻めてきて、俺が気持ち良ければ自分はいいみたいな奉仕ばっかじゃんか! そんな言葉は俺の目の前で言えよ。 と思いつつも全身の血が沸騰して熱い。 「でも私と暇さんは愛じゃない」 ――は。 「花渡!」 扉を急いで開けて暇の耳を塞ぐ。 「聞いてない。暇は何も聞いてない!」 俺の突然の登場に花渡は戸惑ったのち、暇を見た。 暇は繊細で、意外と信用している人の言葉に左右されがちで、重たいほどに求めてくる。 花渡は、俺の事を思ってはくれてるけれど、相手の気持ちや感情には鈍い。 だからきっと二人でいても暇が一方的に我慢して笑って傷ついてる。 「愛じゃないってさ。三人で愛し合うなんてやっぱ無理なんだよねえ。おまけってことか」 「暇、あのさ」 「それが何か?」

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