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第6話

今夜は大雪で荒れた天気らしい。そんなテレビの情報が俺の耳と意識へ入り込んでくる。 「……あれ、いつの間にか俺……また寝ちゃってたんだ」 不貞腐れていた俺は、いつの間にかベッドの上で布団を掛けずに眠ってしまっていた様だった。 慌てて自身のスマートフォンで時刻を確認しようとするが、電源を落とした真っ暗な画面に先程の母とのやり取りを思い出す。 「――そうだった。今夜からはもう、風雅と逢わないんだった」 独り言た俺は、時刻を確認する変わりにテレビのリモコンで次から次へとチャンネルを変えていく。 年末恒例の歌合戦は丁度前半が終わった様子。ニュースが始まっていたことで、現在の時刻が夜の九時であることを知った。 風雅は、無事に帰宅できたのだろうか。 断ち切ったはずである風雅のことを想い出した自身に自嘲する。 毎年この時間は、風雅の家でおばさんの作った年越し蕎麦を「少し早いけど」って言いながら年末のテレビ番組を見ながら二人で啜っていたっけ。 年を越したらアイツの狭いベッドで二人寄り添いながら仮眠を取って、日の出の少し前に起きて極寒の中、身体を寄せ合ってベランダから初日の出を眺める。 何てこと無い、毎年繰り返される二人だけの年越しを無意識に思い出していた俺は、女々しい自分に苦笑した。 今すぐこのカーテンを開け、外へ出て風雅の部屋の灯りを確認したら無事に帰宅しているかどうか分かるだろう。 だがもう今夜は風雅と逢わないと決めた身だ。 知る必要は無いのである。 テレビのチャンネルを変えながら、毎年面白いと思って風雅と一緒に見ていたバラエティ番組が今年は全く面白くないことに気が付く。 否、独りで見ているからであろうか。 虚しい。 虚しい。 虚しい……逢いたい。 何一つ気持ちが昇華されていない俺は、無意識の内にカーテンを開けガラス戸を開けていた。 全身を突き刺さす凍てつくような風が、俺を通り過ぎていく。 引き続き、テレビでは美人の女子アナウンサーが荒天の予報を容赦無く告げていた。 明日は、初日の出が見られないのだろうか。 仄暗いグレーにうっすら赤黒い膜を薄く張った様に見える怪しい空。 直に雪が降るだろう。 今の俺の心模様と一緒だな。 電源を落としたままの意味を成さないスマートフォンを握り締めながら、結局俺はスエットの薄着のままベランダへと出ていたのだった。

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