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第6話 躾られる少年(一)
ガネルクは表情の無い男だった。テオドールの不在の折に、下履きの鍵を管理しているので、どうしても生理的現象を訴えねばならないのは、この上なく屈辱であり、恐怖だった。
極めて機械的に全てのプロセスを行うその手はいつも氷のように冷たかった。
―見ろ。―
耐えきれずに鏡から目をそらすガルシアを叱咤する声にも全く抑揚はなく金属音そのもののようで、彼に叱られる度に心まで凍てつくようだった。
それはワルダも同じだった。ガネルクに比べていくらかは若い、いわゆる小姓くらいの年頃だったが、彼に入浴の世話をされるたびにガルシアは身を縮ませた。
白く長い指で丁寧に細やかに全身を洗い上げてはくれるのだが、その冷んやりとした肌の感触と滑るような陰気な声音は蛇を思わせた。
ガネルクに下履きを外され、やっと自由になったガルシアの下半身を執拗に隅々まで洗い上げる彼の口許にはぞっとするような薄笑いが浮かび、彼の手管により半ばまで勃ち上げさせられたそれを嘲るように眺められる度に恥ずかしさで息が止まりそうになった。
その癖、何も揶揄するでもなく、
「終わり」
と一言発するだけなのだ。
そして、そのまま浴室に併設されたパウダールームで、丹念に蜂蜜入りの薬剤で体毛を除去され、香油で全身のマッサージを受けるのだが、巧みな指使いは本来ならば心地よいはずなのに、その指先に触れられると蛇に全身を這い回られる心地がして、全身が総毛立った。
その様すらも愉しげに、喉元で低く笑いながら身体の敏感な部分を刺激していく指先にガルシアが感じまいとするのを、なおいたぶるように刺激を加え、必死に声を抑える愛らしげな面を侮蔑の表情で見下ろすのだ。
夕刻、入浴が済む度にぐったりと力尽き、しばしベッドに倒れ伏すガルシアの元に運ばれてくる夕食は、確かに美味ではあったが、なんらかの薬剤が混入されているのは確かだった。
食事のあとになると決まって体が異様に火照り、意識が朦朧としてくるのだ。
それでも、―食欲が無い―と拒むことは許されず、抵抗すれば、柱に拘束され、陰部に鞭を打たれた。衣服の上からとは言え耐え難い苦痛に結局のところ涙ながらに完食することになり、訪れてきたテオドールに自ら身を投げ出して、慰撫を乞う羽目になるのだった。
「なんてふしだらな姫君なんだ......」
テオドールは涙ながらに取りすがるガルシアの衣服をゆっくりと引き剥ぎ、堪えきれず屹立し、蜜を滴らせるそこを弾くようにいたぶり、扱きあげ、䑛るのだ。
「あっ........あぁ...テオさま。テオ兄さま.....」
切なげに身を捩り、甘い吐息と喘ぎを漏らすガルシアを詰るようにテオドールは、達する直前で手を止め、ガルシアの耳許で囁くのだ。
「悪い子だ......。そんなにお仕置きをして欲しいのかね。......こんな忌まわしいものを振り立てて、君の悪い精を全て抜き取らねばいけないね」
テオドールの淫靡で残酷な誘いに、ガルシアはただただ身を任せ、悶え啜り泣きながら、精液が枯れ果てるまで、テオドールの手淫と口淫を受けるのだった。
テオドールは、ガルシアをひとしきりいたぶり尽くすと、長椅子に身をあずけた。
ガルシアに、自身の白濁に汚れた指をキレイに舐めさせ、清めさせるためだ。
そしてガルシアの身体の汚れをワルダに拭わせた後で、疲労困憊したガルシアの頭を抱え、自身の凶器の如く勢り立ったそれを愛くるしい唇に含ませ、隅々まで丹念に奉仕させた。
「ん......んむ。.....うん......」
必死で、テオドールが指図するままに、雄茎に舌を這わせ、反り上がった赤黒い不気味な威容を誇るそれを小さな口いっぱいに含んで吸い上げるガルシアの目には常に涙が滲んでいた。
生理的な苦しさと惨めさ哀しさのない交ぜになった、透明な滴をぽろぽろと流しながら、テオドールの雄が熱く滾った精液を喉元に叩きつけ、あるいは紅潮した面に吐きつけるまで、ガルシアはグッチと苦痛に耐えるしかなかった。
テオドールは自分の放った多量の精をガルシアが咳き込みながら、なんとか飲み干すのを見届けると、その細い身体を抱き上げ、ベッドにやさしい横たえるのだ。
そして蕩けるような周到な長い口付けを与え、ガルシアの涙を指先で拭って、テオドールは怯えきった少女に優しげに微笑んで、囁くのだった。
―おやすみ、ルシアン。良い夢を......―
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