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第2話

「ようやく気づいたか」「気を失うとは情けない」  次に目を開けると、そこには広い空間があった。高い天井、太い柱、床も壁も艶々で白く輝いていた。変わらず、両脇を2人に抱えられたままだ。僕より背が低いのに、重たくないんだろうか。自分の足で立って歩こうとするも、「じっとしていろ」「黙って従え」と怒られた。  連れてこられたのは、水がたくさん張られた場所だった。「こいつを頼む」「きれいにしてあげて」。2人の声に、背中に翼を持った女性達が駆け寄ってきた。 「あなた、すごく汚いわ」 「髪の毛もぼぼさぼさね。切ってあげる!」 「どんなお洋服がいいかしら」  女性達に囲まれ、まずはと水の中に放り投げられた。意外にも水は冷たくなく、生ぬるさが心地よい。段々と瞼が重くなってくる。 「寝ちゃうの? それもいいわね」 「目を開けたらピカピカキラキラ、素敵ね!」  寒くなってきた。お姉さん達は、平気なんだろうか。薄い布を1枚纏っているだけのように見える。立派な翼が、笑い声とともに、水を弾き、楽しそうだ。よかった。その様子では、寒くはないのだろう。 「瞳の色は灰色、髪は銀色、ナギ様とお揃いね」 「ナギ様より、少し背が高いかしら」 「でも、痩せっぽっちの傷だらけね」  僕はまた、意識を失った。  *** 「兄さんが死んだら、絶対に許さないからな! 子どもなんか知らない! ここから飛び降りてやる! 死んでやる!」 物騒な声に目を覚ます。僕は寝台の上にいた。今度は、燃えるように身体が熱い。全身が重たく、指先さえも動かすのが億劫だ。 「兄さん!」  ナギがいた。寝台の傍で膝をついている。誰かと言い争っていた。相手は、背が高くて、顔が見えない。 「寝てて良いからね、兄さん。ごめんね、ごめんね。僕が、兄さんを連れてきってって頼んだばっかりに」 「頼んだというか脅迫だったのでは」「連れてこないと死んでやると騒いだ結果なのでは」  ナギの左右には、あの2人が立っていた。白い頬を膨らませている。 「リルリラ、うるさい! お前らが、体調悪かった兄さんに無理させたんじゃないか!」 「記憶にないです」「なんのことですかしら」 「来るまでに冷たい風を散々浴びせた! それだけでなく、水風呂につっこんだ! 熱があるのも気づかず、王宮内を引きずり回しただろ! バカッ、バカ!」  そうか、僕は今、熱があるのか。まあ、寝ていれば、大丈夫だろう。ここはすごく暖かいから。  「ナギまで体調悪くしたら大変だから、部屋から出て」、口を動かし、伝える。   「絶対に嫌だ!」 「ナギ、私は約束を守ったぞ! お前も約束を守れ! 私と交わるのだ!」 「死ね! 大嫌い、死ね! 入ってくるな! ここに入ってきたら、死んでやる!」 「ナギ様、なんてことを!」「ヴィラ様に失礼です!」 「うるさい!」  たくさんの声が頭の中をこだまする。ぐわんぐわん、視界が揺れる。頭が痛い。  ナギが、元気そうでよかった。

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