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永遠ではないらしい④

初夏。 まだ夏が顔を出してもいない、とでも言っておこうか。 そんな中途半端な時期の海は、誰もいなかった。 砂浜も、片付けていないのがありありと伝わってくる。漂流したゴミがちらちら見えるから。 それでも目の前に広がる海は、今まで見た中で一番綺麗でキラキラ輝いてるように見える。 「花渡、裸足になって走ろうよ」 「いえ。危ないです。手入れされていない砂浜で素足は――」 海岸を、車の中から覗きこんで露骨に眉をしかめた後首を振る。 まあ、あんなに漂流物が多かったら、ガラスの破片とかもありそうだけど。 「恋人と海岸で追いかけっことか楽しそうじゃん」 「吾妻さんの足にけがをさせたくありません」 「けちー。せっかく海に来たのに」 「では靴のまま散歩しましょう」 わざわざ馬鹿正直にパーキングエリアに車を止めて海へ降り立った。 まだ営業していない海の家の駐車場を貸し切り、砂浜まで手を繋いで歩く。 なぜか誰にも見られていない自信がお互いにあるのか手を繋いで見つめあったりした。 「不思議ですね。いつもは車で走っていて視界に入っても何とも思わなかった海なのに」 「綺麗?」 「はい。輝いてるように感じます」 それはきっと、花渡自身が変わったからだ。 そんな風に感じるようになった花渡は、性格が丸くなって感情が豊かになってきたように思う。 「俺や花渡や暇は、家が人生にのしかかってくることはないじゃん」 だから家を選んだルイ君が、どうしても最後まで納得できなくて、もやもやしたんだ。 「いいえ」 けれど花渡はそれを否定した。 「私はあの土御門御殿を残したいと思っています。そして土御門家も吾妻さんにしっかり継いで繁栄して行ってほしいです」 「えー。俺は花渡と一生恋人だから、子孫繁栄は無理だよ」 「では一緒に二人で天国で繁栄させますか」 俺たちが天国に行くのが想像できなくて、声を出して笑ってしまった。 天国でも一緒に居たいと思ってくれてるのだけは素直に嬉しいけど。 「じゃあ、花渡だったらきっとルイ君の気持ちがわかったんだろうね」 家を選んで、俺の前から姿を消した彼の気持ちを。

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