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怒ってるんだからね。⑥

「浮気ではないし。良い、と言いますか、二人は私の恋人なので」 「は?」 「今のところ、三人で愛し合ってますっと言った方がいいでしょうか」 袖をまくって手を洗ったら、式部が呆然としながらタオルを渡して来た。 「あ……あー、あーね。なんかそれならしっくりくる。あんたら三人怪しいなって思ってたんだよなあ。この三人、どんな関係よ、キモい、みたいな」 なるほどーっと感心して、ようやく胸のとがりが取れたのか、式部は生き生きと野菜を洗いだした。 「……引かれると思ったんですが」 「あのね、一応これでも兄貴のことは尊敬してるし感謝してもしきれねえって思ってるんだよ。そんな兄貴が今、幸せそうなのがあの二人のおかげなんなら、私は何も言わないよ」 「式部……」 「いや、でも言うわ。言わせて。私が居る時はここでちんこ出さないで。違う場所で乳くりあってよ」 ちちくりあう……。 妹の口から出る言葉としては些かショックかもしれない。 「了解です。とりあえず式部がお嫁に出るまで、この家でセックスは禁止にします」 「直球。直球すぎる言葉は止めて」 「先に直球だったのは、式部の方ですよ」 「は? 一応、私だって遠慮してただろ」 大根で背中を突かれて、本当に式部が自分を尊敬しているのか信用できなかったけれど、笑ってしまった。 式部と、目を見て笑う。 それはもしかして初めてだったかもしれない。 いつも、私は、式部が楽しそうに笑ってる姿を見て満足だったから。 「え、ええー。ちょ、吾妻!」 台所の窓から中を覗いてきた暇さんが、私の顔を見た途端驚いて走り出す。 「花渡が、ちょー笑ってる。写メ、写メ撮ろう」 「嘘、やっべ」  二人が携帯を取りに居間までバタバタと走っていく。 それをみて式部は噴出した。 「……会話だけ聞いてたら、ガキみたい」 「同感ですね」 だけど、心が温かくなっているのも本当だった。 「暇さん、吾妻さん、お風呂に入ってきてください。今日は天ぷらです」 濡れた身体で縁側に乗りこまれたら迷惑なのでそう伝える。 「えー、じゃあもう一回笑って」 「そんなに私の笑顔は安くありません」

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