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第9話 デート
草太とデート——
と言っても、草太は友達と遊びに行くような感覚何だという事は分かっていた。
それに、あくまでお礼のためだ。
それでも清隆にとって、好きな人と出かけるのだデートと変わりない。
「じゃあ、映画に行って、その後食事でいい?」
「うん」
二人で相談した結果、そんなスケジュールになった。
場所は清隆が言った、新しくできた商業施設だ。中には店や映画館、レストランもある。
最初に遊びに行くには丁度いい。
草太は人が多いのが苦手と言っていたが「それぐらいなら大丈夫だよ」と言ったのでそこに決まった。
行く日は、次の日曜日。
清隆は嬉しくて、その日のためにわざわざ服を買いに行ったり、行く商業施設をネットで検索したりして完全に浮かれていた。
——そうして当日。
幸いにも、快晴。少し暑いけど、海沿いにあるその施設は、幸いにも風もあって涼しかった。
見る映画は二人で相談して決めた。
映画は今話題のヒューマンドラマ系の映画を見ることになった。
「面白かったね。まさか、あそこで栓抜きがあんな使われ方するなんて思わなかった」
映画が終り、パンフレット読みながら映画館を出た草太が言った。
「う、うんそうだね」
清隆はもごもごと答える。映画はもともと評判が良いいもので、清隆も楽しみにしていた。
しかし、映画を見ている間。草太のことが気になって、あまりストーリーに集中できなかったのだ。
映画中、かすかだけど変わっていく草太の表情が気になってチラチラ見ていてぼんやりしていた。
「どうせなら、ゆっくり座ってから喋ろう。草太は何が食べたい?」
清隆はそう提案する。食事に行く予定だったが、何を食べるかは決めていなかったのだ。
二人で歩きながら相談して、適当な店に入る。商業施設に入っているイタリア料理店に入った。
「僕、結構食べるから……」
草太がそう言って、チェーン店だけど量が多くて美味しいその店に決まった。
「いつもそんなに食べてたっけ?」
席に着きながら清隆は聞いた。食堂でよく食事をするようになったけど、そんなに食べているように見えなかった。
草太はちょっと恥ずかしそうに言う。
「いつもはちょっと節約のために少なくしてるんだ。本当はもっと食べたいんだけどね……」
「そうだったんだ。じゃあ、今日は遠慮なく食べてよ。俺の奢りだし」
清隆は、そう答えた。
入ったイタリア料理店はチェーン店だけあってそんなに高くないから、よっぽどの事が無い限り払える。
それよりも、清隆はこんな何気ない会話を出来ることが嬉しかった。
大学で会っても何かしながらだったり、友達に話しかけられて中断されたりしていてこんな風にゆっくり話せないのだ。
結局、草太は二人分のピザと副菜にもう一つおかずを頼み、デザートも食べていた。
「……本当によく食べるんだね」
健康な男子なら多くても変じゃないが、それでも多い。
「ご、ごめんね……あのやっぱり割り勘にする?映画も奢ってもらっちゃったし……」
「いやいや、そう言う意味じゃないよ。これくらい奢る、大丈夫だよ」
清隆は慌てて言う。草太は清隆より小柄だから、余計に以外だったのだ。
でも、こんな風に知らない一面を知れるのは嬉しい。
「この後はどうしようか?」
店を出たところで草太が言った。
「ちょっと服が見たいなって思っててさ、草太付き合ってくれないか?」
この後のことは決めてなかったが、まだ一緒にいたかった清隆はそう言った。
特に買いたい服なんてなかったが、時間は稼げる。
それに買い物をしながら、草太の好みの物や欲しがっているものが知れるかもと、言う思惑もあった。
草太のことならなんでも知りたい。
のんびり施設内を歩きながら店を回る。
休日だからか、流石に人が多かった。
服が欲しいと言ってしまったので、いくつか店を回る。
「草太、この服似合いそうじゃないか?」
「え?そう?っていうか僕じゃなくて清隆の服を選びなよ」
草太は呆れたように言う。
服を見ていると、つい草太に似合うんじゃないかと想像してしまって買い物は進まない。
「いや、でも本当に似合うからさ。着てみてよ」
清隆はそう言って、強引に草太に試着をさせてみる。
「どうかな?」
「やっぱり似合う」
その服は明るい色と柄が入ったシャツだ。
草太はいつも地味な色の服ばかりだ。それも変ではないけど、こういう服も似合うと思ったし、着ているのを見るとやっぱり似合っていた。
「そう?……でもちょっと高いな」
草太は値札を見て言った。
「じゃあ、俺が奢るよ」
「え?!何言ってんの……流石にそれは……」
草太は流石に困った顔になった。
「でもお礼のために来たんだし。うん、これでチャラね」
流石に強引かなと思いつつ、清隆はそう言って強引に買ってしまう。
「お礼っていってもここまでの事してないと思うけど。……しかも、結局清隆の服買ってないし……」
草太は困った顔でそう言いつつも、買ったものを受け取ってくれた。
それから、さらに店を回る。
他にも、雑貨やカバンを見て回った。特にこれと言った物は買わなかったけど、商品を見ながら、草太と他愛のない話をするのは楽しかった。
「次はどこに行こうか……」
しばらくして、清隆はそう言った。
「ちょっと休憩でもする?」
時間は丁度三時ごろ。休憩するには丁度いい時間だ。
「そうだね、カフェかどこかに入ろうか……あ」
「うん?どうしたの?」
どこか近くにいい店がないか辺りを見ていた時、気になる店が目に入った。
「い、いや。何でもない」
清隆は慌ててそう言って誤魔化した。
気になる店というのは、コーヒーやお茶も出るが、どちらかと言うとパフェやケーキがメインのファンシーで可愛らしいお店だった。
実は、清隆は無類の甘い物好きなのだ。
でも男で甘いもの好きとはあまり言えなくて。こういったお店には行けない。彼女がいた時は、一緒に行けたりしたが、一人だと躊躇する。ましてや今は男二人だ。
「あそこに行きたいの?」
「う……その……」
そのお店は基本的にパステルカラーで構成された、いかにも可愛らしい店だ。
流石躊躇する。
「僕は気にしないよ。なんなら、奢ってもらったし。今度は僕が奢るよ」
「え?でも」
草太は清隆の言葉に構わず、そのまま店に入ってしまった。
清隆はちょっと困った表情をしながらも、恐る恐る着いて行く。
「うわ……美味しそう!」
「ふふっ……」
店に入ってメニューを見ていると、草太が可笑しそうに笑った。
「え?どうした?」
「だって、さっきあんなに微妙な顔してたのに。メニュー見た途端に目がキラキラするんだもん」
草太は、そう言ってさらにクスクス笑う。
「そ、そんなに笑わなくても……」
「ごめん、本当に好きなんだなって思ってさ」
「っ……う、うん。好き……」
清隆は顔が赤くなる。そういう意味ではないことも、自分に言われたわけでもないことは分かっていたが思わず照れてしまう。
それに草太の笑顔が可愛いくてそれにも照れる。
しばらくすると頼んだ物が来た。
「それにしても、それ凄いね……」
清隆は草太の注文した物を見て言った。
草太の注文した物はこのお店でもかなりボリュームのある、大きめパフェだったのだ。
「そう?」
「だって、お昼もあんなに食べてたのに……」
清隆でもやっと昼食べた物が消化してない。
だから、頼んだのも小さいケーキだ。
「清隆も人の事言えないよ……」
「え?そう?」
「だって、その甘そうなホットチョコレートにさらに砂糖入れてたじゃん。ケーキも甘いのに……」
草太はちょっと微妙な顔をして言った。
確かに元々甘い物に砂糖を入れた上に、一緒にケーキも食べたら相当甘い。
「ま、まあ。確かにそうかも……でもいつもこれくらい入れてるから……」
清隆はもごもご言い訳をする。
それを聞いた草太はまたクスクス笑った、清隆もそれを見て、つられるように笑ってしまう。
清隆は本当に、幸せだと思った。
カフェを出てしばらく歩く。
「そろそろ、暗くなってきたね……」
清隆はぼそりと言った。空を見上げると、暗くなってきたのがわかる。
そろそろ帰る事を考えないといけない。
出来ればもっと一緒にいたいけど、流石に友達の段階でこれ以上は無理だろう。
「うん?何か言った?ごめん、スマホ見てた……」
「いや、何でもないよ。そっちは大丈夫?」
「うん、僕こそごめん……」
草太はばつが悪そうに言う。
「次はどうしようか……って思って」
清隆はそう言う。
「そうだね……でもそろそろ暗くなってきたし……」
「あ、ああ」
ああ、やっぱりもうお別れかと清隆はがっかりする。
しかし、草太が以外な事を言った。
「清隆はこの後、時間ある?」
「え?あ、あるけど……」
まさか、草太からそんな言葉が出ると思わなくて清隆はドキリとする。
「色々奢ってもらっちゃたから、お礼になるかわからないけど、夕食作らせてくれない?」
「え?いいの?」
「うん。安上りで悪いけど。僕はこれくらいしか出来ないから」
「いや、いや!嬉しいよ!」
清隆は嬉しくて思わず声が高くなってしまう。
「知り合いが部屋を貸してくれるからそこで作るよ。材料買いにいこう、食べたいものある?」
こうして、清隆と草太は材料を買いに向かった。
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