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第18話 貪る体
清隆に告白した翌日。
焔次が目を覚ました時には清隆は、もうベッドにいなかった。
昨日の事は夢だったのだろうかと思ったが、清隆のキスの感触は生々しく残っていたし、清隆の驚いた顔も覚えている。
勢いで告白してしまったが、焔次に後悔はなかった。
それから、数日後——
焔次は相変わらず清隆を呼び出すことはやめなかった。
最初顔を合わせた時、清隆は微妙な顔をしていたが、告白の事は何も言わなかった。だから、焔次も何も言わなかった。
何か言ったところで、現状は何も変わらない。
それに、付き合ってくれと言ったところで、清隆が付き合うと言うとは思えなかった。
何より、草太を殴ると脅せば清隆が従うことで、それは証明されてる。
それなら、今の関係を維持した方が焔次には都合がいい。脅してでも、嫌がられても触れることはやめられない。
『今すぐ来い』
焔次は今日も、メールで清隆を呼び出す。
昨日も呼んだのだが、少し時間が開くとまた会いたくなる。
今日は清隆と何をしようか考えていると草太が話しかけてきた。
「焔次くん、今日は何食べたい?」
「……」
清隆の事を考えていたのに邪魔だなと思って。焔次は、無視する。
「何でも作るよ」
草太はそれにもめげずに聞いてくる。
「んじゃ、辛いやつ」
焔次は面倒で適当に言う。
「わかった、辛いの作るね」
と言うと草太は嬉しそうにふふっと笑った。
「なんだよ?」
「焔次くん、最近なんだか優しいなって」
「はぁ?」
「だって、あんまり殴らなくなったし。質問にも答えてくれるようになったから」
草太はそう言って嬉しそうだ。
「そうか?っていうかそれくらいで喜ぶなよ。気持ち悪いな、殴られたいのかよ」
「へへ、ごめん。食事作ってくるね」
草太はそう言って、また嬉しそうに笑ってキッチンに向かった。
焔次はそれを呆れながら見る。殴られなくなったくらいで何が嬉しいのか分からない。
とは言え確かに最近、草太を殴る回数は少なくなった。
清隆が最近いうことをきくので満たされて、イライラする事が少なくなったのだろう。
草太の存在に馴れてきたのもある。
焔次がベッドルームで待っていると、スマホが鳴った。
友達から電話だ。
『今日、飲み会来れる?』
「飲み会?
『そう、友達の女の子に、焔次が来れるか聞かれてさ〜』
「今日は無理」
焔次は、素っ気なく答えた。
これから清隆が来るのだ。行けるわけない。
『ええ!マジかよ〜最近付き合い悪くねーか?』
「悪いな、気が向いたら行くから」
焔次はそう言って電話を切る。友達はまだ愚痴っていたが焔次は無視した。
付き合いが悪くなったのは本当だ。前は酒を飲んで女の子を抱くのは楽しかったけど、清隆としてから全く興味が無くなった。
今までのことは何だったのかと思うくらい夢中になっている。何度してももっとしたくなって止まらないのだ。
そんな事を考えていたら、リビングから声が聞こえた。
どうやら清隆が来たようだ。
草太と何か話している。
清隆は起き上がりリビングに向かう。清隆と早くしたくてたまらない。
リビングに行くと、清隆が心配そうな顔をして草太に話しかけていた。
「草太、大丈夫か?……!っていうかなんか体熱くないか?風邪?」
どうやら草太の体調が悪いようだ。
「大丈夫……」
草太は迷惑そうに言った。
「大丈夫って……そんな風に見えないよ。無理しない方が……」
「本当に、大丈夫だから」
「どうしたんだ?」
そう言うと清隆が焔次に気が付いた。清隆は焔次を見ると怒ったような顔をして。
「草太の体調が悪いみたいだ、今日は何もしない方がいい」
「あぁ?何言ってんだ。草太、本当か?」
焔次はイライラして言った。
さっき喋った時はいつもと変わらなかったから、草太のことだから大げさに言っているんだろう。むしろ、清隆の気を引きたくてわざとしているようにしか見えなくて腹が立ってきた。
草太は慌てたように立ち上がる。
「だ、大丈夫だよ」
「何言ってんだ、悪化するかもしれないだろ、とりあえず休んだ方が……」
清隆はそれでも食い下がり、草太を止めようとした。
「大丈夫っていってんじゃん。来い」
焔次はそう言って、清隆の手を取り寝室の方に引っ張る。
「え?ちょ、そんなことより草太が……おい!」
清隆はそう言ったが、草太が素直に付いてきたので諦めたようだ。
焔次は清隆をベッドルームに連れて行くと、いつも通り押し倒した。
キスをしようとすると、清隆は嫌そうに顔を逸らし、そのまま、後ろをむいてしまう。
しかし、焔次はいつものことだから気にせずそのまま服を脱がせる。
服を脱がせると、するりと健康的な背中があらわになる。
所々にある黒子の位置はもう覚えた。焔次はそれを指でなぞる。
「っ……」
くすぐったいのか清隆は少し体を震わせた。
焔次はそれだけで興奮してくる。
背中には焔次が付けた歯形やキスマークも無数についている。
綺麗で何もなかった背中が、汚れていくのを見るのは興奮する。もっと自分の証を刻み付けたい。
焔次は清隆の服を全て剥ぎ取り、いつも通りローションをかけ清隆の後孔をほぐす。
呼び出す間隔が狭いからか、中はすぐに柔らかくなって焔次の指を飲み込んでしまう。
「ここ、もう俺専用の孔になったな」
「う、うるさい」
耳元で囁くと清隆は顔を真っ赤にさせてこちらを睨む。その睨んだ顔が可愛くて、焔次はそのまま、とっくに立ち上がっていた自身のものを入れた。
「っ……やべ、気持ちいい」
入れた途端、中のひだの一枚一枚絡みついて、焔次を受け入れる。
焔次はそれだけでイきそうになってしまう。
それを、グッと堪えて最後まで埋め込む。
「っ……」
まだ馴染んでいないのか、清隆は痛そうに息をつめる。
焔次は指にローションを絡め、前に回すと胸の飾りを指でこねていく。いずれはここも感じるようにさせたい。
「草太」
清隆の体はまだ固い、いつものように草太にフェラをさせようと思って呼んだ。
「…………え?あ、僕?」
焔次が呼んだが、草太の反応が鈍い。ぼんやりした顔で突っ立ている。
「何ぼーっとしてんだよ。さっさとこい」
ぼんやりしている草太にイライラしながら焔次は言う。
「ご、ごめん」
草太はそう言って慌てて、服を脱ぐ。焔次はその様子にまたイライラする。草太は本当に邪魔だ、馬鹿みたいにヘラヘラするだけで見ているだけで腹が立ってくる。
でも、草太がいた方が清隆の反応はいいのは確かだ。中も動くし、溢れる声は艶があっていつまでも聴いていられる。
後から清隆を抱きしめて、体を起き上がらせると草太がその前に座った。
「っぅ……草太、大丈夫か?やっぱり体調が……」
草太と向い合せになると、清隆が心配そうに言った。
「…大丈夫」
「おい、なに喋ってんだよ早くしろっ」
イライラした焔次はそう言って、思いっきり腰を突き上げた。
「っぅあ!」
清隆は声を上げ背中をそらした。焔次はそのまま清隆の背中に歯を立てる。
痛かったのか清隆がこちらを睨む。焔次はその反応にニヤリと笑ってそのまま、激しく腰を打ち付け始める。
清隆はその振動に眉を潜めながらも、微かに声を零す。
清隆は無理矢理こちらを向かせて口を塞いだ。
草太もいつも通り、清隆の中心を咥える。
「っっ……」
その途端、清隆の体が目に見えて反応した。痛みで引き攣っていたところが柔らかくなって、表情もとろりと蕩けきた。
なにも考えず、焔次は清隆の体を貪る。ずっとこうしていたい、いっそのこと一つになれたらいいのにと思った。
その後、焔次は何度も清隆を抱き、疲れていつの間にか眠っていた。
思うだけ清隆の中に出して、満足したのが最後の記憶だ。
焔次は何かの音がして、目が覚めた。
その直後、清隆の焦ったような声も聞こえてきた。
清隆は何だろうとベッドから出る。
少し、焦ったような声で気になった。声はキッチンからだ。
「草太、大丈夫か?とりあえずベッドに……」
「どうした?」
キッチンに行くとぐったりした草太と清隆がいた。何だと思って焔次は聞く。
「草太、風邪引いたみたいなんだ。とりあえずベッドで休ませないと」
清隆がそう答えた。目が覚めた音はどうやら草太が倒れた音だったようだ。
草太はしんどそうな顔をしながらも立ち上がろうとした。
「だから、大丈夫だって。それよりバイト行かないと……」
「な、何言ってるんだ。こんな時くらい休まないと」
草太は隆の言葉にかまわずよろよろと立ち上がり、バックを持ってバイトに行こうとする。
しかし、二、三歩歩いたところで草太は足を絡ませ倒れる。
「……っわ」
清隆は慌てて駆け寄り、抱きとめた。
「草太!やっぱり駄目だ、縛ってでも休ませないと」
「でも……」
草太はそれでもまだバイトに行こうとしているようだった。
「なんで、こんな状態なのに……あれ?これ……」
清隆がそう疑問を口にした時、ふと倒れた草太のカバンからなにか紙がはみ出しているのに気が付いた。
焔次も気が付く。それはカードローンや金融会社の催促状だった。
清隆はそれを手に取る。
「あ、こ、これは。なんでもない」
草太は慌てて奪い、カバンの中に隠してしまう。
「草太それ……どう言う事?」
清隆は驚いた顔で、無理矢理草太に理由を問いただし始めた。焔次も少し驚いた。
草太は渋ったが、何とか理由を話始める。
どうやら草太は焔次に呼び出されてたかられていたせいで貯金が底をつき、バイト中でも呼び出される度、サボっていたからバイトをクビになっていたのだ。
だから、いくつもバイトを掛け持ちしてしていたが間に合わず。仕方なく借金をしていたらしい。
「だから、バイトは休めないんだ。ほっといて」
草太はそう言って、また立ち上がる。
「ちょ、ダメだって。焔次!焔次も止めろよ。っていうかお前のせいだろ!」
「はぁ?……なんでだよ……俺は知らねーし」
焔次は眉をひそめて言った。知らなかったのは本当だ。どうやって金を払っていたかなんて興味もなかった。
「お、お前。よくもそんな事……」
そう言って清隆は焔次を睨む。
「そ、そうだよ。僕が勝手にやったことだし……」
草太はそう言って焔次の言葉に同意して、またバイトに行こうとする。
「草太、待って。じゃあ、俺が代わりにそのバイトに行く。お願いだから今日は休んでくれ」
「はあ?なんでだよ。そんな奴ほっとけよ」
焔次はそう言った、風邪くらいじゃ死なないし。それで、なんで清隆がいかなくてはならないのか。
「焔次!お前は黙ってろ!」
清隆は怒鳴って、焔次を思いっき睨んだ。
「っわ、わかったよ。じゃあ、その借金代わりに払うよ。それでいいだろ。草太も休め……」
清隆の剣幕に押されて、焔次は渋々言った。
流石に焔次も少しやり過ぎたかなとも思った。焔次は金には困ってなかったし、草太に命令したのはただの憂さ晴らしに過ぎない。
「そんなの当たり前だろ。草太、焔次もこう言ってるから、とりあえず休んで」
「わかった……」
清隆は焔次の言葉に呆れつつ、草太を促す。
焔次が休めと言った事が効いたのか、草太はやっと頷いた。
清隆はそのまま草太を寝室に連れて行き、寝かせると甲斐甲斐しく世話し始める。
草太はかなり無理をしていたのか、ベッドに入るとすぐにうとうとし始めた。
しばらくすると、清隆は焔次のところにきて紙を渡して言った。
「焔次、風邪に必要な物。リストアップしたから買ってきて」
紙には頭を冷やす物とか解熱剤、それ以外にも経口飲料や食べ物の商品名が書かれていた。
焔次は渋い顔をする。なんで草太のためにこんなことをしなければならないのか。
しかし、また清隆に睨まれて、ブツブツ文句を言いながらも買いに行くことにした。
焔次が買い物から帰ってくと、草太はもう眠っていた。
「とりあえず、これで安静にしてれば大丈夫だと思う」
清隆は焔次が買ってきたのものを受け取って、そう言った。
そうして、草太に買ってきた冷感シートを額に貼って、飲み物もベッドの隣に置いた。
「不知火、来て」
そう言って、清隆は「あそこで喋るとうるさいから」と言って焔次をキッチンに連れて行った。
「なんだよ……」
「俺は、代わりにバイトに行くから。草太の様子を見ておいて」
「はぁ?なんでそんなことまでしないといけないんだよ。だるい」
焔次は、顔を歪ませ嫌そうに言った。金払ったり、買い物も行ってベッドも貸してやってるのに、草太のためになんでそんな事までしないといけないのか。
「それくらい。やれよ!さっきも言ったけどお前のせいで草太は倒れたんだぞ」
清隆は、焔次を睨み怒ったように言った。
「知らねーよ。無視しようと思ったら出来たのに、しなかったのは草太だろ……」
命令はしたが、強制はしてない。呼ばれたからてってのこのこ来る方が悪いし、来なければ、焔次はそれ以上なにもするつもりはなかった。
「また……そう言うことを!」
しかし、清隆はさらに顔を真っ赤にさせて怒る。
「じゃあ、俺の言うこと聞いてくれたら、見ててやっていいぜ」
焔次はふと思い付いてそう言った。それくらいの見返りがないとやってられない。
「はぁ?お前、いい加減に……」
「実は、今日友達に飲みに誘われてんだよな。最近あんまり顔出してないから行こうかな」
焔次は清隆が来る前の電話を思い出して、そう言った。時間的にはまだ飲んでるだろうし合流は簡単だ。
焔次はわざとらしくスマホを取り出して電話をかけるフリをする。
「っ……ふざけるなよ……」
清隆、声を詰まらせ怒る。
「どうする?」
焔次は挑発するように言った。代わると言っていたバイトの時間が、迫っているはずだ。あまり時間はない。
清隆もそれが分かっているのだろう、悔しそうに押し黙った。
「……わかった。何すればいい?」
清隆はやっとそう言った。焔次はニヤニヤしながら口を開く。
「キスして」
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