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第3話(フェス視点)

 弟の番が産れたとわかったときから、城内はお祭り騒ぎだった。それはそうだ。竜王の息子の番の誕生だ。喜ばしくないわけがない。何百年と待ち望まれていたことだ。現竜王――俺の父だが、父はもうかなりの高齢で隠居したがっていた。しかし、番を得るまではと、どうにか頑張っていた。「これで、妻と旅行三昧だ」と涙ながらにそう俺に語った。  そう、誰も俺に配慮してはくれなかった。  弟より先に産れること50年。俺は、父以上に弟以上に、自分の番となる人間の誕生を心待ちにしていた。それを、単細胞に先を越されるとは思ってもいなかった。  神様、ああ神様、不公平ではないでしょうか。あんな毎日楽しくて仕方がないみたいな、悩みも憂いもない弟に先に妻を与えるだなんて。  俺は家出した。国を出た。16年ほど、各国を彷徨ってみた。そして、特に得られるものもなく、帰宅した。  そこにいたのは、小柄な人間にべったり寄り添う弟だった。ちくしょう、うらやましい。  そして、 「なんだ、この香りは」  香りに誘われ、ふらふらと城内を彷徨う。香りはとある部屋から漂っていた。頭がぐらぐらする。股間が熱く、痛くなってきた。  扉を開ける。  寝台に、見知らぬ人間が横たわっていた。弟の妻と姿は似ていた。ふわふわな髪の毛が、呼吸の度に小さく揺れている。  これ、  え、これ、  これ、俺の番じゃない?

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