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永遠ではないらしい①

Side:吾妻 似合わないと分かっていても、格好付けたくて花束を買ってみた。 扉が開いてすぐに、ルイ君の目の前に差し出したら、爆笑していた。 「あっくんでも、こんなベタなことするんだねえ」 「今日だけだよ。で、多分ルイくんだけだよ」 別に口説き文句でもなんでもない。 本当のことだ。 暇も花渡も、花束なんか喜んでくれない。 どうして俺に? そう言って首を傾げるような奴らだ。 「花って永遠じゃないの悲しいね。あっくんに貰った最初で最後のプレゼント、大事に手元に残したかったのに」 「だから花束にしたんだよ。邪魔かなって」 前を進んでいくルイ君に、男から貰ったものは邪魔だろうって。 暇を苛めたあの日、ホテルの前で見たルイ君は、もう俺が知っている可愛いルイ君の姿はどこにもなかった。 きっとこれから生きて行く中で、人前で俺の事を話すことはない。 だから俺も綺麗にさよならしなくちゃいけない。 「なあなあ、婚約者で起った?」 「もー。すぐそんな話する。大丈夫だよ。頑張るから」 顔を真っ赤にしたり青ざめたり、ルイ君は忙しそうだった。 そんなルイ君を見るのは今日で最後。 結局俺は、ルイ君がどこの大学でどんな学科を学んでいて、どんな生活を送っているのか最後まで把握することはなかった。 お互い、恋でも愛でもないから優しく慣れる相手で、ビジネスだ。 そう思ってはいても、ルイ君と会えなくなるのは少し寂しい。 なんだかんだ、難しい恋愛に感情を揺さぶられなくて済む、安心できる相手だったから。 「暇とも一回ぐらいエッチしちゃえばいいのに」 「あはは。もうやめて。現実に戻って来れなくなる」 一緒に逃げよう。 そんな言葉をルイ君に言えば傷つけてしまう。 ルイ君を自由にすることはできなかったけど、俺の中途半端の優しさに屈しないほどルイ君の気持ちは固まっているはずだ。 「俺はいいけど、あっくんは就職先とか考えてる? 土御門家の跡取りがいつまでもこんなことしてていいの?」 「うん。ルイ君が辞めたら俺も辞めるよ。就職先は、俺ってばスーツが似合うから絶対サラリーマン」 「範囲が広すぎ。あっくんらしいね」 クスクスと笑ったあと、視線を泳がせて足をもじもじさせた。 「ね、あっくん」 「なに?」 「その、今日はいっぱい触りあいっこしない?」 真っ赤な顔で言うルイ君を気付けば抱き締めていた。 「うん。ベッド行こう。今日は蕩けるまで触り会おう。ルイ君は背中も弱いけど、耳と――あとどこが弱いか探したい」 「あっくんだって、舌が弱いって俺、知ってるんだからね」 そろそろとルイ君が背中を抱き締めてくれた。 最後まで、純粋で可愛いルイ君が、やっぱ俺はちょっと好きだったのかもしれない。

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