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対極的恋愛⑤

急いで大事な部分だけ綺麗に洗うと、スタジオを飛び出した。 薬とかでうっかり浚われるとか、もう二度と勘弁。 ヤクザに比べたら、まだましかもしれないけど。 全く駄目だ。女を真似たあの姿はとくに。 車を走らせて、信号になってようやく携帯を確認した。 吾妻から着信があったが、俺の起ちが悪いせいで時間が押していたのでまだ終わっていない時間だった。 『駅で待ってるよ』 素っ気ない、自由でわがかママな子猫みたいな吾妻らしい短文ににやりと笑う。 吾妻が大切なのは、花渡。 あのルイ君が大切なのは、世間体や地位。 俺が一番じゃない人が、俺を大切にしてくれるのは居心地が良い。 一番ではないなら、その愛情は嬉しいんだ。 自分でも拗らせてるなあと笑ってしまうけどしょうがねえ。 そうしないと、俺はいつでも発狂して壊れてしまうような時間を生きて来たから。 「吾妻、お待たせ―」 駅の入り口で、女の子たちが振り返って二度見していた美少年に声をかけた。 吾妻は俺をみると、ホッと顔を崩した後頬を膨らませた。 「お腹空いた」 「ちょっと高いけど、ホテルの個室でルームサービス頼んでるんだ。そこでいい?」 「居酒屋とかかと思った。いいの?」 「いいよ。経費は俺の親父だから」 母親のほうのゴタゴタが収まるまで、親父が俺にセキュリティがちゃんとしているところで生活しろと言ってくれたのでお言葉に甘えさせてもらった。 俺を引き取ってくれた青桐家は土御門御殿より田舎に住んでるし、AV男優になった時に距離を取られてしまったので頼れるのは兄貴と父だけだ。 「ここのさ、VIPルームってやばいらしいぜ。うちの親父も商談に使ったことあるらしいけど、すげえ豪華だから」 「暇のヤバいは、なんか卑猥な意味でヤバいって感じがしてやだ」 露骨に嫌そうな顔をする吾妻が面白くて爆笑すると、ホテルの入り口から大勢のリーマンが出てくる。 俺と吾妻は、その集団が出ていくのを待ってから入ろうとした。 が、吾妻が急に俺の手を引っ張ると、ホテルの前に立ってある記念碑の後ろへ押し込まれた。 「な、なに? ホテルまで待てなかったの!?」 「しっ。気付かれないようにして」 吾妻が慌てるので、そっと外を伺ってみると、スーツ集団の中にルイ君の姿があった。

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