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お仕置き⑨
ラブホから?
「あれ、兄貴の声がする。やほー」
暇さんが、呆然としていた私から携帯をとると代わりに会話を始めた。
「あー。あのデートクラブさ、やけにあのラブホ押すよね。提携先なのかな。じゃあ、迎えに行くねー」
暇さんは笑顔で電話を切ったあと、ハッとした顔で私を見た。
「やば。つまり兄貴達、ラブホに泊まったんだ。聖、貫通式しちゃったってことか。うわあ……。ちょっと、俺、どんな顔して会えばいいの。きゃー」
一人でわいわい騒いでいるが、私と気にしているところが違う。
結構二人で飲み明かしてしまったということか。
VIPルームに入った時点で、もう閉店時間を過ぎていた。
「花渡? もしかして吾妻が浮気したと思ってる?」
「……いえ。バイトですから。それに吾妻さんのことを信じていますが、暇さんと自分以外とラブホに泊まると言う行為自体が嫌と言いますか」
「だよね。だよねー。ってか、あのバイト先、本番行為禁止だし! 吾妻は大金積めるか、信用できる相手以外とはデートしないはず。相手気になるなー。ターゲットって何?」
暇さんは至って普通に話しているが、どうみても口数が大きくなっている。
動揺はしているみたいだ。
「迎えに行きたいですが、まだ酒抜けてませんよね」
「え、行かないよ」
「でもさきほど、迎えに行きますねって」
「兄貴には吾妻はどうでも良いだろうから、そう言っとけばもう放置しとくでしょ。俺ね、今回は甘やかしたら駄目だと思う」
「甘やかす……ですか」
ラブホで放置されてしまった吾妻さんの身の心配の方をしてしまう。
相手も、きっと聖さんのトラウマの原因の彼だと電話で言っていましたから、半殺しだろうし。
ラブホの前で声をかけられないか心配で、心配で。
「あのね、俺たちは吾妻にバイトを優先されて、オリジナルカクテルでお祝いしたかったのも駄目になって可哀想なの。――吾妻には焦ってもらおうっと」
いえーいと、軽いノリで私の顔に自分の顔を近づけて、写メを取って私に見せた。
『二人でイチャイチャしてるから、抜かずの3発終わるまで迎え無理だよーん』
軽いノリで送信すると、すぐに吾妻さんから連絡がきた。
「もしもーし。吾妻、今何してるの?」
私の携帯で、何を考えているのか会話しだした暇さんの意図が分からず首を傾げた。
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