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対極的恋愛⑥

「ルイ君、ほんと、住む世界が違うんだなあ」 高級そうなスーツを身に纏った大人たち、その中に怖気ずく様子もなく対等な口調で話しているルイ君は、俺が知ってるちょっと芋っぽい純情な少年ではなかった。 流石だなあ。裏表がはっきりしている頭のいい子だね。 吾妻は記念碑の物陰から出て行けなかった。 ルイ君の邪魔になるから、ではないだろう。 多分、目が合っても彼は目を逸らす。素知らぬふりをする。ただの他人だとアピールする。 現実の世界では、吾妻の事は知らない通行人だと気にも留めない。 その現実を見たく無くて、吾妻は隠れたのだと思う。 「ルイさんの持論と、畳みかけるような証明、とても博識で素敵ですわ」 それまで雑談していた大人たちがスッと避けて、代わりにホテルから淡い桃色のワンピースを着た女の子が出てきて、ルイ君の腕を掴んだ。 「もう少し、私と父とお話できませんか? ルイさんといたら、時間があっという間で全然足らないんですもの」 「僕で良ければ、喜んで。父に話してきますね」 ルイ君に熱を込めた視線を向ける女の子、その子の視線を受けとめながら彼は、彼の世界で生きている。 あの取り巻きや、ルイ君を思う彼女は、――彼がゲイだとこの先きっと誰も気付かない。 彼はきっともうその真実を殺しつつあった。 「吾妻……行く?」   タクシーで消えて行ったルイ君たちを見ながら、放心状態の吾妻は多々小さく頷く。 「吾妻、吾妻、この前の詫びにって九州のお酒貰ったのあるけど飲む?」 「は? 実家のヤクザから?」 「ヤクザって言ってやるなよ。寂れて死にゆく絶滅危惧種なんだから。年に5本しか出荷されない幻の酒やって」 桐箱から取り出すと、吾妻は首を振る。 「今日はイタリア料理がいい。日本酒なんて合わないし」 「じゃあこれ、じゃじゃじゃじゃーん」 「その言い方古いから」 「ドンペリ・ビンテージ・ホワイトゴールド! 約200万。吾妻へ俺が2回デートをお願いする金額だよ」 「馬鹿じゃん! そんなの絶対飲めないっ」 200万と聞き、吾妻が首を振る。値段に若干引いてるのか露骨に眉をしかめている。 俺の周りの奴らなら、200万の酒と聞いたらラッキーっと喜んで飲むのに。 「じゃあアルマンドブリニャック。20分の1ぐらいの値段だよ」 「それでも10万じゃないか。お前、もっとお金の使い方考えろよ」

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