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第2話
「じゃあ、挨拶してもらうか。とりあえず名前だけでいいから。」
大丈夫か?と聞かれて我にかえる。
慌てて返事をして名前を言う。
「え....と、堀川 一樹です!
3年間よろしくお願いします!」
そう言って軽く頭を下げるとたくさんの拍手の音が聞こえてくる。
あぁ、良かったとりあえず大丈夫そうだと安心していると席の指定をされた。
「じゃあ、堀川は........。」
そこで不自然に担任の言葉が詰まる。
どうしたんだ?と横を見ると「あ、いや。」と言葉を濁す。
「堀川の席は晴翔の後ろにするか。
晴翔!呼んでやってくれ。」
「は〜い。」
「ここだよ〜。」と呼ばれそっちに行くと明るい茶髪の男子に後ろの席を緩く叩かれた。
「ありがとう。」
「いえいえ〜、俺、工藤 晴翔(くどうはると)っていうのこれからよろしく。」
緩い喋り方が癖なのか緩くにこにこと話しかけられる。
いい人そうで安心した。
「おい、晴翔!
自己紹介は後にしろ。」
担任に注意されても「りおちゃん怒んないで〜。」とにこにこしているのを見て周りが笑う。
「ハルまた怒られてんじゃん!」
「理央ちゃん先生こいつ反省してないよ!」
周りが囃し立てると先生も「よし。」と一つ呟いた後。
「晴翔ぉ、お前には日本史の課題出しといてやる。」
「ええ!?そんなぁ!」
ガタリと椅子の音を立てて立ち上がる工藤を見て周りがさらに笑う。
俺もそれを見て笑ってしまい「本当に仲がいいんだな。」と周りを見ると唯一笑っていない人がいた。
それも、俺の隣の男子が。
中性的な綺麗な顔立ちをしていて一瞬男子か女子かわからなかった。
少し癖っ毛のある明るい茶髪に琥珀色の瞳。
茶髪と言っても多分地毛だろう。
ゆらゆら揺れる瞳で静かにどこかを見ている。
そしてふと、疑問に思ったことがあった。
(普通席を教える時って隣の人間に頼まないか?)
ただあの先生が特殊なのか、それとも...。
「おい堀川、お前も転校初日から課題出されたいのか?」
「え!?」
「あっはは!一緒にやる〜?」
話を全く聞いていなかったせいで俺にも白羽の矢が立つ。
謝ってなんとか課題は無しにしてもらう頃には、隣の席の男子のことは頭から抜け落ちていた。
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