3 / 62

第3話 ベビーなピンク

 陥没乳首とは――乳房の内側に埋没した乳頭のことをいう。改善方法としては吸引具などを用いる場合もあるが、自発的なマッサージなどを習慣的に行うことで改善する場合も少なくない。 「っ……ン、先生っ、ど、ですか?」  俺は今、同じ学校に勤める、同僚で、新卒の一見したら純朴そうな先生に脅されています。 「あっ……ンっ」  脅されて、乳首を触らせられています。 「出ます、か?」  純朴新卒先生が真っ赤な顔をして、まるで医者に診療してもらうように、服を捲って、白い肌にピンク色をしたあどけない乳輪を俺の目の前に。そして、俺は指でそのピンク色をした乳輪を摘んで、爪先で突付かされています。 「あっンンッ、僕のっ、陥没乳首」  脅しているのは、今、喘ぎとなんら変わらない声をあげて、乳首をいじられて身悶えている、こんな身体じゃ彼女も作れないと陥没乳首に嘆くくすぐったがりな新任純朴先生。 「マッサージが有効なのはっ、知ってるんです。ネットでも書いてあったので、僕っ、ン、ぁっ……ン、たまに挑戦してるんですけど。さ、触りすぎなのか、ひゃんっ、ぁ……痛くなっちゃうんです」  乳首いじりすぎて痛くなって絆創膏を貼ってたんだそうです。その絆創膏姿を見られ、開き直り、そして、あろうことか、いかがわしい下着をネタに脅しています。俺を。 「素手でやってたんですか?」 「は、いっ……ン」 「どんなふうにやってたんです?」 「あっ、えっと……」  素直に言われたまま片方の乳首をいじりだしたこの人に、今、脅迫されています。俺は。 「こ、して」  ぎゅって摘んで。 「こう」  ぐりぐりと。 「なるほど。どのくらいの時間?」 「ぁ、ぁ、ヌルヌルしてっ、ぁ、えっと時間、は……いくらやっても出ないから、ぁ」 「いくらやってもって、擦りすぎたらそれが乳首でも背中でも膝でも痛くなるでしょ。あ、あと、これはローション」 「ひゃぁぁっ、あっ、あっ、ろーしょ、ン」  両方を自分で摘んで引っ張って、それでも硬く口を窄めたまま。でも少しずつぷっくりふっくらしてきたそのピンクを指で優しく、くるりと撫でてあげると、ぬめる感じと乳首愛撫に慣れた俺の指に純朴先生が真っ赤になった。 「ぁっ、やぁっン」  くるくる。 「あぁっ……ン」  ヌルヌル 「あ、あっ、あっ」  突付いて揉んで、それから、カリカリって引っ掻いて。 「んんっ」  ねぇ、あのさ、これ、ほぼただの前戯なんですけど。ほぼほぼセックス手前なんですけど。 「痛い?」 「っ、ン、痛く、ないっ」  気持ちイイ? 今、キュと背中を丸めた。  俺の恋愛遍歴は、人数はまぁ、それなりに。けど、大概はセックスに慣れているネコさん。年上のほうが多いかもしれない。不慣れな相手ってけっこう面倒だから。後、単純にセックスに慣れてる相手のほうが気持ちイイでしょ。お互いに。  快楽の見つけ方が上手い相手のほうが楽しいし気持ちイイ。  だからノンケは恋愛対象外。そういうのを落とすのが楽しいって人もいるけど、俺は、楽しくない。っていうか面倒くさい。 「んんっ」  もちろんこの純朴先生はノンケ。さっき彼女が欲しいと言ってたし。だから、対象外。 「ぁっ! 変な、声っ、ごめ、なさいっ、あのっ……」 「気にしないでいいですよ」  触る度、摘んで刺激する度に、びくん、って跳ねて反応する純朴先生。悩ましげな表情に、少し憂いの混ざる吐息、熱を帯びた声。 「大須賀、せんせっ」  この不慣れな感じは対象外。 「出ま、す? か? 僕の、乳首っ」  摘んで愛撫のようにそのピンクを揉むと、唇を噛み締めた。  窪みの中を爪で少しほじるようにすると、きわどすぎるのか、きゅっと硬く結んでいた唇を開いて、とても甘い声を零す。  硬くなってきた乳首と、少しずつ声の我慢がきかなくなる先生。 「ぁ、あああぁっ!」  対象外、なんだけど。 「……出ましたよ」  内側に埋没していた乳首がぴょこんって顔を出した。 「あっ、……出たっ」  対象外だけどさ。このピンクは、反則じゃない? 「乳首、出ました」  脅されたんだよね? 「先生、ありがとうございます。あの、乳首……見て」  脅されたのは俺、だよね? 脅したのはこの純朴先生だよね? 「あっ……」  目の前で、初々しくも露になったその乳首を摘んで見せてくるこの人が脅迫者だってことを、あまりにベビーなピンクに忘れてしまいそうだった。

ともだちにシェアしよう!