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第7話 躾られる少年(二)

 「テオ兄さま......」    少女らしく結い上げられた髪が柔らかな風に微かに揺れた。白いしなやかな指が差し伸べられ、逞しい首に抱きつく。 「お帰りなさい、兄さま」 「ただいま、ルシアン。いい子にしてたかい?」 「はい、兄さま......」  ガルシアは、テオドールの胸に頬を押し付けるようにして、頷いた。  ガルシアの躾を始めてしばらくして、テオドールは、ラルガとの戦争のために国を離れた。  留守の間、ガルシアはガネルクとワルダの手に託されていた。ガルシアにとって、それはこの上なく孤独で、凍てつくような日々だった。  彼らは機械的に、日々のガルシアの世話をこなし......食事の中の混ぜ物さえ無かったが、暖かな会話も温もりもない、砂を噛むような時の中で、ベッドの、テオドールの温もりを思い出しては涙ぐむようになっていた。  時折届く、テオドールからの手紙からはテオドールのコロンの匂いがした。書かれている内容は、ひとつの町を焼き払ったとか、砦を砲撃で完全に破壊したとか、果ては陥落した首都の人々を『皇帝の命によって』、悉く捕虜として、アルガナルに連行した......といった目を背けたくなるような内容だった。  最初の一、二通の手紙の頃には、内容の惨たらしさに読む気もしなかったのだが、ガネルクとワルダの冷たい仕打ちに疲れきったガルシアにとって、テオドールの香りのする手紙は、たったひとつの血の通った会話だった。  ガルシアには、テオドールの文字を目にしただけでも、最初の―可愛いルシアン、元気で良い子にしているかい?―という何気ない呼び掛けと、最後の結びの一文だけでも、暗闇にひとり取り残されたような冷えた胸がほんの少し温まった。  それは、いつもガルシアを弄び、苛んだ後に優しく抱き締めて囁くあの言葉で締めくくられていて、ガルシアはそれを読む度に、テオドールの胸の鼓動を思い出した。 ―戦は終わった。もうすぐ帰る。お土産を楽しみにしていなさい―  その言葉を読んだ時には、安堵と喜び......それは間違いなく、孤独から解放される喜びだった。  テオドールが帰還するというその日、ガルシアは真っ白なドレスと、珍しくワルダに頼んで髪を結い上げてもらった。 ―出来た―  という言葉は冷ややかだったが、極めて丁寧に、可愛いらしく仕上げられていた。思わず ―ありがとう― と言うと、無表情な口許がほんの少し微笑んだ気がした。  丘の向こうから馬の微かな嘶きが聞こえると、堪えきれず、離れの戸口まで駆け出していた。 「兄さま、会いたかった......」  久しぶりに、テオドールと共に入浴し、テオドールの背中を流しながら、ガルシアはその背中に頬を押し付けていた。暖かかった。 「洗ってあげる。おいで......」  膝に抱かれ、泡立たせた手で全身をまさぐられ、微かに身を捩りながら、自分の内に体温が戻ってくる気がした。 「ここは、特によく清めないとな......」  ガルシアは恥ずかしさに頬を染めながら、だが、以前のような激しい嫌悪感がすっかり影をひそめ、触れられる指の熱さに胸の高なりすら覚えていた。 「自分から、お願いしてごらん」  食事を終え、ベッドにガルシアを運んだテオドールは、下履きを外すと、ガルシアのぺニスを優しく撫でながら、言った。  ガルシアは、俯いて頬を紅く染め、だが間違いなく強請るように囁いていた。 「私の、罪を罰してください......兄さま。忌まわしい私のモノにお仕置きしてください...」 「いい子だ、ルシアン」  テオドールは、口許を歪めて小さく笑うと、ガネルクから細長いビロードの箱を受け取った。 「開けてごらん......」  テオドールに言われて開いた箱の中には、蝶々の装飾のついた金の細い棒が入っていた。光を乱反射しているのは、ごく小さい珠を連ねて作ってあるからだろう。 「これは......?」 とガルシアが訊くと、テオドールはニヤリと口許に昏い笑みを浮かべた。 「お土産だよ、ルシアン」 「え.....?」  テオドールは、不思議そうなガルシアのぺニスをつまむと、軽く扱きあげた。  「あ......あんっ......兄さま...ダメ...あぁ.....」 「少し触れただけなのに、もぅ硬くして...蜜まで滴らせて......なんてはしたない、悪い子なんだい、ルシアン?」 「あんっ.....テオ.....兄さま......お仕置き.....して。......罰し....て、私の......いけないモノ....虐め......て」 「いい子だ、ルシアン。......今日は、特に厳しく罰してあげよう」  テオドールはそう言うと、手にした金の細い棒を、ガルシアのぺニスに突き入れた。 「あっ!......あひっ!......に、兄さま?」  ガルシアは尿道に異物を差し入れられる違和感と痛みに身を仰け反らせた。 「じっとしていなさい、ルシアン。これはプジーというんだ。ルシアンの忌まわしいモノを奥底から清めるために作らせたんだ」 「あひっ......い、痛い。兄さま、許して...」  テオドールは哀願するガルシアの下肢をしっかり押さえ付けて、金の棒をゆっくりガルシアのぺニスの奥深くまで差し入れた。 「奥まで届いたかな?......隅々まで、しっかり清めないとな。」  テオドールは、金の棒をクリクリと回しながら、ガルシアの尿道の隅々まで掻くように擦りたてた。 「ひっ...ひいっ......イヤ.....テオ...兄さま、痛.....い......あっ......あぁ.......あひっ!」    ガルシアは敏感な粘膜の奥まで巧みに刺激され、腹の奥から這い上がってくる異様な快感と熱に身を捩り、悶えた。 「痛いだけかい?ルシアン、本当のことを言いなさい......気持ちいいんだろう?」  テオドールは意地悪く、プジーをゆっくり先の方まで抜きあげて、抜ける寸前で捻じ入れた。 「ひいっ......いい...です......あぁあっ....気持ち.....いい......ひいいっ」  何度も何度も同じように刺激され、ガルシアは、異様な感覚にぽろぽろと涙を溢した。 「出したいのかい?ルシアン」   ガルシアは、テオドールの意地悪な問いにこくこくと頭を頷かせた。腹の奥底から糶上がってくる射精感への渇望に栓をされて、下半身が焦げ付きそうだ。  だが、テオドールはガルシアの悲痛な表情に、ちゅっ......と額に軽く口付けると冷酷に告げた。 「私に口付けなさい。赦しは私を満足させてからだ」  ガルシアは寛げられたテオドールの股間に顔を埋め、必死にその雄に奉仕した。 「もっとお尻を上げなさい。鏡に君の可愛いお尻がよく映るように突き出すんだ。脚もちゃんと拡げて......」  テオドールは自らの股間に這いつくばるようにして、豪直を頬張り啜り上げるガルシアの頭を優しく撫でながら、その淫らな肢体が余さず鏡に写し出される様を歪んだ笑みで眺めていた。    ガルシアがテオドールの精液を飲み干し、愛らしい胸の突起を揉みしだかれ抓られ、舐られて、耐えきれずにプジーの隙間から白い涙を滲ませるまで、プジーが抜かれることは無かった。 「お漏らししてしまったのかぃ?本当にはしたない姫君だ。よくよくと罪深い......」 「ごめんなさい、ごめんなさい.....兄さま」  テオドールは如何にもな表情でプジーを抜き取り、ガルシアがぺニスから白濁を迸らせる様を鏡越しに見るようきつく命じた。  ガルシアは背中からテオドールに抱きしめられながら、自分の淫らな姿に涙した。  そして、テオドールの思うがままに達かされ啼かされて、その胸の中で眠りに落ちた。  ―おやすみ、ルシアン。良い夢を......―  テオドールの酷い『躾』にズタズタに心を切り裂かれながら、それでも、その胸は暖かかった。ガルシアはそっとテオドールの唇にキスを返して、目を伏せた。    

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