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第6話

 庭の掃除をしていると、塀の上に置いておいたスマートフォンが振動した。画面を見ると大樹からの着信だ。急いで電話に出る。聞けば、雪が降る前に早く俺の家に来たいのだと言う。俺は早く来いよと素っ気なく言って電話を切ろうとした。が、大樹は何か要るもんあったら持っていくぞと明るい声で言った。 「じゃあさ、小説持って来てくれない。大樹が読み終わった本」  大樹は読書家で部屋の本棚には難しい本が沢山並んでいる。俺は漫画本専門だったが、高校生にあがってから小説に少しずつ移行してきている。太宰治が面白いからだろう。  電話を切るとチラチラと雪が舞い落ちて来た。積もるかな。大樹は泊まるから心配は要らないか。でも初もうでには行きたい。明治神宮。ここから1時間くらいで行けるだろう。この近所にも神社はあるが、小さなところだ。俺は小学生の時に浅草寺に連れてってもらった後、大きなところに初もうでに行ってない。  家の中に入り、お昼を食べる。鮭の切り身に、なめこの味噌汁だ。お母さんは料理が上手い。専業主婦ではないが、家事はすべて問題なくこなしている。俺は鮭の切り身を口に運びながら、大樹が早く来ることをお父さんとお母さんに教えた。お父さんは買い物には着いて来なくていいから大樹くんを待っていてあげなさいと言った。家の中に大樹と2人で何をして待っていよう。知恵を出し合って初もうでの行先でも考えようか。

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