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怒ってるんだからね。①
目が覚めたのは、土御門御殿の花渡の部屋だった。
そらは薄暗く携帯を開くと電池切れ。
充電して電源を入れたら大学をサボってしまって、聖からガンガン連絡がきていた。
喉が渇いて、廊下をペタペタと歩いて辿りついた先には、俺の朝食か昼食か分からねえけど、サランラップを巻いたお皿が二つ。
でも中身を確認する元気もないので、スルーして冷蔵庫からお茶を失敬して飲む。
痛んだ喉にひりひりしみ込んでいく。
そりゃあ、気絶して夜まで寝込むほどだもんね。どんぐらい喘いだが覚えてねえよ。
「お、吾妻起きたー。おっはよー」
居間に座布団を半分に折って枕代わりにしていた暇が起き上がって俺の方へ嬉しそうに走ってくる。それを俺は睨みつけた。
「えー、なんで怒ってるの。あ、あそこ痛い?」
「……」
「何か言ってよー」
「……」
好き勝手しやがって。
大体、こいつ、花渡には優しいのに俺には意地悪すぎる。
綿棒うんぬんの行為を思い出して、目がしらが熱くなる。
「え、泣くの!? まじごめんってば、え、ちょ、吾妻くーん」
慌てる暇が俺の顔を覗きこもうと、右側や左側へ回り込み挙動不審で、うざい。
「あ、あずまー、ごめん。……怖かった?」
おずおずと聞かれ、俺は目をごしごし手の甲で拭きながら小さく頷く。
頭真っ白になって、言葉が出てこなかった。
「……嫌だって、抵抗できる雰囲気じゃなかった。暇怒ってるし、怖かった」
「だ、だってさー! 花渡はすげえ楽しみにしてたんだぞ。お前が大体電話してくるだろう時間にアラームとかセットしてたし、お前に似合うスーツ、特注するためにお前のサイズこっそり測ったり」
「……そんなこと、しらなかった」
「あずまぁー」
暇は、素直だなって思う。
変に意地張らなくて、自分が悪いって思ったらスパッとプライド捨てて謝ってくれてさ。
「お、俺にも玩具突っ込んでいいよ。起たないから楽しくないだろうけど、お前の気が済むまで!」
ガチャガチャとベルトを外しだしたので、俺は震える手を伸ばして、暇を見上げた。
「ぷっ」
「あ、あずま?」
「ぷくくく」
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