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第4話 過ちの代償

そんなある日。 突然、焔次から電話があった。 「え?焔次くん!?ど、どうして……」 『今すぐ来い』 「え?こ。来いって……」 焔次は理由を言わず。場所を言うと電話を切ってしまった。 わけが分からない草太だったが、言われた通りその場所に向かうことにした。 指定された場所は、町の中でも賑やかな繁華街にある飲み屋だった。 着くと店の前に、焔次とその友達が数人待っていた。 「焔次くん……」 久しぶりに見た焔次の姿に、草太は思わず胸が高鳴り体温が上がった。 すらりとした姿は立っているだけで色気があって、こんな状況なのに草太は見惚れた。 「おせーよ」 「ご、ごめん。バイトが……」 「どうでもいい。じゃあ、支払いよろしくな」 「え?し、支払いって?」 わけがわからない草太を見ながら、焔次イライラしたように言った。 「慰謝料だよ、慰謝料。寝てる間に襲われたんだから当然だろ」 「そ、それは……」 そう言われてしまっては草太はなにも言えない。 「早くしろ」 「わ、わかった」 草太は強く言われて、支払う。 周りにいる焔次と一緒にいた友達や女の子は何も言わないながら、こちらを見てクスクス笑ったり、こそこそ話している。 いたたまれなくて、草太は俯く。 そんな草太を見て焔次は満足したようにニヤリと笑い「じゃあ、また頼むな」と言ってどこかに向かった。 「またって。そ、そんな……」 取り残された草太はそう呟いた。 それから焔次はことあるごとに草太を呼び出し、飲み代を払わせるようになった。 しかも、だんだんエスカレートして、家に呼びつけて掃除や雑用を押し付ける。ある日などは家に呼ばれて行くと、焔次の連れ込んだ女の子とすれ違った。 何のために呼び出したんだと思っていたら、女の子とセックスの後始末をしろと言われた。 焔次は、バイトや授業も時間関係なく呼び出す。 しかも、気分しだいで殴られたりもした。 その度に、草太はバイトを休んで呼び出しに応えていたので、何度かバイトをクビになってしまった。 しかし、草太は断ることも出来ず、言われるままに従うことしか出来なかった。 寝ているのをいいことにキスをしてしまったのは本当だ。怒るのも当然だ。 そんなある日、草太はいつもと同じように焔次に呼び出されて焔次の家に行った。 「いつも通り、掃除と食事適当に作っといて」 「はい……」 草太が現れると、焔次はスマホを見ながら目も合わせずそう言った。草太は言われるまいつも通り従う。 焔次は友達をよく部屋に入れて遊んだりしているようでいつも散らかっている。いままではハウスキーパーに頼んでいたようだ。 それを、今は草太がすべてやっている。 草太はてきぱきを片づける、もう何度もしているから慣れてしまった。 黙々と部屋を掃除をしていると、ソファに座っていた焔次がおもむろに言った。 「なあ、お前ホモなんだろ?」 「え?……う、うん」 「じゃあ、男のちんこ、しゃぶったことある?」 「え?あ、あの……」 草太はそんな事を聞かれると思ってなくて、顔を真っ赤にさせる。 「最近面白いことないからさ、ネタになるだろ?だから、しゃぶれ」 焔次はニヤッと笑ってそう言って自分の下半身を指さす。 「しゃ、しゃぶるって」 草太はさらに顔を真っ赤にさせた。 「それぐらいできるだろ?興味あったんだよな、男のフェラ」 「で、でも……い、いいの?」 草太がそう言うと焔次は嫌な顔をする。 「いちいち聞くなよ、ほんとキモイな。早くしろ」 「は、はい」 草太は、慌てて焔次の前に跪いく。 実際、草太はそういう経験はまったくないわけではない。むしろ故郷から出るまでセクシャリティを隠していたこともあって。大学に入って解放され、一時期はゲイのいる界隈に入り浸っていたこともあった。 かと言って目立たず、引っ込み思案の草太は経験が多いわけじゃないし。テクニックも自信はない。 草太は焔次を前にしてごくりと唾を飲む。何かうるさいと思ったら心臓の音だった。まさかこんな事になるとは思ってなかった。 「ほら、早くしろよ。俺のこと好きなんだろ?それくらい出来るよな?」 焔次がそう言って頭を押さえつけた。 「わ、わかった……」 草太は戸惑いながらも焔次のズボンを開け。焔次の物を取り出す。 「噛むなよ」 「う、うん。むぐっ……」 焔次はそう言って無理矢理口に突っ込む。草太は嘔吐きそうになりながら、必死に焔次の物を咥えた。 苦しくて思わず生理的な涙が出る。それでもなんとか唾液を絡め、舌を使って刺激し始めた。 「……なんだよ、下手くそだな」 「んぐ、ご、ごめん」 焔次が眉を潜めて言った。焦っているせいか単に草太が下手なのか、焔次の物はなかなか反応しない。 草太は、なんとか必死に勃たせようとした。 手も使って扱き、陰嚢もしゃぶる。舌で先端を刺激したり強く吸ってみたりしたが、それでもなかなか勃たない。 そうして、顎がだるくなって辛くなってきた頃やっと半勃の状態になった。 「本当に下手くそだな。こんなんじゃイクにもイケねーよ」 「んん……」 焔次は呆れたようにそう言うと、口から自身を引き抜いた。 とろりと唾液が糸を引く。 草太は離されて、へたりと座り込んだ。 すると、焔次が顔を顰めた。 「うわ。お前舐めただけで勃ってるじゃん。きもちわりーな」 座り込んだせいで草太の下半身がさらされた。そこはズボンの上からわかるくらい膨らんでいた。 「あ……。ご、ごめん」 草太は耳まで真っ赤になる。 そうなのだ、焔次には完全に嫌われてしまった。でもずっと好きだったし、付き合えるとは思ってなかったけどこういう事が出来たらと何度も想像していた。 だから、好きな人の雄の匂いとリアルな感触に、興奮してしまった。 草太は固く勃ち上がってしまったそこを隠すように足をもじもじさせる。 恥ずかしくて、さらに顔が真っ赤になる。フェラが苦しかった事もあって頭がクラクラしてくる。 「もういいよ。お前、そこに四つん這いになれ」 「え?あ、あの」 「男の尻でもお前の下手なフェラよりましだろ。やってやるんだからありがたく思えよ」 そう言って焔次は草太を床に四つん這いにさせ、ズボンを脱がせた。 「ま、待って。急には入らないよ」 いきなり入れようとする焔次に、草太はそう言って止める。 「ああ?なんだよ、面倒くさいな」 「ご、ごめん。ちょ、ちょっとローション借りるね」 草太はそう言って、慌ててローションを取りに行く。焔次が女の子と使った物で、片付けをしていて場所も知っていた。 草太はローションを手に取り、後ろをほぐし始める。 こういった行為自体、久しぶりだから手間取った。 「本当に面倒だな。早くしろよ、せっかく勃ったのに萎えるだろ」 焔次はイライラしたように言った。 「ご、ごめん。ちょ、ちょっと待って」 まさかこんな事になるとは思って無くて、草太は焦る。 動揺しているのもあって思ったように解れない。 もたもたしていると、痺れを切らせた焔次が「もう、いいだろ」と言って解していた手を退かして、四つん這いにさせると無理やり押し入ってきた。 「あ!ほ、本当……待って。っい、痛!」 まだ、解しきれてないそこは当然ひどい痛みが走った。草太は悲鳴をあげる。 「うるせーな、ちょっとくらい我慢しろよ」 しかし、焔次はそう言って、痛みで逃げようとする体を押さえつけ一気に押し込む。 「っ……!!」 草太は必死に痛みに耐える。思わずフローリングをガリっと引っ掻く。 痛みに涙がにじむ。 しかし、焔次は構うことなくガツガツと腰を動かし始めた。 「おい、もうちょっと緩めろよ。きつすぎてちょっと痛い」 「っ……ご、ごめん。ちょ、ちょっと……っあ、待って……」 草太はそう言って必死に力を抜こうとする。しかし痛みが絶えまなく来るので勝手に力が入ってしまう。 「早くしろ」 「っい!!っ……っは!」 また力任せに押し込まれ、一瞬息が止まった。それでも草太は自身を扱きなんとか力を抜こうとする。 はっはっと短く息を吐き、痛みを逃がす。 しばらくそうして耐えていると少しだけ滑りが良くなってきた。ローションのグチュっとあからさまにいやらしい音が部屋に響き始める。 「っ……っあ……」 少し余裕が出てくると草太の体はだんだん熱がこもってきた。 改めて、焔次の形を感じる。焔次の物が入っている、そう思うだけで草太はたまらなくなった。 「っあ!……ん……あん」 その時、固く勃ちあがったカリの部分が、草太の感じやすいところを擦った。ゾクゾクしたものが体を走り、中がうねる。 「おい、変な声出すなよ。気持ち悪い、気が散るだろ」 焔次がそう言って、草太の頭を押さえつけた。 「っ!ご、ごめ……っんん」 焔次の言葉に、草太は必死に唇を噛み、手で口を塞ぐ。 焔次は草太の腰を掴み、乱暴に動かす。 ガツガツとゆすられ、草太の視界が揺れる。 口を押さえていることと、後の刺激の所為で涙が滲む。 焔次はなかなかイけないことにイライラしているようだった。何度かため息をついて舌打ちをする。 しかし、ある時を堺に興が乗ったのか焔次の物が大きくなり、息遣いも荒くなった。 「っく……いくぞ」 限界が近いのか中のものがブワリと膨らんだ。 「っあ……あ!」 ひと際大きな音で腰が打ち付けられ、草太は中に出されたのを感じた。 焔次に出されたんだと思った草太は、その事に気持ちがこみ上げてきてすぐにイってしまっう。最奥に熱い物が当たり、草太の体は引き攣ったように震え。同じように熱を放つ。 焔次は、腰を打ち何度かに分けて付け中に出す。 気持がよくて、草太は何度もイってしまう。 「っああ……あ、あ……」 焔次は、出すものを出すと体を引く。 ずるりと中の物が引き抜かれた。 草太はそれにも感じてまた体を震わした。 脱力して床に横たわる。ドロリと中に出したものが溢れる。ひやりとしたフローリングが気持ちいい。 声を出さないようにと唇を噛みしめていた所為なのか、口の中で血の味がした。 頭がぼんやりしてなんだかふわふわした気持ちになる。 草太はよろよろと体を起こすと焔次に近づいた。 始めは痛かったけど、焔次に触られていると思っただけで気持ちよかった。 こんなに気持ちいいと思ったのは、初めてかもしれない。 焔次はというと、その場に座り少し呆然とした表情であらぬ方向を見ていた。 「え、焔次くん……あ、あの。どうだった?」 「うん?ああ、まあ思ってたよりましだったかな……」 「ほ、本当?い、嫌じゃなかった?気持ち悪くなかった?」 草太は思っていたより反応が悪くて嬉しくなる。さらにじりじり近づく、もっと触れたいもっと近くにいて欲しいと思った。 「ああ、まあ」 「焔次くん、す、好き。お願い、き、キスしたい……」 さっきの感触を思い出すだけで、好きという気持ちで一杯になる。 酷い事をされているのは分かっているのに、焔次を好きという気持ちが消えない。しかもこんな風に肌を合わせてしまったら止まるはずもなかった。 しかし、それを聞いた焔次は顔を顰める。 「はぁ?ちょっとやったくらいで何、調子乗ってんじゃねーよ。触んな」 「っ、ご、ごめん。……っい!」 焔次はうるさい蠅を払うように草太を殴る。そうして立ち上がるとズボンを整え立ち上がった。 「めんどくせーな。シャワー浴びてくる。それまでに汚したとこ片付けとけよ」 「あ……」 焔次はだるそうにそう言うと、バスルームに向かった。 「あ、それから。俺が出てくるまでには帰れよ。今日はもう寝るから」 「は、はい……」 一人ぽつんと残された草太は、フローリングに座り込んだ。 色々あったせいなのか少しぼんやりしていた草太だったが、しばらくしてのろのろと立ち上がると、言われた通り片付けを始める。 体はあっという間に冷えた。 「じゃあ、帰るね……」 玄関で、おそらく聞こえていないだろうけ、ど草太はそう言って焔次の部屋を出た。 マンションを出て、草太はとぼとぼと道を歩く。 時間は深夜までとはいかないが、そろそろ終電が出る頃だ。 しかし、頭の芯がぼんやりしていて急ぐ気も起きない。 まあ、歩いてでも帰れればいいかと草太はとりあえず足を進める。 街灯の光にぼんやりとした影がアスファルトに映る。昼間の熱気が残っているのか空気はまだ蒸し暑い。 色んな気持ちがこみ上げてきて、視界が滲んだ。 さっきの事を思い出すと。 焔次はなんであんな事をしたのだろうか。本当にただの好奇心なのか。 もしかして夢でも見たんじゃないかとすら思う。しかし、下半身にはまだ痛みが残っている。 そっと、お腹を触ってみる。思い出すとジワリと熱が上がった。 その時、誰かが近づいて来ていることに気が付いた。 「あれ?草太?偶然だね」 その言葉で草太は顔を上げる。 見ると、そこには最近やたらと声をかけてくるようになった速水清隆が立っていた。

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