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第4話
今は6時だ。何時も、お母さんは7時頃に夕ご飯を作る。後1時間ばかり時間があるので、小説を読むことにした。太宰治だ。斜陽はすでに読んでいて、何がいいか考えたとき、友達は走れメロスを読んだ方がいいと言っていた。だが俺は悩んだ末に人間失格を選んだ。恥の多い生涯を送って来ました。俺は、まだ高校生だが、今迄の人生を恥じてないと言ったら嘘になる。小学校の時に好きな女の子の前でチャックが開いていた時はマジ死のうかと思った。
集中して本を読んでいると7時になった。お腹がギュウギュルルルと鳴る。しおりを小説に挟んで1階に下りる。キッチンに行くとテーブルの上にザルが置いてあってその上に春菊やネギなどが乗っていた。お父さんがリビングからやって来て、俺の肩を抱いた。
「お腹空いたな」
「ああ、アルバイトで疲れたからさ、ペコペコだよ」
お父さんはにこやかに椅子に腰かける。俺はその前に座るとお母さんがカセットコンロをテーブルに置いた。細い綺麗な形の指、水仕事でちょっと荒れた手で霜降りの肉が冷蔵庫から出される。
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