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対極的恋愛⑨

全員が全員、鞄の奥に飴を偲ばせているわけじゃないよ。 俺はきっと、見覚えのない飴は、賞味期限が分からず食べないで捨てちゃう。 持ち歩く人には持ち歩く人だけの、飴を愛用する理由があるというのに。 暇が飴だったら、食べたら消えてしまうなら食べれないじゃないか。 カバンの中から出てこなくていいの? はいってるだけでいいのかよ。 「さ、お風呂あがったら一緒に寝ようね」 「……暇の巨根無駄使い野郎」 お前みたいな大きな存在が鞄の奥でパッケージにひっついて溶けて飴の形も保てないような、そんな存在になりえるのか。 鞄に詰め込めない大きなぬいぐるみぐらい、やっぱり俺は愛しいよ。 「っと、めっちゃ携帯チカチカしてるー」 「え、俺も充電充電」 暇と俺が携帯の画面を見たのはほぼ同時。 その更に同時に、フロントから電話があったのも携帯を見たまさにその時だ。 『ロビーに花渡さまがお見えになっておりますが、知り合いでしょうか』 「やべ、怖い。これ、かなり花渡切れてる?」 「分からない。でも暇のとこまで送ってきたのは花渡なのに」 「えー……フロントに此処には居ませんって伝えてもらおうと思ったのに、無理かな」 「無理ではないだろうけど、それこそ花渡が怒りそう」 「観念して花渡入れてやろうぜ。あいつ、朝までロビーで立ち尽してそうだし」 俺が電話を奪い取ると、暇は奪われて何も持っていない手を見つめながら覚悟を決めていた。 *** 「電話もつながらなかったので、お二人で大変盛り上がってるのかと思いました」 部屋に入ってすぐ、花渡の無表情の嫌みが俺の腹をストレートパンチ。 それなのに、花渡は飄々としていた。 「風呂に入ってただけだよん」 「そうですか。じゃあ私の右隣に暇さん、左に吾妻さん座っていただけます?」 座るのはいいんだけど、何を考えてるのか全く分からない。 「で、その顔は暇さんの説得が出来なかった顔ですね、吾妻さん」 「そ。無理。だって俺が誘惑してもちんこ起たないし」 「そうですか。仕方ないですね。じゃあ今日は二人で勃たせてあげましょう」 眼鏡を机に置くと、右隣に居た暇の腰を引き寄せる。 「まずは、私が貴方を気持ちよくさせてみましょうか」

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