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第24話 思いと想い
焔次のキスは触れるだけの軽いキスだったが、次第にそれは深くなっていった。
「口開けて」
「んん……」
焔次に言われて、清隆は素直に口を開いた。なんだか、命令を聞くことに慣れてしまった。
開けた途端、焔次の舌が入ってくる。
舌は口の中をかき回し、舌を絡めすくい上げた。
二人の唾液が合わさって、くちゅと水音がやたらを大きく響く。
今日の焔次は、わざとなのかと思うくらいゆっくり味わうようにキスをする。
キスはやたらと長く、息継ぎに唇が離れた時、二人とも息が荒くなっていた。
焔次は、嬉しそうな表情で言った。
「なんか、変な感じだ」
「何が?」
「清隆が、嫌がらない」
「……そういう約束だろ。それに、今日だけだからな」
長いキスに頭をぼんやりさせながら清隆は言った。いつもと違うのは確かだ。そのせいで清隆も少し調子が狂っている気がする。
焔次は苦笑なのか悲しんでるのかわからない顔で言った。
「わかってる。もっとしていい?」
「……そんな事、言われても困る」
そう言うと、焔次はクスクス笑う。
その笑顔に、清隆はこんな風に笑う奴だったのかと意外だった。いつもバカにしたように笑うくらいしか見た事がなかったが、その笑顔は子供みたいに無邪気だ。
憎たらしくて大っ嫌いだったが、少し認識が変わった気がした。
焔次はまた清隆に、キスを再開させる。
清隆はいつのまにか床に組み敷かれていた。
「やっぱり、するんだ」
清隆が独り言のように、ぼそりと言った。
「やっぱりって?」
「いや、焔次のことだから、丸一日セックスしたいとか言われると思ってたから……」
すると、焔次はいつものように、意地悪く笑う。
「ああ、実を言うとそれも考えた」
「考えたんだ……」
清隆は微妙な表情で言った。
「でも、せっかくだから色々したかった」
焔次は、体を起こすと視線を上から下に降ろし、シャツの上から清隆の体を撫でた。
「脱ごうか?」
清隆がそう聞いた。結局するならその方が手っ取り早い。
しかもこの服はどれも買ったばかりだし、なにより高価だ。
焔次が勝手に買ったものだが、思わず汚したらもったいないと思った。
しかし、焔次は「脱がなくていい」と言って清隆の手を止める。そうしてまた嬉しそうに続けた。
「誰かが、『女に服を買ってやるのは脱がすためだ』って言ってたけど本当だな。めちゃくちゃ興奮する」
焔次は指で清隆の胸の辺りを刺激する。少し膨らんだそこがシャツ越しにわかる。
「ん……」
布の上から、変に刺激されて清隆は思わず反応してしまう。指でカリカリ引っ掻いたり、指先でこねられるとそこは次第に固くなる。
焔次は屈み込み、今度は口でそこを甘噛みした。
「っ、おい……そんなことしたら。汚れる……」
「いい。また買ってやるから……じっとしてろ」
焔次はそう言って掴んだ清隆の手を床に縫い付ける。そうしてまた乳首に歯を立てた。
「っ……でも」
焔次は夢中になってそこをしゃぶり始める。しばらくすると、そこに乳首がプクリと立ち上がってしまう。
清隆は真っ赤になる。
「清隆のここエロいな」
焔次は嬉しそうに言った。
「っお前のせいだろ……」
前はこんなところで感じたりしなかった。しかし、何度もされていくうちに、だんだん感じるようになってしまったのだ。
恥ずかしいのに、体をどんどん作り変えられてるみたいで嫌だ。
男でもこんなところが感じるなんて思わなかった。思わず清隆は焔次を睨む。
しかし、焔次には効いてないみたいで、余計に嬉しそうな表情になった。
しかもギラギラとしたその瞳には、欲望しか映ってない。
「清隆、本当最高。もっと感じて」
焔次はそう言って清隆の足を開かせ、その間に自分の体を入れ込んだ。
そうして、シャツを引き上げ露わになった清隆の肌に唇を落す。
「んん……ん、っ」
立ち上がったそこにも唇を落し、きつく吸う。
敏感になっていたそこは、少し触れられただけで体が反応する。
「清隆かわいい……」
「うるさい……っ」
清隆はそう言いながら周りに置いてあるクッションを掴み、意識を他に移そうとする。体の奥がうずうずして熱くなってきた。
男とのセックスに馴れた清隆の体は、簡単に快楽を拾うようになってしまった。
焔次はしつこいくらいにそこを攻め、反対の手で逆の胸も指でいじる。
そのたびに清隆の体は反応した。
何が楽しいのか、焔次はアイスを舐めるみたいに清隆の体に舌を這わせる。
「え、焔次。先にシャワー浴びたい……」
じわじわと与えられる快楽に、辛くなってきて清隆は苦し紛れに言った。
「はぁ?そんなの行かせるわけないだろ……いいから、じっとしてろ」
焔次はそう言って舌を這わせながら、下にどんどん体を下げる。そうして、ズボンのボタンを外す。そのままくつろげると清隆の雄を取り出した。
「っちょ、焔次?……」
しかも、何を思ったのか焔次は取り出したそれを躊躇なく咥えた。
「お、おい……やめっ」
裏筋にざらりと舌が這い、ジュっと強く吸われる。湿ったそこは、ぬるぬるしていて温かい。
ザラザラした舌が動いて、清隆の陰茎はみるみる血が集まっていく。
「ん……初めてしてみたけど。変な感じだな」
「っ、ちょっ……そこで喋るなよ、息がかかって……っ」
清隆は慌てて焔次を引きはなそうとするが手に力が入らない。
焔次はニヤリと笑う。
「これ、感じるんだ?じゃあ、これは?」
「!?っ……!や、やめ……っん、んん」
焔次は舌で亀頭をぐりぐりと刺激する。勃ち上がりはじめて敏感になっていたそこを、さらに刺激されて清隆は思わず声を出しそうになった。慌てて口を手で押さえる。
焔次にされて声を出すなんてなんだか嫌だ。
「固くなってきた。おもしれ……」
焔次にそう言ってまたさらに同じところをせめる。
清隆は何も出来ず、身もだえるしかできない。
まさか、こんなことになるとは思わなかった。三人でしている時は清隆は草太の方に意識がいっているし、焔次はいつも乱暴というか性急なのでこんな風にじっくり時間をかけて高められる事なんて無かった。
「いつもは、清隆が嫌がるから焦ってこんな事出来ないんだよな」
「っ……そ、それは。お前が脅したりするから……っあ」
「でも、そうしなきゃ、絶対させてくれないだろ?なあ、ここは気持ちいか?」
焔次はそう言って根本の方まで舌を這わす。
「っ……く!」
そうして、手で扱かれ舌を這わせられ、喉奥でまた吸われていまいあっという間に熱が高まる。
清隆はあまりの刺激に、そのまま焔次の口の中でイってしまった。
「んぐ……うぇ……変な味だ」
「っ……馬鹿じゃないか。何してんだよ……」
全て吐き出してしまって、ぐったりしながら清隆は呆れたように言う。焔次がこんなことまでするとは思わなかった。
「でも、清隆のだと思うと美味しく感じるな」
焔次はそう言うと、口に出されたものを手に出して、清隆の腹や胸に塗りつけた。
「っおい、何してんだよ。本当に、お前頭おかしいんじゃないか?」
焔次は清隆の言葉を気にも留めてないようで、塗ったものを舐めとるように胸に舌を這わせる。
「ん……やっぱり美味しい」
「っ……ちょ、さっき出したばっかりだから。ちょっと休憩……っん」
ざらりとした舌が固くなった乳首を刺激する。しかもぬめりが加わってさっきと違った刺激気が体を走った。
「やだよ。そんな勿体ないことするわけないだろ。清隆がもっと感じてぐちゃぐちゃに汚れたとこ見たい……」
「う、うるさい。早く終わらせてくれ……」
清隆は、顔を腕で覆ってそう言った。
「ああ?早く終わらせるわけないだろ。せっかくだからゆっくり楽しませろ」
焔次はニヤリと笑ってまたペロリと舐めた。
「っ……あーもう」
清隆は呆れたように言う。
「っていうか。これからが本番だから」
焔次はそう言って、清隆の脱げかかった服を全て脱がし、自分も手早く脱いでしまう。
そうして、清隆の腰にクッションを挟み、奥にある後孔に指を入れた。
指は清隆が出したものので濡れていて、お陰でするりと入ってしまう。
「っ……」
「最初に比べると、本当にここ柔らかくなったよな」
「うるさい……!」
「今日はじっくりほぐしてやるから」
焔次はそう言って指をゆるゆる動かし始める。じっくりすると言った言葉通り焔次は時間をかけてほぐしていく。わざとしているんじゃないかと思うくらい、そこから水音が響いて清隆は恥ずかしくて身の置き場が無くなる。
「最近はここだけでも感じるようになったよな。こことか感じるだろ?」
「っ……ん、あ、あんまそこばっか触るなよ……」
焔次は器用に指を動かし、清隆の敏感なところを執拗に攻める。
一度でも反応するとそこばかり弄るから、清隆の体はビクビクと反応してしまう。
いつも乱暴なのに、今日はゆっくりだからか、じわじわ感覚が高められて余計に感じやすくなっている気がする。
清隆の中を探る指は、いつの間にか三本になっていた。
「そろそろかな……」
しばらくして焔次は、そう言って指を引き抜く。
「っ……ふ……」
焔次の中心はもうすでに固く勃ち上がっていて、先走りをこぼしている。
体を起こし、清隆の足を開く。
「清隆、もっと足開いて」
「じ、自分でやるのかよ……」
「何でもいうこと聞くんだろ?」
「っクソ……」
清隆はしかたなく両手で自分の脚を抱える。焔次にほぐされたそこが晒される。
今までだって何度も見られているのに、自分の手で晒すという行為はいつもより恥ずかしく感じさせた。
でも、今日一日の我慢だ。これさえ終わればと清隆は自分に言い聞かせた。
「いい眺め。んじゃ、入れるぞ」
「ぅ……ん……」
固いものが中に入って来るのを感じで清隆は体を震わせる。
「やべ、中ヌルヌルでめちゃくちゃ気持ちいい……」
焔次は気持ち良さそうに息を吐く。堪えるように眉間に皺をよせながら、ゆっくりと腰を進める。
「んん……」
清隆は内臓が押される感覚がして、思わず呻く。いくらゆっくりでもやはり苦しい。
それでも、清隆の体は焔次の物をゆっくり飲み込む。固いそれは内壁の柔らかいところをゴリゴリと擦る。敏感な所に到達して、清隆は思わず眉を寄せた。
「その顔もエロい。すぐ動かしたいけど、このまましばらく眺めるのもいいかも……」
焔次はペロリと唇を舐めて言うと。屈み込んでそのままキスをする。
「苦……」
清隆のがまだ残っていたのか口の中が変な味がした。
焔次はそれを見てまた笑う。
「自分のだろ」
「そういう問題じゃない」
「……いいな、こういうの」
ふと焔次が穏やかな顔をしてそう言った。
「こういう?」
「こんな風に普通に会話すること」
その言葉に清隆は呆れた顔をする。
「そんなに普通だとは思えないけどな……」
男同士で、しかも恋人同士でもないのにセックスしているのに。絶対普通じゃない。
不満気に言うと、焔次はまた嬉しそうに笑った。
「じゃあ、普通じゃない事しようか……」
「っん……ああ!……」
焔次はそう言って大きく腰を引き一気に突き入れた。
「っく、中すげー締まる。腰止まんねー……」
「え、焔次っ……激し……もうちょっとゆっくり……」
急な動きに清隆はそう言って焔次を突っぱねようとする。しかし、その手はすぐに床に縫い付けられる。
「無理……こんなに気持ちいいのに……我慢なんて出来るわけないだろ……」
「っあ……あ……でも……っあ……」
清隆はガツガツと奥まで突かれて、言葉も上手く紡げない。苦しくて生理的な涙が出る。
ジワリとにじむ視界で見上げると焔次と目が合った。
「清隆……その顔はやばい……」
そう言った焔次の目ギラギラと欲が滾っていて、清隆は怖くなる。
顔を背けようとしたが、すぐに顎を掴まれ前を向かされ、かぶりつくようにキスをされた。
「う……んんっ」
その途端、中の位置が変わって清隆は声を出してしまう。
焔次はそれが分かったのか、わざと感じるところをゴリゴリ擦られて、清隆の思考はぐちゃぐちゃになってしまう。
グラグラと揺れる視界の中、清隆は床にペンが落ちているのに気がついた。
それは、草太が使っていたペンだった。この間、二人でセックスした時に落したのだろう。
清隆は草太の言った事を思い出す。あの時、草太は好きじゃなくてもセックスぐらい出来ると言っていた。
ガツガツと腰を打ち付けられながら、清隆はとてもじゃないがそうは思えなかった。こんなのやっぱり間違ってる。
次々と与えられる快楽に意識が奪われそうになりながら、清隆は考える。
いっそのことこんな関係から逃げてしまおうかとも思う。だけど、それは同時に草太と離れることだ。
「清隆、なに考えてる?」
「っ……え?」
「他のこと考えてただろ」
「っあ……ち、ちが……あ」
「今は俺の事だけ考えろ、命令だ」
そう言って焔次は清隆の脚を肩まで抱えガツガツ動く。
そうすることで、さらに奥を刺激され清隆の中は痙攣したように震えた。
「っ!あ!む、無茶言う……なよ……っあ……あん」
どんどん頭の中がぼんやりして、まともに考えることもできない。
身体中が熱い、焔次も熱いのか上からボタボタと汗が落ちてきた。
「清隆”……”って言って……」
焔次が真面目な顔をして屈みこみ、清隆の耳元で何か言った。
「?……な、なに?……っあ」
「”……”って言って」
「!っでも……」
その言葉に清隆は躊躇する。しかし、焔次はさらに促す。
「言え。これが最後の命令だから……」
頭がぼんやりしていた清隆は、最後と言う言葉に意識を奪われる。そうか、それならいいかと思った。
今日一日、命令を聞いてきて感覚が麻痺してきたのかもしれない。
早く終わってくれという一心で、清隆はその言葉を口にした。
「“好き”……だ。焔次、“好き”だよ」
「っ清隆……」
焔次は声を詰まらせながらぎゅっと抱きしめた。限界が近い。
その時、部屋の外でガタリと物音がした。
「?っな、何?っ……ああ!」
清隆は気が付いたが、焔次は気が付いていないようだ、夢中で腰を打ち付ける。
中の物が一段と大きく膨らむ。
焔次がギリギリまで引き抜くと、一気に最奥まで貫く。清隆の体の奥に熱いものが放たれた。
苦しいくらいの抽挿に、清隆も物音どころではなくなった。ガツガツ刺激され、清隆も溜まっていた熱を吐き出した。
目の奥がチカチカして、何も考えられない。足の先まで痺れたようになる。
「っく……清隆。清隆……俺の事だけ、俺の事だけ見ろ……今だけ、今だけでいいから……」
見上げると泣きそうな焔次と目が合った。ぼんやりした頭で清隆は頷く。
考えるのが面倒になってきた。
明日になったら、これも終わる。
そう思って清隆は焔次の体に腕を回した。
その後、焔次が満足するまでその行為は続いた。
清隆は声が枯れるほど声を出し、出す物がなくなって透明な物をこぼしながらイッて。
いつの間にか、気を失うように眠っていた。
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