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お仕置き⑩
「今からすぐに俺たち見つけなきゃ、10分後に二人でエッチしまーす」
吾妻さんの返事も聞かず、一方的にそう言って電源を切ると、携帯を向こうへ放り投げた。
「それ、私の携帯ですけど」
「ごめんごめん。で――どうする? もうシちゃう?」
雄全開のフェロモンで、何故か私の腰に甘えるように抱きつく。
言っていることとやってることがバラバラで、どうしていいのか分からない。
抱こうと思えば、抱けるだろう。
そこに気持ちが伴わなくても。
「……いつか暇さんが、すごく大切な人に出会えた時、後悔しないならば私はきっと貴方を抱けます。吾妻さんみたいに優しく、抱けます」
「大切な人はいるよ、いっぱい。ただ、一番大切な人だけはいらないって。エッチもセックスも、したくない。でも二人とは離れたくないからするってだけ。――そこに感情とか理由とか、考えたくない」
無茶苦茶で、理解に苦しむ回答だった。
それが、暇さんの中での答えで、迷いで、決断だ。
「――じゃあ、吾妻さんが来るまで可愛がってあげましょうか」
愛と言うには、焦げ過ぎていて、恋と呼ぶには汚れ過ぎていて、曖昧で深くて、遠い感情。
この感情に名前はいるのだろうか。
***
Side:土御門 吾妻
急いで歩道橋の階段を駆け降りる。
駅の始発はまだなので、急いで走って走って走って。
こんな格好悪い俺を、誰にも見られたくない。
だが、暇の声が不機嫌だった。
きっと何かある。
きっと、俺に何かする。
間に合わなかったって理由を付けて何かする。
なんだかんだいって、暇は花渡が好きだし二人になるとどんなことになるか分からない。
昨日、暇と花渡から電話やメールが来た時の内容を思い出してどちらへ走る。
酷い目にあった。リョウさんが聖を襲った相手だって知ってたら、もっと酷いことをしてやったのに。不能になるまで苛めてやったのに。
まあ、リョウさんにはペナルティを受けてもらおうとは思う。社長にはもう告げ口している。
「あった!」
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