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 夕食は今まで口にしたことがないような、美しい彩りで飾られたコースメニューだった。  敷居の高そうなレストランに、理津は緊張で味がよくわからずにいた。それでも穏やかな表情で話しかけてくる佳孝に、理津も出来る限り笑顔で接した。 「高校卒業おめでとう」  そう言って、渡されたのは白い手のひらサイズの箱だった。驚いて言葉を失う理津に、佳孝は開けるように促してくる。  理津は震える手で箱を開く。中には時計が入っていて、高価なプレゼントに理津は言葉を失った。 「一生使うものを考えたんだ。これが一番いいかなと思ってね」 「……ありがとう。一生、大切にする」  言葉を噛み締めながら、理津は口にした。  佳孝からのプレゼントは初めてで、理津は震えるほどの喜びがこみ上げる。泣き出しそうになるのを堪え、理津はもう一度、ありがとうと口にした。  マンションに戻ると、佳孝は理津を寝室に案内した。  部屋に入るなり、理津は激しい嫉妬に奥歯を噛む。ダブルベッドが目に飛び込み、胸が掻き毟られるような思いがした。 「理津は今日、ここで寝ていいから」  一緒じゃないのか、という疑問に自然と視線が佳孝に向かう。 「ごめん……理津」  佳孝の声も表情も複雑な色が滲んでいた。 「いいよ。大丈夫」  理津は詮索することなく、ただ佳孝の意図を汲む。  理由は聞かなくても分かる。佳孝はここで、セックスしたくないからだ。夫婦の寝室を、浮気相手に汚されたくはないのだろう。 「理津、本当に――」  佳孝が言いかけたところで、インターホンが鳴る。  こんな時間に誰だろうかと、互いに顔を見合わせた。佳孝は首を傾げながらも、玄関に向かってしまう。

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