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第8話 検査
「服を脱いで下さい」
丁寧だが、有無を言わせぬ口調にガルシアは項垂れてブラウスのタイに指をかけた。
目の前の医師は無表情なまま、ガルシアがブラウスとシュミューズをワルダに預けるのをと見ていた。スカートとペチコートを脱ぐと、絹のストッキングとガーターベルト、そしてあの下履きだけの姿になった。
よく磨かれた処置室のスチールの壁に映る自分の淫らな惨めな姿に、ガルシアは項垂れて唇を噛む。
「殿下、鍵を......」
医師の言葉にテオドールが鍵を外し、ベルトごと下履きを床に落とした。
「そこに寝てください」
ガルシアは、医師の言うままに、ひんやりとした手術台によこたわり、目を閉じた。あのバイオチップを挿入された手術台の上で、ガルシアは、身体検査、もしくは健康診断......とテオドールが呼ぶ、一連の『検査』を受けねばならないのだ。
この定期的に行われる『検査』は、ガルシアにとって最も辛く惨めな義務だった。
まず採血。短い試験管三本ぶんの血液が抜かれ、別室に運ばれる。それから、米噛みと耳の後ろ、項など数ヶ所に小さな吸盤、胸の下部と膨らみ始めた胸乳のやや上に大きな吸盤が貼り付けられる。
手首や足首は大きなクリップが嵌められたが、そのコードの先は手術台ではなく、幾つかのモニターのついた機器に接続されている。
「心電図と脳波を取る。まぁ、誰もがする検査だ」
ガルシアにとって苦痛なのは、そこから先の行程だった。腹部にひんやりとしたジェルが塗られ、スキャナーが充てられる。
そして、テオドールに弄られ、赤く色づいた乳首をスケールで測られ記録された後、小さなクリップで挟まれ、長いコードの着いた細い針を乳首の先端に突き刺されるのだ。
「ひ......」
ぐい...と胸乳ごと掴まれ、針を突き立てられる痛みに項がせり上がる。医師は表情のひとつも変えず、両方の胸乳に針を刺し終わると、ガルシアの脇腹や鼠径部にも針を刺す。その先にはやはり長いコードが着いていて、機器に繋がっていた。
次に、ガルシアのペニスに手をかけ、軽く勃ちあげさせると、やはり長いコードの着いたプジーを挿入した。
「やめて......先生、テオ兄さま、許して......」
懇願するガルシアの肛口が拡張器で拡げられ、内視鏡らしきものの着いた管と、コードの着いた突起物が挿入される。突起物は、前立腺に貼り付けられ、管は直腸の奥深く、結腸部分まで挿入された。
「いやぁ......やめて!......兄さま、お願い......!」
ガルシアの悲痛な叫びが施術室内に木霊する......が、医師の指が何の躊躇いもなく、機器にスイッチを入れる。
「ひ......ひぃっ......いやあぁ......!」
細い針と肛腔の突起部とプジーから、微弱な電流が流され、ランダムに強弱をつけて、ガルシアのありとあらゆる性感帯を刺激する。しかも、乳首のクリップやプジー、肛腔の突起部には、電流とともに震動を起こすよう、設計されているのだ。
「あひっ......ひいぃ......いやあぁ.......取ってえぇ....お願いぃ.....」
強制的に性感を高められ、悲鳴をあげ続け、身悶えよがり狂うガルシアの傍らで、医師は助手とともにモニターに目を凝らし、機器を操作し、電流や震動の度合いを巧みに変化させ、ガルシアの感覚が刺激に『慣れない』よう、細心の注意を払って計測を続ける。
「ひっ....ひっ......ひぎっ...ひいぃっ......」
『検査』は、ガルシアが白目を剥き、舌をだらしなく突きだして気絶するまで続けられ、その間に絶頂に達した回数や波まで、全て細かく記録された。
繰り返される絶頂に理性を失ったガルシアのペニスからプジーが引き抜かれると、堰を切って白濁が溢れ滴り、腹部を汚した。
ガルシアがピクピクと全身を痙攣させて、ペニスの先端から潮を吹き、失禁する様を冷ややかに見下ろしながら、テオドールは、医師に尋ねる。
「子宮の発育の度合いはどうだ」
「極めて順調です」
エコーの画像を確認しながら、医師が答え、テオドールは満足げに頷くのだった。
「性的な刺激に関する感度も上がっています。脳波を比較しても、毎回、快感の度合いを示す波が高くなっています」
「良いことだ」
テオドールは、医師の助手が差し出したデータをつぶさに見ながら、ふっ......と小さな笑みをもらした。
「女性ホルモンの分泌状態も良いようだな」
「はい。ただ......」
「ただ?」
「受胎し、出産可能になるには、今少し成長を待たないと......。特に筋肉量が不足しています」
「ならば、今少し待つとしよう。」
テオドールは言って、計器を全て外され、人形のように力無く横たわるガルシアの身体をガウンで包み、抱き上げた。
「お優しいことですな......」
施術室を出ようとするテオドールの背後で、コーエンが小さく呟いた。
「たかが『玩具』に、随分と手間暇をおかけになる......。やはり、貴方は......」
「黙れ!」
テオドールが鋭く、コーエンの言葉を絶ち切った。肩越しに睨むその眼差しにコーエンは口をつぐみ、深々と礼をした。
「これはご無礼をいたしました。......下履きの洗浄 が済みましたら、後ほどお持ちいたします。ワルダに入浴の準備をさせておきました」
「うむ」
短く言って、テオドールは施術室を後にした。
気を失ったガルシアを入浴させ身体を清めた後、その髪を撫で付けながら、密かに呟いていた言葉を、誰も知らなかった。
ただ、ガルシアは遠い意識の片隅で微かに過ったテオドールの声を聞いた。優しく哀しげな声だった。
―おやすみ、ルシアン。良い夢を......愛してる。脆弱な私を許してくれ......―
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