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 濡れているからシャワーを浴びた方がいいと言われ、理津は素直に従った。  シャワーを浴びながらも頭の中では、佳孝から告げられる別れの言葉ばかりがしめていた。  この関係を辞めたいと佳孝が言ったのならば、自分は笑顔で分かったと言わなければいけない。取り乱しでもしたら、その場では別れないと口にしても来年からはもう来ないかもしれない。  身体は温まっていく。でも、心はどんどん冷えていく。  なかなか踏ん切りが付かないものの、この場に居続けたら佳孝が心配するかもしれない。  理津は一度大きくため息を付き、シャワーを止めた。  部屋に戻ると、佳孝がベッドに腰を下ろして俯いていた。理津の気配に気づき、「僕も入ってくるよ」と行って、浴室へと向かう。  一人残され、理津は窓際に近づいた。  都内の夜は明るい。そして騒がしい。  留まることを知らない人と車の動きが、静かな地元との差を感じさせた。  雪が上から下へと落ちていく光景はなかなか見ることがなく、少しだけ楽しい。いつもは、上から振ってくる雪を見つめるばかりだったからだ。 「理津」  振り返るといつのまにか、佳孝が戻ってきていた。 「おいで」  抱きしめてくれるのかとも思ったが、佳孝はベッドに腰を下ろし、その隣に招いた。  理津が隣に腰を下ろすも、なかなか佳孝は口を開かない。  心臓が嫌な音を立て、喉がカラカラに乾いていた。死刑の時を待つ受刑者のような気持ちだ、と理津は大げさにもそう思った。 「すぐに追わなくてごめん。理津」  ようやく佳孝が口を開く。理津は「別にいいよ」と首を振る。

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