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第10話 しかけられた罠

「凄い。綺麗なマンションだね……」 清隆は部屋を見回して言った。 食料を買った後、二人は草太が借りたという部屋に到着した。 その部屋はかなり立派で豪華なマンションの一室だった。 「知り合いに相談したら貸してくれたんだ。僕の部屋は狭いし、ボロいから流石に人は呼べなくて……」 草太は、少し困った顔で言った。 「俺としては狭くても、草太の部屋に行きたかったけど……」 「うん?何か言った?」 「い、いや。何でもないよ」 幸い草太は聞こえてなかったようだ、清隆は慌てて誤魔化した。 そんな会話をしていたら、草太が食事の準備をし始めた。 「清隆は座って待ってていいよ」 「でも、草太だけにさせるの悪いし……」 「それじゃお礼にならないよ。大丈夫だから」 草太は強引にそう言って、一人で料理を作り始めてしまった。 料理が得意なわけでもない清隆は、仕方なく待つことに。 しばらくすると料理が出来たのか、いい匂いが漂ってきた。 「出来たよ」 「わあ!美味しそう!」 草太が作ってくれたのはビーフストロガノフとサラダやパン、それからワインもあった。 「本当はもっと凝った料理を作ろうと思ったんだけど、これくらいしか出来なくてごめん」 「いや、充分凝ってるよ。凄いよ草太」 清隆は感動したように言った。テーブルに並んだ料理は、本当に店で出てくるような見た目だ。 料理と言えばお米を炊くくらいしかしない清隆にとって、こんな凝った料理を作れるだけで尊敬してしまう。 「大げさだなぁ、じゃあ食べようか」 「うん」 そうして二人は一緒に食べ始める。 料理は見た通り、とても美味しかった。 「ごちそうさま。本っ当に美味しかった」 食べ終わると清隆は満足そうに言った。草太の性格のように、とても優しくいくらでも食べれそうだった。 「お粗末さまでした。足りた?」 草太はお皿を片付けをしながら聞く。 「丁度いいけど、草太の料理ならもっと食べられるよ」 「良かった。そうだワイン飲む?」 そう言って、草太がワイン片手に隣に座った。 「あ、ありがとう……」 草太が近くに座って清隆は少し緊張する。よく考えたら密室で二人っきりだという事に気が付いた。 清隆は、それを誤魔化すように「本当、すごいなぁ」言った。 それを聞いた草太が不思議そうな顔になる。 「なに?どういう意味?」 「だって、今日は俺のお礼のために誘ったのに、こんな料理を作ってくれるし、気遣いも凄いし。草太は本当に優しいなって……」 そう言うと草太は複雑そうな表情になった。 「……そんなことないよ。っていうか清隆の方が優しいと思うし。正直、僕から見るとちょっと心配になる」 「え?心配?」 草太の言葉に、清隆は不思議そうに聞き返した。 特別人に意地悪な事をしたりはしないが、そこまでのことをしたつもりもなかった。 「だってさ、そもそもあの日、酔いすぎたのだって、困ってる女の子の代わりに飲んだからだろ?」 「え?ああ……そう言えばそんな事もあったかも」 清隆はそう言われて思い出す。草太が言ったあの日とは、草太と清隆が初めて喋った日のことだ。 飲み会はいつも通りの飲み会だった。沢山の友達や友達の友達が集まってきていて、とても盛り上がって楽しかった。 けれども、お酒が入って盛り上がって来ると調子に乗って無茶な事をし始める人間もいる。 楽しく盛り上がればいいが、そうじゃない時もある。 ことの発端は一人の女の子だ。その女の子はあまりお酒が強くなかった。 それなのに、盛り上がった流れで無理やりその子にお酒を飲まそうという変なノリが生まれた。 女の子は盛り下がるのを嫌ってか、なんとか頑張ってお酒を飲んでいた。 しかし、その場が盛り上がっていくにつれ、更に飲め飲めと囃し立てられてしまったのだ。 困った顔をしていた女の子は、それでも空気を壊したくないからか無理をしてさらに飲もうとした。 それを見かねた清隆が、代わりにそのお酒の奪い、飲んだのだ。 なんとか空気は壊れることもなく、女の子も飲まずに飲み会は終わった。 しかし、そのおかげで清隆は結局、記憶が飛ぶくらい酔ってしまったのだ。 「ほっといても良かったのに……案の定、べろべろに酔ってたし……」 草太は呆れて言った。 「知ってたんだ……」 清隆は驚いて、言った。それと同時に気付いてくれていたことに嬉しくなる。 「まあ、でもモテるのも分かるなって思った」 「そ、そうかな?」 草太がからかうように言うので、清隆は赤くなる。 「助けた女の子、清隆のこと見る目は完全にハートマークになってたよ」 「あ~そうだったんだ……気がつかなかった」 「その子誘ってみたら?絶対すぐに付き合えるよ」 「……俺は、草太と付き合いたいんだけど」 清隆は少しムッとしながら、真っすぐ草太を見つめながら言った。やっぱりあの告白は本気に取っていなかったようだ。 草太は少し驚いた顔をして、清隆を見返した。 「……本気なの?」 びっくりした表情が可愛い。 思わず清隆は草太に近づく。近くで見ると草太の頬はお酒のせいかほんのり赤かかった。 清隆はお酒が少し入っていたのもあって、勢いのままキスをした。 触れるだけで直ぐ離れたが、草太はまた目を見開き驚く。 「……俺は最初っから本気だったよ」 やっと分かってもらえたことと、キスをしても嫌そうじゃなかった事もあって清隆はそのままもう一度キスをした。 首を傾け、唇を食むようにする。 想像より柔らかい唇に、清隆は体温が上がった。 少し、酔っていることを自覚しながら、草太が抵抗しないのをいいことに清隆はさらに深いキスをする。 そろりと舌を出し歯列をなぞると少しお酒の味がしたが、それ以上に草太のキスは甘い。 「……ん」 「っ……草太」 今日飲んだホットチョコレートよりきっと甘い。さらに酔いも手伝ってさらに頭がぼんやりしてきた。 草太の表情も少しトロンとしていて、頬もほんのり赤い。 「っ……草太」 清隆はその表情に思わず息を飲み、そのまま草太を押し倒す。押し倒した勢いでガタリとテーブルが揺れた。 草太は嫌がることもなくゆっくりと目を閉じる。 それを見た清隆は、誘われるようにもう一度唇を重ねた。 そろりと舌で唇を舐るように吸うとゆるりと口が開いた。清隆は思うまま草太の唇を堪能する。 草太の舌を絡めたり、つついたりるよう上あごをなぞる。 二人の間に、かすかに水音が響く。 清隆は夢中になり、キスはどんどん激しくなっていった。 「っん……んん」 「草太、草太……」 清隆は草太の名前を囁く。 勢いのままこんな事をして、いいのだろうかと清隆は思ったが、止まれない。 清隆は頬や首筋に顔を埋めキスを落とす。もっと近づきたい、直接触れたいと思った。 服の上から体を撫でる。脇腹から胸のあたりに手を這わすと心臓の鼓動を感じた。薄い体はしなやかで熱い。 男だから胸はふくらみも無いけれど、少しぷくりと固くなっていて、いけない事をしているようで興奮する。 「っん……」 そこに触れた途端、草太の体がピクリと反応した。 「草太っ、可愛い……」 草太の体は女の子とは明らかに違う。男の体にこんなに興奮なんてしたことなかった。それなのに草太の体は触れるだけで高ぶる。 今日こんな事になるなんて思ってなかったから、なにも準備をしてない。 正直、知識もあまりないから何をすればいいかもよくわかっていなかった。 これ以上、進むのはよくないと分かっている。 しかし、清隆は気がついたら草太のTシャツを引き上げ、服の下に手を入れていた。 さっき草太が反応した場所を探る。草太の肌は吸い付くように柔らかく滑らかだった。 二本の指でいじる。 「っん……」 すると草太が声を零し、そこはどんどん固くなってきた。 自分の行動で変化があると嬉しくなる。もっと色々な反応が見たいと思った。 「草太いい?」 清隆はそう言いながら手を下に降ろしていく。お腹のその下、一番気になるところに触れる。 「いいぞ」 その時、後ろで突然草太とは違う声がした。 「っ!!な!」 清隆は顔を上げる。 その人物は、含み笑いを浮かべながらずかずかと部屋に入ってきた。 清隆は草太を庇うように体を起こした。 「あれ?もう止めるのか?俺の事は気にせず続けていいぞ」 その男はからかうように続ける。 「お、お前。不知火!?な、なんでここに」 突然入ってきたのは不知火焔次だった。なんでこんなところにいるのか分からない。 焔次は、ニヤニヤ笑いながら言う。 「なんでって、ここ俺の家だからな」 「っな!!なにを言って……」 清隆は唖然とする。思わず草太の方を見た。 この部屋は草太が知り合いに借りたと言っていたはずだ。 草太は気まずそうに目をそらす。 「草太、どういう……っ」 その時、ぐらりと視界が揺れた。気が付いたら清隆は床に倒れていた。何故か体に力が入らない。 「おお、やっと薬が効いたみたいだな」 焔次が嬉しそうに言った。 「……な……なに?何をした?」 「どうせなら一緒に楽しみたいじゃん。でも暴れられても面白くないから薬を入れた。体が動かなくなるけど、しっかり意識は無くならないって便利な薬だ」 焔次は笑いながら言った。 「な、なんで……」 よく見ると焔次は手に何かを持って構えている。スマホのカメラ機能でこの状況を撮っているのだ。 「お優しくて人気者の速水くんがこんなところで男を押し倒してるなんて、みんなが知ったら驚くだろうな。」 「な、何を……」 焔次はニヤリと笑い言った。 「これをばらまかれたくなかったら、大人しくしてろよ?楽しいことしようぜ」

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