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エピローグ③

Side:花渡 司 寂しいと思えれるのは、人のぬくもりや笑顔を知っているから。 怖いと思うのは、経験不足や自分の無知から。 最初に与えられないと、人はそれを理解できない。 だったら、私が初めて人から貰ったものは、何だったろうか。 『だったらアンタは、俺のモノだろ?』 歪な愛情の欠片を、両手いっぱい貰った気がする。 だから、私はもうソレを知っているので寂しいを知ったし、失う怖さも知った。 失いたくないならば、この気持ちを相手に伝え、慈しみ、大切にしていくことも。 「おい、兄貴。いや、クソ野郎。朝っぱらからちょっと来い。説教だ」 まだ布団の中にいるのに、ノックもせずに式部が私の部屋の襖を開け、怒りに震えながら私を手招きしているのが見えた。 「どうしました?」 「どうしました? じゃねえよ。ふざけんな」 式部は、私の部屋に並んで敷かれてある布団を見て指差す。 二つ布団が並べられているのは、今日も二人が泊まりに来ているからだけど、式部はそこに怒っているわけじゃないらしい。 「あのな、セックスすんなって、初日に言ったよな?」 「してませんよ」 「してなかったら、裸で三人寝るわけなーだろ! この屋敷はボロなんだ。音がうるせーんだよ!」 しかも、なんで布団が二組なんだよ、と舌打ちする。 それは、まあ。 私たちは大体くっついて眠るので、三組も必要ないからだし、二組に男性三人が寝るとなれば、熱いから必然と服を脱ぐし、密着していれば正常で健康な男三人ならばエロい事をしてしまうわけで。 舐めたり咥えたり、手で慰めたりぐらいは三人でしてしまうのは致し方ないと私は思っているのだが。 「一緒の部屋で、我慢が出来る大人の男性は正直に手を上げなさい」 私が促すと、二人は顔を見合せながら布団の中へ入る。 完全に隠れてしまった。 「というわけなので、すいません。まだ子どもなのですよ」 「子どもがちんこぶらぶらさせんのか。布団の上から踏んでやる」 「すいません。二人にはお説教しておきます」 「ああそう! じゃあ兄貴もその乱れた浴衣から覗くキスマーク消えるまで私の前から消えとけよ!」 朝からあのように怒って、大丈夫なのだろうか……。 我が妹ながらあのテンションには感服だ。 真似できない。 「二人が昨日、『帯をくるくるしたい』とか言うから式部が怒りましたよ」 「すまん」 「俺はエロ目的じゃないもん。暇だし」 布団から顔を覗かせた二人が悪びれもせずに言いのける。

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