5 / 9

第2.5話 俺らの始まりの一歩。

「夏かぁ。」 太陽が照り付ける7月の真っただ中。 雑音のように五月蠅い蝉。 授業に励む、学生の声。 着々と近づいて来る夏休みに夢見る青年達。 どの音も騒がしい。 だが、どこか懐かしく感じてくる。 屋上、塔屋の上。 誰からも気づかれないこの場所。 ここが、俺の秘密の場所。 この学校の屋上は、生徒の立ち入りが禁止されている。 教員が管理する屋上のカギは全部で2つ。 っと言っても、そのうち1つは前から紛失しており、 残された鍵は歪んで、屋上を開けるには時間がかかるそうだ。 その為、生徒はおろか教員さえ寄り付くことはめったに無い。 まぁ、他にも入る方法はあるんだけど・・・。 寝ころびながら、どこまでも続く空を見上げる。 授業終了の終礼が鳴り響く。 「明日、修行式か。」 最近。1人の生徒がここにやって来る。 1か月前、ここの鍵を拾い。それ以来、よく来るようになった。 来るたび、何かに悩んでる様子で20分程1人で悩んでは 何事もなかったかのように、出ていき友人と帰宅していく。 だが、ある日を境に、その生徒のここに来る時の顔が変わった。 生徒は顔を赤らめながら来ることが多くなった。 その変化と意味を理解するのに時間はかからなかった。 生徒は恋に落ちたのだろう。 ある日、生徒は来るなりへたれこむと、 もう素手に大きくなりかけた、下半身の部分を自らの手で擦り、 生徒は自慰行動を始める。 ぐちゅぐちゅと言う音と軽い喘ぎ声が響く。 次第に喘ぎ声の合間に言葉が混じる。 「・・は・・せっ・っ・んっ・・ぁ・・せぃっ・・・あっぁ・・・ん“・・・っ」 「はぁ・・はぁ・・慎二せんせぇ・・・」 生徒は教師に恋をしていた。 恋をしてからの生徒はどこか今までよりも楽しそうで、表情もころころ変わり何より可愛かった。 そんな生徒を見てるのが、ここ最近の楽しみになっていた。 それも、明日でしばらくお預けか。と思うとどこか寂しい。 「今日は、来るかな...。」 そう呟くと、下の方から勢いよく階段を登る音がした。 きっと、音の主は彼だろう。 俺のテンションはあからさまに上がった。 ≪今日も、優に会える。≫ 自分の口角が上がったことに気づく、今日はどんな可愛い顔が見えるんだろう。 今からワクワクが止まらない。 ―俺には3か月前から気になる子がいるー そして、足音が止まり勢い良く開かれたドアから飛び出してきた彼の顔は、 俺が期待していた、 いつもの表情ではなく、大粒の涙が流れ目は真っ赤に充血していた。 彼は、入って来るなり、うずくまり声を出して泣き出した。 俺は、無意識のうちに、塔屋から降りうずくまって頭を抱えだした彼に駆け寄り 彼の前に立った。 「ねぇ、君。ここで何やってんの?」 自分でも驚くほど俺が彼に声をかけるまでに時間はかからなかった。 彼にはこんな顔は似合わない ―彼の名は、優。―

ともだちにシェアしよう!