40 / 56

極道とウサギの甘いその後4-15

 快楽の余韻に震える体を、竜次郎が抱き締めてくれる。 「ぁ……んゃ……」  気持ちがよくて、甘えて身体を擦りつけるように腰を揺らすと、結合の隙間からこぽっと注ぎ込まれた白濁が零れ落ちた。  どろりとしたものが逆流していく感覚に、ふるりと身を震わせる。 「……怖く、なかったか?」 「うん……きもちよかった」  優しくしてくれてありがとう、とキスをすると竜次郎は少し驚いた顔をしてから破顔して、深く唇を重ねてきた。 「ん……、ぁ……、そういえば、今日は南野さんといなくて大丈夫なの?」  今更とはいえ、竜次郎を独り占めしていて大丈夫なのだろうか。  甘いキスの合間に心配になって聞くと、竜次郎は何故かとても嫌そうな顔をした。 「……今、それ聞くのか?」 「う…ん、急に思い出したから。駄目だった?」 「いい気分でイチャついてる時に、他の野郎の話なんかすんなよ」 「えっ……、一つもそういう認識ではなかったけど……」 「生物学的に男だったらアウトだろ」  互いの好意の有無とは関係ないらしい。  竜次郎が湊の知り合い全員に『男か?』と訊ねる理由がわかった気がする。 「そうなんだ……気を付けるね」  今までの人生で竜次郎以外の人に特別な気持ちを向けたことはないが、何をどう感じるかは人によって違う。  嫌な気持ちにさせてしまうのはよくないと真剣に頷いたのに、竜次郎はなんだか気の抜けた表情で項垂れた。 「お前は……素だからなあ、それが」 「え……何か俺変なこと言った?」 「いや。叔父貴は今日は親父と飲むっつってたから放っときゃいいだろ」 「そっか……竜次郎は二日酔い平気だった?」 「朝起きて、お前がいなくてぶっとんだ」  冗談めかしながらも切なげに細められた目を見て、湊はまた同じ過ちをしてしまったのだと悟った。 「……ごめん」  自分はどうしてこう、進歩がないのだろう。  何も言わずに出ていかれた竜次郎がどう思うか、全く想像できていなかった。  せめてメッセージの一つも入れておけばよかったのに。 「俺が悪い。気にすんな」  竜次郎は何も悪くない。  ぎゅっと縋り付きながら、これから先はもう繰り返さないと、湊は強く誓った。  翌早朝。  よく眠っている竜次郎を起こさないようにこっそり寝床を抜け出した湊は、広い屋敷内をある人物を探して歩いていた。  立場もあり多忙な人なので敷地内にいない可能性もあったが、幸いすぐに台所で見つかった。 「おはようございます」 「おはようございます。……なにかありましたか?」  挨拶に振り返った、ワイシャツにネイビーのエプロンを着けて広い台所に立つ日守は、いつも通り物静かで冷静そのものだが、昨日の今日だからか、訊ねる声音には心配そうな響きがある。  安心させるように微笑んで首を横に振り、湊は日守に会いに来た理由を話し始めた。 「あの、実は日守さんにお願いがあって……」   足音を忍ばせて寝室に戻ると、ようやく湊の不在に気付いたらしい竜次郎が半眼でこちらを見た。 「……湊……?どこいってたんだよ……」 「喉乾いたからお水飲んできただけ。もう少し寝よ」  眠そうな声音を少しかわいいと思いながら、布団に潜り込むなりしがみついてきた頭をよしよしと撫でる。  いつも甘やかしてもらうばかりで、甘やかすことはあまりない。  こんな風に縋り付かれるのもなんだか嬉しいなとくすぐったい気持ちでいたのだが、太腿あたりに何か硬いものを擦りつけられて、湊はあれ?と首を傾げた。 「……竜次郎?これは男性特有の朝の生理現象……だよね?」 「いや、たった今お前で勃った」 「うーん……元気ハツラツ」  そうきっぱりと言い切られてしまうと、苦笑を返すしかない。  少し頭を撫でただけで反応してしまうとは……日常生活に支障をきたしているような気がする。 「お前が嫌なら、生理現象にしといていいぞ」  委ねられて、湊はこの後のことを考える。  日守に頼んだ件は、夕方以降の話だ。  まだ、普段朝食を摂る時間にも早い。 「今日はシフト入ってないから……俺も竜次郎と朝からイチャイチャしたいかも」  密着した体が強張り、竜次郎が視線をこちらに向ける。  「いいのか」というすっかり覚醒した瞳に頷きを返した。  起きるのは、もう少し後になりそうだ。

ともだちにシェアしよう!