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お仕置き⑦
「では、抱き抱えてその、VIPルームとやらに」
「えー、俺が?」
「はい」
甘えろと言われたので、甘えてみたら、暇さんは困ったような顔をした。
困ったような……ということは迷惑だったのだろうか。
私は未だに、人の気持ちを読むのが下手だ。
「えー、ちがう。落ち込まないで。普段、格好良いアンタを抱っこって、ギャップがヤバいっしょ」
苦笑しながら、残っていたカクテルを私の分まで飲みほして立ちあがった。
……そうか。暇さんも私の感情が出ない顔から気持ちを読み取れるのか。
流石。
セックス以外で心を満たそうとする変わり者だ。
「何、なんでそんなまじまじ見てるの」
「いいえ。良い男だなった」
「ぜってー思ってねえ」
ゲラゲラ笑いつつ、私を軽々とお姫様だっこするとVIPルームへと運んでくれる。
普段苛めている相手に運ばれるのは、なるほど、確かに違和感があった。
空気が読める。社交的。仕事は確かに褒められるものではないけど、信念を持ってしっかりしている。
そして苦労しているのに、ちゃんと笑える。
カーテンを開けると、真っ赤な趣味の悪いソファが対になるように置かれていた。
私をそこに下ろした後、腕時計を外し、上着をテーブルに投げると、反対のソファに寝転んだ。
――そして、踏み込んではいけない場所には決して入って来ない。
暇さんという相手は、本当に面白い。
セックスは駄目だけど、ギリギリの行為は感じてくれるし可愛らしい。
それは受け入れとめるけど、自分は守るので隠したい、そんな葛藤の現れなのかもしれない。
「なに? さっきから超俺を見るけど」
「暇さんという男を観察してます」
「……えーっと面白いの?」
「ええ。興味深いです」
健気すぎるその信念を、苛めてみたくなる。
――はやく、はやく胸を焦がし心を鷲掴みにされ、私と吾妻さんが居なくても満たされる、そんな相手が来ればいいのに。
「交代しましょうか」
「交代?」
「今度は私が抱き締めて眠ってあげますよ」
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