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第11話

 翌日。  朝食を済ませたツアー客を乗せて、NYOKKIのミステリーツアー二日目が幕を開けた。  座席は昨日と同様の場所が適用される。  常盤は今日も細腰を強調するような制服に身を包み、笑顔で貝塚たちを出迎えてくれた。  ついでに彼の隣に居る風見も、昨日同様爽やかな顔をしていた。    常盤が昨夜貝塚の部屋を訪れたことは、誰にも言っていない。  当たりを引いた客がどんな『おもてなし』を受けたのかは、通例的に秘密にされているのだと常盤に聞いていたからだ。  どうやらバスガイドによって夜のおもてなしの内容は様々なようで、その違いを取り沙汰されないようにという会社側の配慮もあるようだが、ひとりだけ特別なサービスを受けた客に対してツアー客の間でやっかみや嫌がらせなどがないように、という側面もあるようだった。  だから客たちは金色の当たりの紙を受け取ったのが誰かを知らない。  それを探ろうとしている男も数人居たが、大半がツアーのマナーを守って粛々としていたので、貝塚も素知らぬ顔を決め込むことができた。  バスはこの日も、当然のようにカーテンが引かれていた。  風見や常盤に促される前に客たちが自主的に行ったのだ。なんという一致団結。    運転手は今日もマッチョな安井だ。  ムキムキの腕でハンドルを握る男との間にもカーテンが引かれ、運転席は見えなくなる。    エンジン音を響かせて走り出した車内で行われたことは、アンケートであった。  ガイドマイクを握った常盤が前に立ち、 「それではいまからお一人ずつアンケートを取らせていただきますね。順番に回りますので、お待ちください」  と左手に黒いバインダーを抱えて話した。  風見が彼からマイクを受け取り、補足の説明をする。 「常盤がお隣に参りますので、荷物を置かれている方はお手数ですがお隣を空けておいてください。常盤がアンケートを取り終えるまで、常盤を好きにしてくださってかまいません。ただし本番と、口を塞ぐ行為はNGとさせていただきます」  イケボでさらりと語られて、バスの客たちがざわめいた。  常盤がアンケートの文言を読んでいる間、彼の体を好きに触って良いと、風見はそう言ったのだった。   なんというサービス。  昨夜散々常盤の体を貪った貝塚ですら興奮するのだから、他の面々はなおさらだろう。  くるりと首を振り向けて後ろの乗客の様子を伺うと、皆、ぎらぎらとした目をして、準備運動とばかりに手をワキワキと動かしていた。 「では、前のお席から回らせていただきます」  常盤がそう言って、最初に貝塚の隣へと座った。   「昨日はありがとうございました」  はにかむような笑顔で、常盤が囁いた。  気の利いた返しもできずに貝塚は、ただ「はぁ」と頭を掻いた。    スレンダーな肢体にきっちりと喉元まで止まったボタン。  ストイックなようにも見えるこの青年に、昨夜三発も中出ししたのが夢のようだ。  常盤が右手でペンを持ち、バインダーに挟んだ用紙に目を落とした。 「それでは、アンケートを読みますので、五段階でお答えください」  彼が涼しげな声で、まずは選択肢の説明をしてくれる。  貝塚は両手を膝に置いたまま、ふつうにそれを聞いてしまい……常盤にチラと横目で見られてハッとした。  そうか、おもてなしはもう始まっているのか。  本当に触ってもいいのだろうか……と思いつつ、とりあえず左側に座っている常盤の太ももにてのひらを乗せた。  彼がぴくりと反応した。 「で、では、最初に車内のことから……。今回ご用意した座席はいかがでしたか?」 「最高でした」 「5、でよろしいですか?」 「はい」  会話の合間に、内ももを撫でた。  もぞり、と常盤が膝をすり合わせるように身じろいだ。    こ、これはなんだか……。  痴漢をしているような気分になってしまう。  昨日見たAVの内容を思い出し、貝塚のボルテージが一気に上がった。    シャツの上から乳首を探り当て、こり……と摘まんだ。  あ、と小さな声を常盤が漏らした。  体をひくんとさせながら、常盤がバインダーで貝塚の手を遮ろうと小さな抵抗を見せてくるものだから、なおさら痴漢行為を働いている気分になる。    二問、三問と質問が続く。  その常盤の声も徐々に上擦ってきていた。  それに合わせて貝塚の動きもどんどんと大胆になる。  片手を股間に、片手を胸に這わせながら、貝塚はアンケートのすべてに「最高でした」「5でお願いします」と答えていった。  貝塚のてのひらの下で、常盤のそこが勃起してゆくのがわかった。  昨夜少し手淫させてもらった、果物のような常盤の陰茎をもう一度見たくて、貝塚はスラックスのファスナーを下ろした。 「あ、だ、だめ……」  常盤が首を振り、貝塚の手を退けさせようとしてくる。  だが本気で拒んでいるわけではないことは、彼の蕩けた表情から伝わってきた。  貝塚がごそごそとそこに指を突っ込んで探っている間に、常盤が切れ切れに問うてきた。 「そ、それでは、最後の質問です。あっ、あんっ……ば、バスガイドの、お、おもてなしは、いかがでしたか……」 「最高でしたっ!」  食い気味に貝塚は叫んだ。  常盤がものすごく色っぽい顔で微笑して……。 「これでアンケートを終わります。ご協力ありがとうございました」  と、頭を下げた。     常盤の腕を誰かが掴んだ。  顔を上げると、イケメン添乗員の風見が爽やかな笑顔で貝塚に一礼し、常盤を立ち上がらせて通路を挟んだ反対側の席へと座らせた。    するりと逃げて行った体を名残惜しく目で追って……ふと貝塚は気づいた。    常盤は着衣を整えることなく、すぐに座席を移った。  ということは、後ろの座席に行くほどに彼はしどけない姿になってゆくのではないか……。  その貝塚の予測はビンゴだった。  アンケートを終えて次の席へと向かうたびに常盤は、顔を淫らに赤く火照らせていったし、衣類ははぎとられていった。  貝塚は我慢できずに立ち上がり、常盤の動きを追った。  そうしている乗客は貝塚だけではなく、常盤が去った座席の客は次の席の周りへと集まってゆく。  客が立ち上がっても風見からの注意は飛ばなかった。  常盤は、ツアー客たちの視線を浴びながら、体を弄られ続けた。  今日は陰茎にハーネスは巻かれておらず、常盤は途中、幾度か精液を漏らした。  アンケートを読み上げている最中に体を痙攣させ、 「あっ、だめっ、イくっ、イっちゃうっ」  と嬌声を上げながら達する彼は淫靡で、めちゃくちゃシコかった。  実際、貝塚たち見物人はシコった。  ニョッキ自慢の薄薄コンドームは今日も使い放題であった。  最後の客の隣に座ったとき、常盤はもうトロトロで、風見に支えられていないと姿勢を保てないほどになっていた。    最後列の客はラッキーだった。  常盤がまともにアンケートを読み上げることができないので、そのぶん彼を弄れる時間が長かったからだ。  常盤はほとんど全裸に近い格好で、これまでの客に触られまくっていた乳首は赤くしこっており、指で散らされていた後孔の襞も同じ色に染まっている。  客はもうほぐれているそこに指を三本捻じ込んでぐちゅぐちゅと常盤の中を掻き回しながら、胸の粒をべろべろと舐めて常盤を攻め立てた。  常盤の陰茎はもう勃起していない。  ふにゃふにゃのままのそこから、けれどとろりとろりと淫液が垂れているのが卑猥だった。 「ああっ、あっ、あっ、だ、だめっ、だめっ」  常盤が首を振って逃れようとするのを、風見が邪魔する。 「ほら、早くアンケートを」  添乗員にせかされて、常盤がなんとか設問を口にした。  客は乳首を舌でペロペロとしながら「5です」と不明瞭な声で答えた。  そうしながらも指の動きは止まらない。  じゅぼっ、じゅぼっ、と音を立てながら前立腺を刺激されて、常盤の背がしなった。  貝塚は『REI』のモデルになったという常盤の孔の感触を思い出しながら、ジュニアをこすった。  客の手マンを見ながら、貝塚はそこだ、と思った。  いま彼が攻めている場所。そこが常盤の弱点だ。  怒張でごりごりとこすりあげたら、いまのように背中を弓なりに反らせて……。 「あっ、あっ、ああああっ」  常盤が絶頂に達した。  射精を伴わないメスイキだ。  ビクンっ、ビクンっ、と女のように達したバスガイドの姿に煽られて、貝塚たち乗客もドピュっと白濁を放った。  息を荒げて話すことのできない常盤の代わりに、風見がキラキラとした笑顔で客に最後の質問をした。 「バスガイドのおもてなしはいかがでしたか?」 「星五つですっ!」    その即答は、ツアー客全員の思いを代弁していた。  

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