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第7話 困惑

「好きなんだ……」 突然,、清隆にそう言われて草太は戸惑う。 本当に意味がわからない。 友達になりたいと言ってきた事もそうだが、これも輪をかけて意味がわからない。 「な、何言って……」 「ごめん、急に……驚いたよな」 草太が何か言う前に、清隆は早口でさらに続ける。 「本当ごめん。だからって付き合って欲しいとかそういう事じゃないんだ。ただ、知っておいて欲しくて……」 「何が目的なの?」 草太は訝しんだ表情で聞いた。 清隆は人気者だ、女性はもとより同性からも人気がある。教授からも頼りにされ。常に人がまわりにいる印象がある。 それなのに、わざわざ男でゲイの草太にこんな事を言うなんて、よっぽどの理由がないとおかしい。 「目的なんて……俺は草太の味方だってわかってもらいたくて。……確かにちょっと唐突すぎたかもだけど……」 清隆はしどろもどろに言う。しかし、そんな事を言われても草太にはそれを信じるほど清隆の事を信用はできなかった。 「……もしかして罰ゲームでもやらされてるの?」 草太は周りを見回しながら言った。 「ち、違うよ!」 清隆は驚いたように言った。確かに、周りを見ても誰もいない。 とは言え誰もいないからって、罰ゲームじゃないとは言えないし。隠し撮りでもされている可能性だってある。 「もう、どっちでもいいや……」 草太は何だか疲れてきてそう言った。ただでさえ今日は色々あって頭がぐちゃぐちゃなのだ。 頭が上手く働かない。 「とりあえず清隆が何がしたいか知らないけど、もう僕に関わらないで」 草太は考えるのが面倒になった。本当だとしても草太の頭では処理しきれない。 「で、でも……」 「じゃあ、そう言うことだから」 草太はそう言って清隆を置いて、その場を離れた。 流石にそれ以上、清隆は付いてこなかった。 ——それから数日が経った。 草太は清隆がもう話しかけてくる事はないだろうと思っていた。 あれだけ言ったし、手の込んだドッキリだと言われた方が納得できる。 しかし、予想に反して、清隆は以前よりさらに話しかけて来るようになってしまった。 以前は、食堂でたまに話すくらいだったが。 授業が一緒になったら必ず話しかけてくるし、食堂ではほとんど毎日話しかけられるようになった。 清隆は草太に好きだと言ったが、話しかけて来る時はその事をおくびにも出さず普通に話しかけてくる。 相変わらず草太は清隆が何をしたいのか分からないままだった。 まあ、それは別にたいした問題じゃない。草太の勘違いなのかもしれないし。 しかし、問題が一つあった。 「草太、ここ座っていい?」 今日も草太が食堂で食事をしていると、清隆が話しかけてきた。 問題はここからだ。 清隆は友達が多い。 清隆が隣に来ると、当然清隆の友達や清隆目当ての人間も周りに集まる。しかも、清隆は草太を安心させるためなのか、最初から友達を連れて話しかけてくることもある。 しかし、人見知り気味で社交性があまりない草太にとっては正直、居心地が悪い。 しかも、清隆は草太にばかり話しかける。 草太は人と楽しく会話できる性格じゃないし、毎回変な空気になって会話が止まってしまう。 当然、清隆の友達たちは目に見えて困惑することになる。 なんでこんな奴に?と思われているのは言われなくてもわかった。 しかも、おそらく清隆を狙っているのだろうと思われる女の子に、清隆には聞こえないように嫌味を言われたり。果てには、わざとぶつかったりと地味な嫌がらせをされた。 『わざと目立って、優しい清隆君の気を引いてるんでしょ?』 そう言われた時は、流石に変な笑いが出た。 なんでこんな事になるのか分からない。 でも、友達のように話しかける清隆に強く止めろとは言えなくて、ただ流されるように時間が過ぎていった。 それに、それとは別に焔次のこともある。 「あ……焔次くんだ」 スマホが鳴った。見ると焔次の呼び出しだった。 焔次は、相変わらず突然草太を呼び出し、雑用をさせている。草太は相変わらず断ることが出来ず、呼び出しに応じている。 ただ、あれから少し変化があった。 どういう心境の変化なのか、焔次はあの夜したように草太にセックスの相手をさせるようになったのだ。 とは言えやり方は以前と同じ。 「おい、脱げ」 そう言って、乱暴に四つん這いにさせるとフェラをさせた後、強引に挿入する。 場所も選ばずキッチンでいきなり脱げと言われたこともあった。 相変わらず乱暴で、少しでも上手く出来なかったら殴られる。 それでも草太は焔次の呼び出しを断ることはなかった。 最初は痛かったけど慣れてくればましだ。 「……っあ、ん……ん」 「おい、声出すなって言ってんだろ」 「っ……ご、ごめっ……あっ……ん!」 今日も焔次は草太に部屋の掃除をさせた後、脱げと言った。草太はリビングのテーブルに手をついて必死に声を殺す。 唇を噛み手で口を押さえて塞ぐ、息が苦しくなって涙がこぼれ、視界がゆがむ。 焔次は乱暴に腰を打ち付けるから、ガタガタとテーブルが揺れる音と肌がぶつかる音が部屋に響いた。 しばらくすると、共に微かに濡れた音もしてきた。 固いものが内壁を擦る。 草太は焔次の物をダイレクトに意識して、体にゾクゾクとしたものを感じた。 「え、焔次くん……僕、もうイク……」 「はあ?イってもいいけどそこらへん汚すなよ。せっかく綺麗にしたんだから」 「っあ……は、はい……んあ!……ん」 草太はそう返事して、自分の物をこぼれないように握る。草太のそれは先走りを零し固くなっていた。 しばらくテーブルがギシギシいう音がしたかと思うと焔次の動きが早くなる。 「っく……」 「っあ!……イく……」 最奥に出された感覚がして、草太はその刺激でイってしまう。 清隆はそんな草太にかまわず、何度かにわけて全て吐き出す。 「っあ……っあ……っあ」 ガツガツと敏感になった中をさらに刺激が加えられ、草太は体を痙攣させる。 草太は荒く息を吐き、脱力してテーブルによりかかる。足に力がはいらない。 グチュっという音と共に焔次の物が引き抜かれた。草太はそのままテーブルに突っ伏す。 「あーあ……ったく。汚すなって言ったのに……」 「はぁ……はぁ……ご、ごめん」 なんとか手で押さえていたが、受け止めきれなかったようだ。 しかも、脱力して座り込んだから焔次が出したものもこぼれて、それがさらにフローリングを汚している。 イッた余韻でまだ少し頭がぼんやりした状態で、草太はなんとか返事を返した。 焔次はスッキリした顔で、さっさとズボンのベルトを閉め。何も無かったかのように近くのソファーに座る。 草太はなんとか息を整えると、片づけを始めた。息が乱れて、体が敏感になっているのか服が肌をこするだけで体が震えてしまう。 ちらりと焔次の方を見ると、何もなかったようにスマホをいじっている。 草太は疑問に思う、なんで焔次はこんな事を続けるのか。 最初は試してみたいという好奇心でもおかしくなかったが、その後も焔次は草太に相手をさせるのは意味がわからない。 まあ、抱くと言ってもまるでオナホみたいな扱いだし、後腐れも変な駆け引きもしなくてもいい草太は、女の子とするよりは手っ取り早いし文句も言わない。 そういう意味なら分からなくないし、確かに便利だ。でも、草太に言わなくても焔次には言えばヤらせてくれる女の子は沢山いるはずで、やっぱり草太を相手に選ぶのはおかしい。 そんなことを考えていたら、焔次がスマホをいじりながら言った。 「……そう言えば。お前、最近仲いい奴がいるらしいじゃん」 「え?仲がいいって?」 突然話しかけられて、草太は驚く。 「ほら、今日も食堂で喋ってただろ」 要領を得ない草太に、焔次はイライラしたように言った。 「ごめん。えっと……清隆のこと?」 「そう、そいつだよ」 「まあ、仲がいいって言うか向こうが何かやたら話しかけてくるから喋ってるだけで、そんなに仲はよくないよ」 「ふーん」 「あ、あの……気になる?僕は何とも思ってないよ」 もしかして嫉妬してたりするのか?まさかと思いつつ聞く。 すると、焔次は眉を顰めて言った。 「別にお前がどう思ってようが知らねーよ。聞いてもいない事は喋るな」 「ごめん……」 謝ったが、焔次はそれにもイライラしたのか舌打ちをした。 草太はまた怒らせてしまったのかとびくびくする。失敗したなと思いながら草太は取り繕うようにさらに説明した。 「なんで清隆は僕に話しかけるのかは知らないよ。たぶん、ただのお節介みたいなものだと思うよ。あ、でもこの間偶然会って、好きだとか何だとか言われた」 「はぁ?」 焔次は相変わらずスマホをいじっていたが、流石に少し驚いた顔をした。 「たぶん酔ってたか冗談で言ったんだと思う。僕がゲイだからってからかってるのかも。まあ、ただの変人なのかもしれないけど……」 「……へー」 焔次は何か考え込んだ表情になった。 草太はその表情に何故か少し嫌な予感がする。 「た、たぶんすぐに飽きるんじゃないかな?清隆は友達も多いし」 「……まあ、どうでもいいけどな」 「そ、そっか……」 素っ気ない答えに草太は困惑しながらも、これ以上怒らせたくなくてへらりと笑う。しかし、焔次はこちらを見もしていなかったから、無駄な努力に終わった。 なにか、引っ掛かりを感じながらも。草太は焔次と普通に会話が出来たことに嬉しくなった。 「っていうか、いつまでここにいるんだよ、早く帰れよ」 「ご、ごめん。もう、終わるから……あっ!」 慌てて、持っていた物を落してしまった。 「何してんだよ!」 「ごめ!……っぁぐ!」 焔次はイライラしたのか草太を殴る。草太は痛みでうずくまった。 その様子を見て、焔次はまたイラついたように舌打ちをした。 「本当に使えねー。寝るから早く帰れよ」 「っは、……はい」 その後、なんとか片付けを終えると、草太は家に帰る。 そんな風に、日々は過ていった。この先どうなるのかもわからない日々。 草太は自分が今、幸せなのか不幸なのかもよく分からなくなっていた。

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