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第19話 かうぱ
相手は宇宙人よりもずっと、やばい、純朴先生だったっけ。
「キ、キスしたら、こんなになっちゃうなんて知らなくてっ」
「……」
「だ、だから、どうしよう。こんなに濡らしちゃったら、きっとまたやばいって思われて、続き止められちゃうって」
「……」
「あの時もそうだったから」
この人は、可愛い顔をしてるから、つい忘れるけど悪い先生、だったっけ。
俺を脅迫して乳首いじらせるような悪い悪い先生だった。それこそ、ゲイでノンケは恋愛対象外設定でガチガチに固定させてたっつうのに、こんだけ夢中にさせるような先生。セフレとかありえるような遊んでばかりの二十八歳の理性をいとも簡単に蕩けさせる悪い先生。
「僕の、かうぱ……」
理性を本当にいとも簡単にトロトロに蕩けさせて溶かす。
「たくさん漏れちゃったの、見ちゃ……や、です」
宇宙人じゃなかった。にわとりそっくりな声を出したけどにわとりでもなかった。目の前の可愛い人。この人をこうして抱き締めたくて、キスしたくて、キス以上のこともしたくて、したくて。
「引く、から」
下着ごと、ズボンを引っ張ってズリ下ろすと、下着がトロトロに濡れてた。大きな沁みから、透明の蜂蜜みたいに、とろりと甘そうな糸がピンク色のペニスから垂れてる。
「ダメっ、なのに、引いちゃう、から」
「ヤバイって言ったの、意味違うんだ」
「……?」
トロトロピンクに引くんじゃなくてさ。
「だって、林原先生、初めてでしょ?」
キスもセックスも。全部初めてで、それまではマッサージだから、ノーカウントだけど。
「酔ってたし」
「……」
「ノンケでしょ?」
「……ノン、毛?」
毛はあります、とか小さな声で恥ずかしそうに答えなくていいから。そうじゃなくてさ、気持ち良くなる手伝いなら許されても、ノンケのこの人を快楽で抉じ開けるわけにはいかないでしょって話で。
「恋愛対象が異性の人のこと。ノンケって。貴方はノンケだから、男の俺は恋愛対象にそもそも入ってないでしょ? けど、理性飛びそうで」
「……」
この人の艶姿に、無理やりだろうと、翌日アルコールが抜けた後に、後悔させることになろうと、襲い掛かりそうでさ。
「やばかったから」
「っほ、ホント、に?」
「えぇ。キスしたいって、めちゃくちゃ思ってましたよ」
「! で、でもキスしなかった!」
そこでそんなムキになられても。半裸で、そんな可愛いことでむくれないでください。
「そりゃしないでしょ。あの時には」
大事でしょ?
「だって、ファーストキスでしょ?」
一回しかないんだから。
「でも、もうもらったけど」
「ンっ……」
うなじを掴んで、深く舌を絡ませた。溢れた唾液が音を立てるくらいに濃厚でやらしいキスをしながら、ニットの裾で隠してたつゆだくピンクを撫でてあげると、睫毛が震えてる。
気持ち良さそうにもう反応してるそれを俺の手の中に、たどたどしくも、やらしく、ゆらりと擦りつけて。
「やだ……ぁ」
悪くて、えっちな先生。
この人としたくてたまらなかったんだ。この悪い先生にあんなことも、こんなこともしたくて、したくて、まるでガキみたいにしたいことで手一杯で。手一杯すぎて、大事すぎて、大切にしたいから、今はまだ我慢できますよ、なんて強がっちゃうくらいに嵌ってる。
「やぁ、かうぱ……見ちゃ、やぁ」
溢れて零れて、ピンク色の可愛いこれがトロトロに濡れてる。
「あ、かうぱ、ダメ、手でくちゅくちゅしないでっ」
滴るくらい。
「あぁあっ、ぁ、ダメ、その指で、乳首、いじっちゃ、やっ」
ねぇ、やらしすぎでしょ。乳首、たまらなく可愛いんだけど。
「あっン」
カウパーで濡れた指でお腹を撫でて、服で隠れたピンクの粒をまさぐった。
「こっちも見ちゃ、ダメ」
ゾクっと興奮が背中をかける。
「あ、あ、あっあぁぁぁン」
あっまい声を上げて、カウパーを指で塗りつけられたピンクの乳首を、キスされて唾液をくぼみから塗られた陥没乳首を。
「あっ……ン、せんせ、あんまり、触らないで、ください」
「っ、なんで? 今までたくさん触ってたじゃん」
「だって、最初は、普通に気持ちイイって思ってただけなのに。今は、触られると気持ちよすぎておかしくなりそうで」
言いながら、もういじっちゃダメといわんばかりに胸を両手で隠してしまった。勃起した乳首を見ちゃダメと両手で隠して、トロトロピンクなペニスは丸見えで。
「やっぱり僕の乳首へんてこなんです」
隠した乳首も、トロトロピンクペニスもごちそうみたいに全身が甘くて美味そう。
廊下で、半裸で、勃起させて、ツンと乳首を尖らせてるなんて、たまらなくやらしくて。
「大須賀、せんせい……」
だからさ、しちゃったらさ、ホント、俺、どうなるんだろうね。
「……やばい」
「っ、や、やっぱり」
違うってば。やばい、その一言に肩を竦めたこの人をさ、本当にヤバイくらいに抱き潰してしまいそうなくらい、腹の底が熱くておかしくなりそうなんだ。
「そうじゃなくて、貴方、初めてでしょ? でも優しくできる気がしない」
「っ、あっ……ン」
「怖がらせそうで、やばい」
学校の先生にはあるまじき「やばい」なんて乱暴な言葉を呟いて、そのうなじに噛み付く。甘い甘い蜂蜜みたいにトロリと絡みつく嬌声に、腹の底の熱がまた上がって、下腹部がジリジリ焦げそうだ。
「あっン」
この人を自分のものにしたくて、独り占めしたくてたまらないから、マーキングじみたキスマークを首筋に落っことした。
「……ぁ、あの」
「……」
「怖く、ない、です」
かうぱ、なんて言うこの人が、乳首を隠している手はそのままに俯いて肩を竦めた。耳まで真っ赤だった。
「僕、男性同士でするの、仕方、知ってます」
「……」
「ちょっと調べたんです」
キスマークを刻み付けた首筋まで真っ赤だった。
「……引いた? どこでするのか、わかったんでしょ?」
コクンと頷いて、猫っ毛がふわりと揺れた。
「びっくりした、けど……」
「……」
「大須賀先生に似てる人、の、探したんです。だから」
だから?
「ドキドキ、しました」
頑なに、触られたらおかしくなっちゃうと隠した乳首を指の間から、ちらりと見せつけて。
あぁ、本当に。
「大須賀先生で、想像しちゃった、から」
俺が嵌った相手はそうだった。宇宙人よりもずっと、やばい、純朴先生で、それで、悪い先生だった。
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