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お仕置き⑤
「えーっと、俺魅力ない?」
此処までして、何も反応もらえないと、馬鹿みたいだ。
けれどリョウさんもどんな顔をしていいのか分からず、引きつった笑顔を浮かべている。
「魅力ないわけはない。綺麗だし。ああ、この子ならサービスしてもらえたらヤれそうって思ったし」
確かに、そんな感じの扱いだったよね。さっきまで。
俺のことを、自分の性癖の確認に使おうとしていたと思ったらちょっと腹が立った。
下手に地位があるから、口が堅いVIP専用の俺に金で言うことを聞かせようとしたってわけだし。
「でも、起たないからホモじゃないんじゃない?」
「そう、だと良いんだけど」
「えい」
むかついて、ベッドの上で起ってリョウさんを見下ろす。
そして、柔らかく一向に反応しないソレを踏んでみた。
「あずまくん?」
「まあ、一晩かけていじめてあげるよ」
あまりに嫌そうな顔が楽しくて、花渡と暇が待っているとは知らずに苛め倒したのだった。
***
Side:花渡
焦がれる。
その言葉が、今は一番近いかもしれない。
私は感情が変わらず冷たい印象で、平気で人を、――吾妻さんを傷つけてきた。
なのに私を誘う。私に笑いかける。私の言動にいちいち傷つき、いちいち喜ぶ。
そんないたいけで健気な吾妻さんを見ていると、胸が焦がれる。
「あーあ。これ、無駄になっちゃったかな」
暇さんが、閉店時間を刺す時計を見ながら、グラスを揺らす。
グラスの中の泡が、ぶくぶくと上に上がってきて消えていく。
せっかくの
泡が、人魚の最後のように消えていく。
「花渡がせっかく、『バイトお疲れまさでした』パーティー計画してたのに。吾妻ってば後で絶対騒ぐな」
何を贈ればいいか分からず、仕方なく社長や式部、暇さん――要するにほぼ私の知っている人脈に聞いて、リクルートスーツとネクタイ、ネクタイピン、くつなど一式を用意していた。
「カクテルだってオリジナルなのに」
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