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対極的恋愛⑧

何かの儀式みたいに優しいキス。 それ以上しないのは、暇がセックスを仕事以外でしたくないから。 なにか縛りがあるならきっと喜んでする。 さっきルイ君を見て、暇の勘は正しいと思った。 きっと暇は、ルイ君が絶対自分に本気にならない、恋愛対象外だと知って抱いたんだ。 ルイ君はきっと政治の仕事が好きなんだろう。その仕事のためならば自分の性癖は隠してもいいと。きっとルイくんは俺の前で純粋な、そうなりたかった自分を演じていただけ。 さっきのルイくんこそが本当のルイ君なんだ。 「暇、今から俺を抱いてみる?」 離れた唇が、名残惜しそうに離れなくて、離れた時ぷるんと揺れた。 離れた唇が乾かない内に告げたら、暇は迷いもせずに首を振る。 「無理。花渡に金貰って依頼されたら、仕事として抱くけど、いいや」 「そこまできっぱり言われると、傷つくんだけど。お前、一回花渡は襲ったらしいじゃんか」 「ああ、なんかムラムラしたけど、今はきっと起たないよ。だってお前ら愛し合ってるし」 ニヒヒと笑って誤魔化す暇に、力が抜ける。 豪華なホテルも、酔ってしまう高級なワインも、ロマンチックな花びらの風呂も、暇にとってはエッチしたいために整えた環境じゃない。 ただ仕事の後、押しつぶされてしまいそうな現実を金で追い払ってるだけだ。 「暇は逃げてるかもしれないけど、暇を軟禁したヤクザは暇のお母さんが好きだっただけなんだよ」 「えー、いいよ、そーゆう話。言ったじゃん、俺――」 「結構、簡単に周りには存在してるんだよ、愛って」 暇の手を掴む。 お湯の中温かい指先にキスして、人差し指を口に咥えてしごきながら舌先で触れる。 足で暇の下半身を刺激したけれど、全然反応してなくてちょっと戸惑った。 「……ダメかよ」 「吾妻がダメってわけじゃなくて、なんて言っていいか分からないけど、吾妻だけはセックスできない」 「なんで」 「俺の為に居場所を作ってくれようとしてるから」 謝罪の代わりにキスされて、思わず口を尖らせてしまった。 「でも、俺、暇と一緒に居たいよ」 俺が何か言うたびに、お礼のように口づけをする。 「お前も一緒に居たいって言ったろ」 お礼なのか贖罪なのか。 「このままじゃ、一緒に居る意味ないって、……花渡もきっと」 揺れる水面、沈んでいく花びら、音を立てる子供じみた口づけ。 「楽しいだけの位置に俺を置いといて。難しい事考えなくて良いよ。いつも鞄に持ち歩いてる飴みたいに、思い出したら舐めるみたいな」

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