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対極的恋愛⑯

*** 濡れたタオルを持って現れた花渡が、俺の隣で荒い息を吐いて苦しそうな吾妻の身体を拭きだした。  まだ少し足が震えているのが、セックスの余韻を感じられてエロイよなあって思いつつも、これは言わずにはいられなかった。 「俺は? ゴーカンしといて俺は!?」 「暇さんは、足を開きすぎてガクガクするとか、腰が痛いとか、声がかすれたりか、何か負担になった場所はありましたっけ?」 「心だよ。俺の心がダメージを受けたんだ。可哀相な、俺」 しくしく俺が泣いている横で、花渡は恋人の吾妻を、丁寧に丁寧に拭き、『此処は大丈夫ですか?』『あっ』なんて二人で花が舞うようなイチャイチャしてやがる。 俺にはそんな優しさないだろう。 ああ、二人が俺を奪還しに来てくれた時が一番愛を感じたよ。 「暇は、俺たちとこれからも一緒に居てくれるんだよな?」 吾妻が疲れた体を動かしてもう一度俺の方を見た。 「もう二人、険悪にならないで真剣に話してよ」 「えっと、俺は……」 さっき花渡のキスで興奮したのも本当だけどさあ、でもなあ。 うーん。でもなあ、邪魔だよなあ。 でも嘘をついたら吾妻が傷つくのが分かったから、俺も本心を告げるしかない。 「身体は花渡、心は吾妻に癒されたいなあって思ったらひく?」  折れの発言に驚いたのは、花渡の方だった。 「私が暇さんを抱けばいいんでしょうか?」 「いやーそんなんじゃなくて」 「抱かせろ、でしょうか」 「そうでもなくてぇ、まあ、今日みたいな距離でいい。でもさ、はっきり聞くけど」 言いたくないなあと思ったけど、はっきりしなくちゃいけない。 それだけは、なんだか口が重たく憂鬱だった。 「俺、……邪魔じゃね?」 頭を掻いて誤魔化すが、多分誤魔化されてない。 「俺が居なかったら二人は、普通の恋愛できるわけじゃん?」 俺一人、距離をとれば終わる。普通の日常が二人に戻ってくる。 俺は居場所が無くて吾妻の腰に抱きついて安心して眠っていたけれど、その相手をまた探せばいい。 ルイ君みたいに後腐れない人がいい。 「邪魔ではないですよ」 「邪魔じゃ、ない」 けれど二人は即答だった。 「ただ――」 吾妻が心配そうだった。 「今後、暇が誰かを好きになったり誰かに好きになられた時、俺たちが足枷にならないかなって思う。恋愛ができないじゃなくて、暇は恋愛がしたくない、だから。きっといつか、したくないのに、してしまう衝動が起こるかもしれないじゃん」

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