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極道とウサギの甘いその後1−3
意志薄弱と言うなかれ。断る理由が自分にとっても竜次郎よりずっと優先順位の低いものなのだから仕方あるまい。
竜次郎も元気だが、自分も自分で想像していたよりは、元気だ。
いつも「元気だね」と言うと、「健全な若い男ならこんなもんだろ」と返ってくるので、まあきっとそういうことなんだろう。
好きな人と裸でくっついていて、何も感じないほうがどうかしている。
頭の中でいっぱい思い浮かべた言い訳は、竜次郎の指がそこの柔らかさを確かめるように後ろを刺激してきたことで霧散した。
「あっ……あ、いや、そんなに、拡げちゃ……っ」
「まだやわらけえな。このまま、入れられるか?」
「……う……ん……」
頷いたものの力が抜けてしまっていて、緩慢に体を起こした。
竜次郎のものに手を添え、既に欲しがって収縮を繰り返す場所へとあてがう。
「っあ……っ」
太い部分は何とか呑み込めたものの、足が震えてうまく腰を落とせない。
涙目になっているのを見かねたのかそれともじれったくなったのか、腰を掴んだ手に支えられてようやくすべてを収めることができた。
竜次郎の腹に手をついて息を整えていると、下から軽く突き上げられて、あっと声が上がる。
「お前が腰振るところ、見せろよ」
「っう…ん、……こう?」
「ん……いい眺めだな」
「ごめ……あんまり、上手に、できな、っあ!」
「これだとお前のいいところにあたってないだろ?」
気持ちよくなってしまうと動けなくなりそうなのでなるべく避けていた場所を突かれて、のけぞった。
「やっ、あ!ちが、だめ、そこ、したら……っできな、っア!」
掴み持ち上げた腰を落とされるタイミングでぐっと突き上げられて、ごつんと最奥を抉られる衝撃に頭が真っ白になった。
一瞬飛んだ意識が戻ると、腹筋の上に飛び散る白濁が目に入り、申し訳ない気持ちになる。
「は……っ、…あ、りゅ…じろ、俺だけ…ごめ、」
「やっぱお前は最高だな」
「あっ、」
再び体制を入れ替えられる。
覆いかぶさり、にやりと笑う竜次郎に首筋に噛みつかれると、ゾクリと腰に響いた。
今度は膝裏を肩につきそうなくらい折り曲げられて真上から挿入される。
「あ、んっ……、や、ァッ、あっ、あっ」
押し潰されながら突き入れられる体位は、求められている感が強くて湊も好きだ。
もっと奥まで欲しいと強請るように、自然に竜次郎の腰に脚を絡めて引きよせてしまう。
「っ……んなにしがみつくと、動けねえだろ」
からかうような声音に応える余裕は既になかった。
もっと密着していたい気持ちと、快楽を求める本能が混ざり合い、惑乱して助けを求めるように縋り付く。
苦しくて、でも気持ちがいい。
硬いもので感じるところ全てを余すところなく擦られて、何がなんだか分からなくなった。
「りゅう、じろっ……あっ、ん、や、もう、…っ」
「一回だからな。……っ堪能しねえと」
「いや、あ…っ」
これ以上されたらどうなってしまうか分からなくて、泣きが入る。
「や……、も、だめ、中、出して……っ」
涙目で訴えると、質量が増して息を呑んだ。
「っ……」
「あ……………ッ」
痙攣と共に内部が熱いもので濡らされて、湊もまたその体感で極めた。
「くっそ……あっさり持ってかれた……」
悔しげなぼやきが聞こえて、湊は息を乱したまま苦笑し、そっと腹を撫でる。
「っ………はぁ………竜次郎…いっぱい、でたね…」
「っ………」
途端に内部が押し広げられて、驚きに目を見張った。
「え、な、なん…で?」
「今のはお前が悪い」
「ええ?そ、そんな……お、俺もう無理……っ」
「………ま、そうだな」
質量を持ち始めていたものをずるりと引き抜かれ、う、と息を詰めた。
ほっとするような、やはり少し寂しいような気持ちを見抜かれてしまったのだろうか。
約束だから今は勘弁してやるが、今夜覚えてろよ。
そんな竜次郎の脅迫めいた睦言に、戦慄なのか期待なのか判別つき難いものが背筋を震わせた。
「やっぱり今日は、行くのやめねえか」
「でも、当日欠勤はよくないよ」
二人してお昼に起き出してから、何度目かのやり取り。
竜次郎が仕事に行くのをこんなに執拗に止めるのは珍しく、困って眉を下げた。
朝から大層励んでしまったのでだるいが、別に仕事ができないほど体調が悪いわけではないのに、そう主張しても「とにかく今日は色々お前の身が危ないかもしれないから行くな」の一点張りだ。
「じゃああれだ、俺が行って6時間分お前をキープしとく!」
「竜次郎、『SILENT BLUE』の会員証持ってるの?」
「……………………なんとかなるだろ」
湊の大切な人だと主張したところで、到底、店長や副店長が許すとは思えなかった。
ちなみに、営業時間中ずっと店にいると席料だけでも相当な金額になる。
それを(店で接客をしてほしいということならともかく)こんなことで負担させたくもないし、竜次郎のことを誤解している望月と一悶着ありそうな気もして、営業日である今日このタイミングで竜次郎を連れて行くのは気が進まない。
しばし考え込んだが、今日のことは自分の意志力の弱さも原因であるし、折れることにした。
「休みの日と……振り替えてもらえないか電話してみる……」
「なんなら保護者として俺がナシつけてやっても」
「だ、大丈夫!自分で電話できるよ!」
竜次郎が電話をしたら『電話できないくらい具合悪くしたってお前なにした』と竜次郎のことを誤解している望月と(以下省略)。
肩を落とし、社会人としてもっと自制をしなくては、と己を戒めた湊だった。
極道とウサギの甘いその後1 終
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