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第2話 走り出した未来。
静寂に包まれた空間に時計の針の音が静かに鳴る。
隣の席は今だ空席のまま。
《優、大丈夫かよ...。あいつ二度寝でもしてんのかな。》
校内に終礼が鳴り響く。
少し前の静けさがまるで嘘かのように、賑やかな声が響き渡る。
昼ご飯を買いに売店に走る生徒。
友の席に固まりだす生徒達の声。
そんな声はお構いなしに、俺は隣の席に居ない人物が気になって仕方なかった。
朝確かに、それどうにかしろよ?っとは言ったものの流石に遅すぎる。
なんか、巻き込まれたりしてないよな...。
「なぁ、明。飯どうする?おい!明‼聞いてんのか⁉」
我に返ると、周りを友に囲まれていた。
「んっ?あぁ、悪い。考え事してた。」
友の声に反応するも、隣の席が気になって仕方ない。
「俺、1回寮帰るわ...」
「はぁ?マジかよ。飯は?」
俺の言葉に答えるように、返事の言葉が飛び交う。
「悪いな。」
少し気まずく微笑むと、そう言い残し出口に向かう。
っと同時に、手をかけたドアが開かれた。
「うぁっ!優‼ビックリした‼」
「あ!明、おはよう!朝は起こしてくれてありがとな?」
そこには、
さっきまで気になっていた、迎えに行こうとしていた張本人が立っていた。
彼の顔を見てどこか胸をなでおろす。
「いや別に気にすんな!あ!てか、お前!いくら何でも遅すぎだろ‼」
さっきまでの心配を思い出し、彼を問い詰めようとすると、
「まあまあ、明。落ち着け。優がかわいそうだろ?」
優の背後から見慣れた顔が現れる。
「うぁ。お前もいるのかよ。」
「おまえ...先生に向かって、うぁってなんだよ。優!明が俺にひどい!」
「明、お前さすがに慎二先生可哀そうだろ?」
優の言葉に慎二の口角が上がる。
「お前はホント優しいな。さすが癒し‼明も優を見習え‼」
そう言いながら、優の肩を抱き寄せる慎二の顔を睨み、優の肩から手を払う。
「優。そいつなんか捨てて飯行こうぜ‼」
俺は優に笑いかけると彼の手を引き、廊下を走り出す。
後ろから、慎二や友の呼び止めるの声が聞こえてくる。
優と青春だな!と笑い言いながら走りぬく。
高校1年の夏。沢山の友と親友そして、好きな奴に囲まれ俺は毎日が楽しかった。
―「ねぇ!聞いた?慎二先生って結婚を前提に付き合ってる人いて、結婚するらしいよ!」―
―「えぇ!嘘⁉私、慎セン結構好きだったのに‼」―
クラスの女子達の会話が聞こえてくる。
―「なんでも出来て、しかも!かなり、可愛いらしいよ?」―
教室内はその噂で盛り上がる。
結構そうゆう話みんな好きだよな。っと優に声をかけ彼の方を向くと、
優の顔は青ざめていた。
「おい!優どうした⁉体調でも悪いのか⁉」
彼の肩を掴み問いかけると、優は正気に戻り、目を赤くし震えていた。
「・・・あぁ、ごめ・ん・・。おれ、ほ・保健室!!‼」
そう言い残し、彼は立ち上がり走って教室を出て行った。
俺は、走り去る優の手を掴もうとしたが。
俺の手が優の手に触れることはできなかった。
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