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第1話 夢と現実
「・・おき・・ゆ・・う・・・」
・・・あいつとは違う誰かの声がする。
「・・・ゆ・う・・」
よく聞く、聞き慣れた声。
...ん?この声は...
「優‼」
名前を耳元で叫ばれ、僕は重く閉ざされた瞼を開く。
「お!やっと起きたか。優!遅刻するぞ?」
目を開くと、見慣れた空間が広がっており、明がすぐ隣り立っている。
「って、優。おまっ!涙流しておっ立ててるって、どんな夢見てんだよ‼
エロい夢でも見てたのか?ったく、朝から元気だな。俺もう出るからな?
それどうにかしたらお前も仕度しろよ?」
彼は、僕の下半身部分を指さすと、おちゃらけた表情をし、軽く手を振り部屋を後にした。
窓の外で、蝉の鳴き声がこだまする。
上から降り注がれる、クーラーの風が心地良い。
僕は、もう一度目を閉じると、そのまま布団に倒れこんだ。
さっき、目覚める前に何か言ってたあいつ。
あの声の主は誰だったのだろうか・・・
あれ?てか、どんな夢だったっけ?
どこか、悲しいような、安心するような・・・
不思議な夢を見たはず・・・
あれ?
ここ最近同じ夢を見ているはずなのに内容を全く思い出せない...
思い出したいのに・・・
そんなことを考えていると、段々と意識が遠のいて行く。
完全に遠のくギリギリ。
うっすらとした意識の中、聞きなれた音が響き渡る。
その音が、授業開始を意味する予鈴であることに気が付くまでに時間はかからなかった。
慌てて、枕元にあるスマホを掴み取り、
画面をのぞき込むと、時刻は、9時を示していた。
「やっっば!!!!」
やっと、
身体に、意識が追いつき、我に返る。
すると、同時に下半身にヌルッとした何かと違和感を感じた。
明が言い残していった、言葉を思い出し
指を指さした下半身に恐る恐る目を向ける…
「まっ、マジかよ・・・。」
日差しがぎらぎらと照り付ける7月の真っただ中。
僕の1日は、白い液体を出してもいまだに元気な僕の下半身と遅刻から幕を開けた。
―7月17日。夏休みまで、あと2日―
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