4 / 6

第4話

「んん……ッ」  遠慮なく、舌がねじこまれた。  なんで、なんでいまの話の流れでそうなる? 軽くキスして終わるだろ! 「ん、……はぁ、ちょ、透さ…」  慌てて体を離そうとしたけど、全力で抱きしめられて、そのまま、再び深いキス。  好きに這い回る舌の動きに、意識を持っていかれそうになる。 「はぁ……、とおるさん、もぅ……」 「晴斗」  かすれ声で呼ばれる。  クチュクチュといやらしい音をたてて舌を抜き差しされたら、もうだめだった。 「ん、はぁっ、ん……」  透さんの背中に手を回して、しがみつくように服を握りしめながら、大きく口を開けた。  舌を伸ばすと、派手な音をたてて、乱暴に吸われる。  やばい、気持ちいい。  夢中で舌を絡めていると、透さんは、俺のトレーナーの中に手を入れてきた。 「んん、……っ、キスだけって」 「それは無理だよ晴斗。お前が引き金引いたんだ」 「……っあ」  首筋をなめ上げられて、甘ったるい声が漏れた。  透さんの手は胸の辺りを探っていて、身をよじって逃げようとしたけど、全然力が入らない。 「これ、多分気持ちいいよ」  そう言って透さんは、くりっと乳首をつまんだ。 「……っ」  思わず息を詰めたけど、表情でバレバレだったと思う。  くるくると攻められるうち、どんどん息が上がってくる。 「はあ、……ねえ、透さん…なんで? キスだけじゃ安心してくれないんですか?」 「安心とかじゃなくて……」 「ンっ」  両方の乳首をぎゅっとつままれて、ビクッと体が跳ねた。 「可愛い」 「ちが、ん……ん」  気持ちよすぎる、けど、流されたらダメだという警笛も頭の中でガンガン鳴っている。  これじゃあ透さんは何も変わらないし、俺はそのゲスみたいな先輩と同じになってしまう。 「こっ…れ以上するならともだちにはなれないですっ」  わめくように言ってみると、透さんは不思議なことを言い出した。  手で胸をまさぐりながら、耳元でささやく。 「オレ、晴斗と友達になりたいわけじゃないっぽい」 「……ん、ん…」 「甘えてくる晴斗が可愛くてたまんない。どーしたのオレ」 「しらな……ぁあ」 「舌出して」  思わず口を開きかけて、ダメだと思って引っ込めた。 「ほら、可愛い」  そう言って透さんは、俺のあごに手をかけて、無理矢理口を開けさせる。  舌先をチロッとなめられたら、それだけで体がピクッと震えてしまった。 「どうしよう。もっと他のこともしていい?」 「だめ、だめ……っ」 「じゃあちゃんとキスして」  ぎゅうっとしがみついて、キスしようと首を伸ばすけど、透さんがあとちょっとのところでよける。 「可愛い、晴斗」 「いじわるしないで、キスしてください」 「なにそれ。超可愛い」  ちゃんとキスされた。 「ねえ、付き合おっか。オレ晴斗のことずっとこうしてたいよ」  首をぶんぶんと横に振る。 「じゃあなんでそんなに可愛くおねだりすんの? 体が気持ちいいだけ?」  おねだり――言われて死にたくなったけど、事実、俺の中心はガチガチにそりあがっていて、ひとりでに透さんの太ももに押し付けてしまっている。 「とおるさんがっ、するからじゃないですかぁ」  泣きそうになりながら訴えると、するりと頭をなでられた。 「友達になってくれなくてもいいから、オレのものになってくれない?」 「意味分かんないです、やだ、やだ。俺ソッチ系じゃないです」  ギュッと目をつぶり、ジタバタと暴れて逃げようとしたら、透さんは、俺の体をまたいでおおいかぶさってきた。 「キスなんて優しい折衷(せっちゅう)案出してくれてありがと。ハート撃ち抜かれちゃった」 「何がっ」 「晴斗はどうやったらオレのこと好きになってくれる?」 「だからソッチ系じゃな……」  つぶっていた目を開いたら、目の前に、めちゃくちゃ綺麗な顔のひとがいた。  つい、言葉を引っ込めてしまう。  透さんは、その綺麗な顔を必死な表情に変えて、訴えてきた。 「俺、晴斗がいつも仕事頑張ってるの知ってるよ。ひとの板挟みになったり、気を遣ってばっかりで、報われないことも多いと思うけど、ちゃんと全部見てる」  突然、何を言い出すんだ?  ぽわっとした頭で考えるけど、言葉の意味が滑っていく。 「上司と部下のまんまじゃ言えないこともいーっぱい言ってあげるし、たくさん甘やかしてあげる。めんどくさいよな、会社。上はエラそうなオッサンばっかりでさ」  首筋に口づけられ、ささやかれながら、少しずつ正気を取り戻してきた。  そして、透さんがどうしようとしているのかが、分かった。  このひとは、本当に……。 「大丈夫、全部守ってあげる。やりにくいことがあったら言ってよ、どうにかするから。評価も融通」 「バッカじゃないですか!?」  思わず大声で怒鳴ってしまった。  透さんは、目をまんまるく見開く。 「俺の話聞いてました? 損得なしで付き合うのが人間関係だって言ったでしょ? 上司の特権に飛びついた俺と付き合えたとして、それってうれしいんですかね?」  驚いたままの透さんは、しばしフリーズしたあと、ぽつっとつぶやいた。 「……うれしいよ? 何でもいいもん。晴斗が欲しくて、手に入るなら何でもいい」  あまりにも、澄んだ目だった。  そして、ふっと、このひとがダメになるところを想像した。  すごく悪意のある誰かに人生めちゃめちゃにされて、それでもうれしそうにしているところ。 「晴斗、好きだよ。オレどうしたらいい? 無理ならあきらめるけど、でもあきらめたくなくて。どうしよう」 「透さん」 「晴斗は? やっぱり男なんて無理? いや、卑怯なことばっかするオレがダメかな。でもそれしか思いつかないんだもん」  はははと笑う透さんを、もう、見ていられなかった。  見ていられなかったから、首の後ろに手を回して、そのまま抱き寄せた。 「相澤課長がこんなダメなひとだなんて、俺、他のひとに見せたくなくなりました」 「……晴斗?」 「俺の前だけにしてください、そんな情けない姿」 「晴斗」 「でも俺の前ではどんな姿でもいいですよ。ダメでも、情けなくても」 「はる」 「あと、早く甘やかしてください」  腕の力を弱めると、透さんは少し体を起こして、俺の目を見た。 「いいの? ほんとに?」 「散々無理矢理しといて、なんで大事なところで聞くんですか」 「……野暮でごめん」  くっつけるだけのキス。  何度もついばむように繰り返しながら、頬を手で包まれた。 「好きになってくれたの?」 「放っておけなくなったんです」 「じゃあ好きになってもらえるように頑張る」  ゆっくりと舌を差し込まれると、それだけで体温が上がった。  なぜだろう、先ほどまでとは比べ物にならないくらい、気持ちいい。  透さんの吐息を意識したら、その瞬間、理性のようなものがぶっ飛んでいった感じがした。  舌を味わうように絡ませると、それだけで息が上がる。 「ん……ぁ、」 「これ好きかな」  舌先をチロチロなめられて、たまらず背中にしがみついた。  透さんの手はズボンの中に滑り込んでいて、太もものあたりをなでまわしている。 「どうして欲しい? 全部晴斗の好きなようにしてあげる」 「……触って、ください」 「どこ?」 「その、……まえのとこ、です」 「ここ?」 「ッあ」    下着の上からなでられただけなのに、体が跳ねた。 「すごい敏感」 「はぁ……、ん、さっきしてもらったから……覚えてて」 「可愛い」  愛でるような視線に、ドキッとする。  服を全部はぎとられて、全身なでまわされる。  乳首を吸いながらペニスをしごかれたら、あられもない声が出た。 「ぁあッ、ん、はあ……ぁ、あ」 「ここ? 気持ちいい?」  こくこくとうなずくと、重点的にそこを攻められる。 「は……っ、ん、ン、はぁっ……」 「晴斗は肌が真っ白だから、火照るとこんな風に桜色になるんだ。可愛い」 「ん、言わないでください」 「どうして。綺麗だよ」 「んん……ッ」  甘やかされるって、こういうことか。  ナメていたかもしれない。これはだいぶ恥ずかしい。 「口でしてあげる。イきたかったら、そのまま出してもいいからね」 「えっ? ……ぁあッ」  抵抗するひまもなく、すっぽり飲み込まれた。  じゅぼじゅぼと音を立てられ、呼吸が荒くなる。 「ぁあん、はあ、はぁっ……、や、んんっ」  根元をしごかれながら先端を口で愛撫されると、気持ちよすぎてどうにかなりそうだった。  身をよじっても、しつこく同じ動きで攻められる。  吸ったり、舌でぐりぐりされたり、くちびるで甘噛みされたり。 「あぁ……っ、とおるさん、はぁ、もぉだめ、……ああ」  射精感が高まる。  離してもらおうと思い頭を軽く手で押さえたけど、すぐに手首を捕まえられてしまった。 「やだ、……ンッ、口、はなしてくださ…ぁあっ」  根元を素早くしごかれて、足がピンとなった。限界が近い。 「ほんとにっ、あぁッ、……も、やっ……だめ、イッちゃうから、……んぁ」  口が離れた。  と思ったら、透さんは、低い声でぼそっとつぶやいた。 「可愛く鳴いてイッてね」  再びくわえこまれる。 「あぁッ、も、ぁあんっだめ、イく、イッ……ぁあああっ!…………ッんぁあっ!……!」  絶叫しながら、あたたかい口の中に欲液を放った。

ともだちにシェアしよう!