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 マンションに着くと、地下の駐車場に車を止めてエレベーターで佳孝の部屋に向かう。 「散らかってるかもしれない」  佳孝は苦笑しつつ漏らしていたが、実際は綺麗に整頓されていた。最初に入ったリビングにはテーブルと椅子が二つ。テレビの向かいには、ソファが置かれていた。  ここで二人は向かい合って食事を取り、隣同士でテレビを見る。  二人での生活感が滲み出ている空間に、弾んでいた理津の心は萎んでいく。 「理津」  佳孝に名前を呼ばれ振り返る。 「おいで」  優しい笑みを浮かべた佳孝が両腕を広げる。沈んだ気持ちを誤魔化すように、理津は佳孝の胸に飛び込む。  力強く抱きしめられ、理津は胸に顔を埋めた。  久々に感じた佳孝の体温と匂いに、涙が自然と目に溜まる。 「佳孝さん。会いたかった」 「僕もだよ」  抱擁が離れ、今度は唇が重なり合う。求めるように首に腕を回すと、佳孝の舌が割り込んだ。 「ぁ……はぁっ……」  口腔を激しく弄られ、息苦しさに理津は熱の孕む息を吐き出す。  何度も角度を変えて唇を吸われ、全身がドロドロとした熱に侵されていく。 「ッ……佳孝さん」  理津は熱を孕んだ目で佳孝を見つめる。  今すぐ抱いてほしい。佳孝のものにして欲しい。  苦しいぐらいに張り詰めているこの想いを佳孝の手で、解き放って欲しかった。 「疲れただろう、少し休んだ方がいい」  そう言うなり佳孝は、理津から離れてしまう。  理津の気持ちに気付いていないのかとも思ったが、佳孝は困ったように笑みを浮かべていた。 「何か飲む? 用意できるのはコーヒーかお茶くらいだけど」  キッチンに背を向けてしまった佳孝を見つめ「お茶でいい」と告げる。  行き場を失った熱が身体の中を燻り、胸は落胆に沈む。  でも我が儘は言えなかった。やっと会えた佳孝に、やっぱり呼ばなきゃ良かったと思われたくなかったからだ。

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