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5 大変なことになった話*

   次は…5歳児か。終われば他人事なんだけど、こんな子供まで対応するのは結構キツイんだよなぁ。  タブレットの端を指で叩きながら、次の対象者の確認をする。  魔落ち女の一件以降、バイトの件数を少なめに振ってくれるようになったけど、先輩の帰る時間がどんどん遅くなってきてた。それが申し訳なくて、沢山入れてくれと自分から頼んだお陰で、毎日5~6件のバイトを入れてもらい、前と同じぐらいの件数まで戻ってはきている。  無理してない?ボクだったら大丈夫だからね?って心配する先輩だったけど、本気で無理してないから問題はない。それに、先輩が帰る時間だって、いつもより早くなってるし。  生きたまま魔落ちするなんてレア中のレア案件に当たったからって、そのせいでこのバイト辞めたいとは思わないし、辞めてもどうしようもないし…俺のメンタル、そこまで軟では無い事を認識してほしい。  次の現場へ向かおうとした所で、聞き覚えのある心配性の声がした。滅多に人とすれ違うことない待機室の廊下の端から、フードを揺らして駆け寄ってくる死神は、紛れもなく先輩だ。 「よかった!飛ぶ前だったね!」 「どうしたんですか、先輩」  俺の前まで駆けてきた先輩は、膝に両手をついてぜえぜえ息を整えてる。そんな息上がる距離だったか…?死神事情はよく分からない。 「はぁ…はぁ…」 「…大丈夫っすか…?」 「はぁ…ふぅ、大丈夫…!あのさ、対象者の変更をしたいんだけど、良いかな?」 「変更?大丈夫ですけど…」 「ありがとう!じゃあパッパっと…」  スマホを弄る事数秒、OKって頷くから俺もタブレットで更新を掛ける。 「カナトくんはこれで上がりで大丈夫だから」 「え…?」 「指名してくるほどだし、気に入られたんだろうね。お話しておいで」 「は…?指名……?」 「わあ!もうこんな時間!じゃあね~」  俺を1人置いて、ドアを呼び出した先輩はさっさと消えてしまう。それと同じタイミングで、グルグルと接続中だった画面がぱっと切り替わる。 【14時:賢者】 「はぁあ…?!」  静かな廊下に、俺の声が響き渡った。  ◆ 「よっ!」  ドアを開けた瞬間、片手を上げた賢者に出迎えられた。  わけがわからん。こいつ本当に何なんだ…。ジト目で見つめる俺に、賢者は腕を組みながら近づいてくる。 「なに、今日の死神はご機嫌斜め?」 「……なんでお前何回も死んでるんだよ」 「死にたがりだから?」 「違くて…!」 「ぷっ、怒んないでよ」 「怒ってない」  覗き込んできた顔を思い切り睨み付けてやったけど、骸骨マスクのお陰でそこまでの表情は読み取れないだろう。それでも、溢れ出る不機嫌な雰囲気を汲み取った賢者は、軽い調子で謝りながら肩を叩いてきた。  最近は先輩か一度きりの他人としか接していなかったから、自分の事を知ってる人と話すって言うのが凄く久しぶりで、馴れ馴れしい態度が少し嬉しかったりもしたけど…口に出したら調子に乗りそうなので黙っとく。下で繰り広げられてる戦闘には一度も視線を向けず、俺と賢者はドアを潜った。  通い慣れた、白く静かな廊下を2人並んで歩くのは少し不思議な感覚だ。何が楽しいのか分からないけど、やたらとご機嫌な賢者へ視線を向ける。ジロジロと遠慮せず見てたら、流石に何?と苦笑された。 「お前、生きてる時より生き生きしてるな」 「そう?まあ、あの世界で生きてる方が地獄だし」 「……なんで死んだのに生き返ってんの?」 「俺のパーティリーダー勇者だから」 「……はぁ?」 「勇者だから」  真面目に答えられてるのか、からかわれてるのか分からない…勇者だからなんだって言うんだ。蘇生でもできるのかよ。  何回か同じやりとりを繰り返して、やけくそでそう言ったら、素直にそうだと頷かれた。勇者っていう選ばれし者が教会でなんかよく分らん魔法を使うと、仲間のみ蘇生するらしい。どんな原理知らないけど、生きているのを目の当たりにすれば、そんな奇跡の力もあるんだなって納得するしかないけど…そんなゲームみたいな世界で大丈夫なのか心配になる。  蘇生可能だと知ると、死んでも仲間の反応は薄いのも、死神に驚かないのも当然だ。俺が担当してた時以外でも何回か死んでるんだろうし。そうだ、こいつは何度も死神と接してきてるんだよ…俺を指名してるって先輩が言って対象者を交換したけど…もしかして… 「…俺以降で担当した死神に、俺の話した?」 「ああ、したよ」 「…指名もした?」 「どうせなら、知り合いの方が良いし」 「……死神指定してくるの、きっとお前が初めてだな」 「違いない。普通1回しか死なないしね」  気にすることもなく笑う賢者に釣られ、俺も小さくだけど笑ってしまう。前回よりも和やかな雰囲気で、雑談しながら待機室が並ぶ廊下までやってくれば、もう終わりも近い。先輩も優しくて楽しいんだけど、賢者とは友達と話してる感覚に近い。こんなどーでもいい会話が出来たはすごく久しぶりで、少し寂しい気もする。  待機室のドアを開けて、中に賢者を入れてすぐに閉められなかったのはそんな理由だった。俺の様子に気づいた賢者はニヤニヤとタチの悪い笑顔を浮かべた。 「どうしたの、俺と離れるのが寂しい?」 「な…っ!」 「茶でもいれてあげようか?」 「い、いらない…!」 「俺ともっと話したいんでしょ、付き合ってあげるよ」 「話したくない…!」  テンパりながら激しく首を振る俺を見て、賢者は堪らず笑いだす。なんだよ!別にそのまでして話したいわけでもないのに!まるで、俺がこいつの事大好きみたいじゃんか!  恥ずかしくて、これ以上のここに居たくない。出て行こうとしたけど、近寄ってきた賢者の腕が肩に回って引き寄せられる。流石モンスターとやり合ってるだけはあって、非戦闘要因なのに俺よりも力は強い。ぐっと寄せられたせいで、ものすごい近くまで顔が寄る。 「俺は話したいなぁ」 「はぁ?!」 「蘇生されるまで暇なんだ、付き合ってよ」  なんて強引なんだ…!力任せではなくて、今度は言葉で追い詰めてくる。対して俺の押しの弱さ。あー…だの、うー…だのしか口に出来ず、折れて部屋に入ろうとした時だった。突然隣の部屋のドアが開く。  ここで死神とすれ違うことはあるけど、収容された者と鉢合わせした経験は一度も無い。驚いて固まった俺と、そんな俺に腕を回して巻き添えをくらった賢者とで黙って動いたドアを見つめる。  ゆっくりと開いたその中から、黒髪の美少女が出てきた。余りの可愛さに全身に鳥肌がたつ。俺たちの視線に気づいた少女は、俺達を、正確には俺の後ろに立っていた賢者を見た途端に、怒り狂った表情に変わった。 「貴様!勇者の…!殺してやる!!」 「残念ながら、僕はもう死んでいるのですが…」  襲いかかろうと上げた少女の腕は、振り上げたままの状態で止まる。煩い金属音と共に、両手が後ろへ引っ張られ見えない何かに拘束される。 「くそ!放せ!!殺す!!」  ガシャガシャと激しい音を立ててもがくと、見えない力は増していくようで、美少女は苦しそうに顔を歪めた。露出の多い服から覗いている真っ白は肌に、赤い線が浮かび上がってきた。肩周りから首、腰、太もも、足首と浮かび上がる線は歪。ジャラジャラと重い金属音も相まって、鎖で縛られてるようだ。 「人間風情がぁッ、」  目を剥いて声をあげる姿はもう美少女とは言えず、悪魔か何かに近い。最後の抵抗なのか大きく体を捻じると、口から大量の液体を吐き出してきた。 「危ない!」 「ひぇ?!」  強く賢者に腕を引かれたから、頭から被る事は避けられたけど、顔面から胸元にかけてはばっちり掛かった。ひどく甘い香りを放つ透明な液体はヌメヌメしていて気持ち悪い。  掛かると思った瞬間に目を瞑ったせいで、次に目を開けると、既に廊下には俺と賢者しか居なかった。派手な金属音と絶叫は聞こえたから、引きずられて行ったのだけは何となく分かった。  次が無いのが分かれば、とにかくこの気持ち悪さをどうにかしたい。手で払ってもなかなか落ちない液体と格闘していると、賢者が溜息を付きながら俺から離れる。助けてくれたとは言え、もっと心配するとか無いのかよ…八つ当たりに近い状態で賢者を見ると、何とも言えない表情を浮かべていた。 「あー…シャワー貸すから、とりあえず中入って」 「え…」  いきなりの提案に驚く。今日のバイトはこれで終わりだし、部屋に帰って浴びても遅く無いけど…今すぐここで落とせるのは魅力的だ。実際、マスクに染み込んできたヌメヌメが素肌に触れていて、我慢出来ない程に気持ち悪いし、なんか息も苦しくなってきた。ここは甘えさせてもらおうか…?  まごついていた俺に痺れを切らしたのか、賢者はもう!と大きく叫ぶと力づくで部屋に引っ張り混んできた。大きな音を立てて閉められたドアと続いて聞こえる鍵の音。何もしてないのに鍵閉まるなんて、この部屋オートロックだったのか。  部屋に入ってワンテンポ遅れたタイミングで、然程強く掴まわえたわけでもない腕が痺れ、体が異常を訴えてきた。呼吸がしにくくなってきて、突然の変化に怖くなり両手で自分の体を抱き締めたら、全身に痺れが走り、立っていられなかった。腰が抜けたように座り込むと、視界がぼやけ始めている事に気付く。 「は…っ、は…ッ!」  高熱を出した時に感覚が似てる。口で荒い呼吸を繰り返してるのに、息苦しさが治まらない。 「なんだ、よ…これぇ…!?」  経験した事の無い異常に混乱して、賢者を見上げると苦笑を浮かべていた。 「知らない?さっきの淫魔だよ。そいつの体液掛けられた」  淫魔って、何?ゲームの敵とかに出てくるエロい事が主食の、あれ?そんなのの体液って、やばい気しかしない。 「淫魔の体液は媚薬効果がある。それを大量に掛けれられたら、そうなるよね」  そう言って向けた視線の先には、既に盛り上がってる俺の下半身。恥ずかしくて隠そうと抑えると、それだけでも刺激になって体が震えた。痛いほどの快感から逃げたくて、背中を反って上を向く。  こんなの知らない、こんな状態どうすれば良いのか分からない。息が苦しくて堪らない。助けを求めるように賢者を見れば、お手上げのジェスチャーをされた。 「治まるまで待つしかない。抜けば少しは楽になるんじゃない?」 「はっ、そん、なぁ…!」 「まあ……仕方ないし、シャワー使って良いよ」 「むり…ッ、」 「そんな事言っても、俺も骸骨相手とか無理」 「ちがッ、ふぁ、とって…!」  苦しくて堪らなくて、マスクを取れば少しは変わるかもと首に手をかけたが、上手く捲れない。とにかくいち早くマスクを取って欲しい。何時もなら簡単に脱げるのに、こう言う時に限って上手くいかず悶える。首の辺りを必死に引っ掻いていたら、賢者がゆっくりこちらへ近付いてきた。ドン引きな顔をしてそうだけど、今の俺にそれを確認する程の余裕も無い。  冷たい指先が喉元に触れると、それだけでも気持ちよくてヤバイ。変な声が出そうで口を押さえようとしたけど、動くなと怒られた。何かに掴んでないと、堪らなくてきつく自分のズボンを握りしめた。 「よっ、と……?!」  簡単に捲りあげられ、マスクから解放された頭にひんやりとした空気が触れる。 「っふ、んんッ」  水から上がったばかりみたいに口を開いて息を吸い込むけど、求めていた変化は訪れない。くそぉ、そんなに甘くなかった…! 「もう、やだぁ…」 「お前…顔…」 「むり…ッ、はっ、ほんと、たてなぁ…!」  せめて、風呂場までで良いから連れて行って欲しい。腰が抜けて動けない事を伝えようとしてるのに、口からでるのは呂律の回っていない言葉だらけ。おまけに、視線を感じるだけでもゾクゾクしてきて、変な声も止められない。 「んぁ、やだ…ッ!たすけて…」  藁にもすがる思いで、賢者へ腕を伸ばす。早く抜きたい、イってこの状態から抜け出したい。蚊が鳴くような声で求めた助けは、賢者に届いたようで、伸ばした腕を掴まれる。それだけで体が震えるけど、唇を噛んで必死に我慢した。無理やり引っ張られて膝立ちになった所で、綺麗な顔が間近まで迫ってきた。 「後悔しない?」 「ない…!」 「……分かった、助けてあげる」  両脇に腕を入れられると、勢い良く体が浮いた。無理やり立ち上がらせられても、ぐにゃぐにゃな体は賢者の方に倒れ込む。そこまで計算済みのように抱きとめられると、歩き出した賢者に引きずられていく。  やっと下半身の熱を解放できると安心したのも束の間、すぐに体はベッドへと投げ込まれた。なんでこんな所に投げ込むんだよ、早く風呂場に連れてけよ!怒りを込めて賢者を見上げると、着ていたマントを床に投げて同じようにベッドに乗り上げて来ていた。 「な、に…?」 「これからやる事は、治療だから」  釘を刺すような言い方をしたと思ったら、賢者の手が胸をなぞる。スーツ越しに撫でられ、弱い刺激なのに、気持ち良くて肩が震える。 「あ…っ」  思わず漏れた声が、女みたいで恥ずかしい。出ないように唇を噛み締め、口元を手の甲で押さえると、賢者が口の端をあげて笑った。 「お前、その顔の方が良い」 「?」 「俺の時だけは、外してよ」  口元を抑えてた手の指先にキスをしながら、至近距離で見つめられてくらくらする。ねえ、良いでしょ?って言われて、何の了承を得たいのか理解できないまま、気付けば頷いていた。良い子、と嬉しそうに笑うと、賢者の唇が首元へと下がっていく。  いつの間にかネクタイを緩められ、シャツのボタンが外されて、上半身が露わになっていた。優しく滑るように撫でる感覚が気持ち良いんだけど…物足りなくもあって、もどかしい。って言うか、風呂場に連れてってくれるんじゃ無いのか?なんで寝かされて、脱がされてるんだ?よく分からず混乱していると、ひんやりした手のひらが乳首を掠めた。 「ぅあ!?」  あまりの刺激に驚いて声がでる。乳首なんて、なんで男の体に存在してるのか分からないような部分だし、普段は何も感じないはずなのに…どうしてこんなに感じるのか理解できない。驚く俺をニヤニヤとした表情で見下ろしてきた賢者は、そのまま中心を捏ねるように動き始める。途端に感じる甘い痺れが下半身へと集まってきた。 「あぅ、あ…ッ!」 「気持ちいいんだ?」 「ちが…!」  賢者の言葉を認めたくなくて首を振ったけど、正直とても気持ちいい。もっと強く沢山触って欲しい。口に出してないのに、分かってるとばかりに強く力を籠められる。 「あ、あっ、やめぇッ」 「やめていいの?」 「ひっ、あっ、あんっ、だめ、ああああっ!」  全体を捏ねるように動いていた指だったけど、爪で強く摘ままれると、目の前が白くスパークする。気付けば下半身からぐっしょりとした感覚を感じて、イったのを時間差で気付く。いつもなら少しは落ち着くはずなのに、俺の分身はまだ上を向いて衰えないのが分かる。 「ぁ、ああ、なんでぇ…?!」 「何?イっちゃった?」  リップ音を立てながら指で捏ねられてる乳首とは反対側を吸い上げている賢者が、楽しそうに問いかけてくる。訳も分からず、頷く俺の回答を聞いたら、声を上げて笑った。 「若すぎでしょ、我慢できなかった?」  空いてる方の手で、ズボン越しに盛り上がった所を捏ねるように触られ、全身がビクっと揺れる。それだけで答えになったみたいで、仕方ないと笑いながら賢者が俺のベルトに手を掛けた。 「や、やめ…!」  奇跡的に残っていた羞恥心と理性が、ズボンを下ろそうとする賢者の手を止めようと掴む。俺の弱々し過ぎる抵抗なんて簡単に払いのけられるだろうに、賢者は律儀にも盛り上がる下半身に触れる前に動きを止めた。  意地悪そうな笑みを浮かべたまま、俺の顔を覗き込んで、ゆるゆると臍の上あたりを撫で始める。緩い刺激のせいで漏れそうになった声を必死にかみ殺している俺の上から小さな笑い声が降ってくる。 「どうしたの?」 「ッ、ああッ」  臍を爪でなぞられて、簡単に声が漏れる。俺の様子を見て楽しそうにしていた賢者は、体を倒すと臍まで顔を寄せて、あろうことか臍へ舌を差し込み舐めあげてくる。 「ひゃ、あああ…!」  ぴちゃぴちゃ音を立てながら舐めたり、吸い上げたりされて勃ちあがっていたペニスからまた液体が溢れ出るのを感じる。くそ…ッ、なんでこんなに出るんだ…!早漏じゃなかったはずなのに…!苦しくて逃げたくて首を振ってみたけど、助けなんてこなくて、辛くて、気付けば目から涙が零れ落ちていた。 「ほら、泣いてちゃ分からない」 「なんで、だ、よぉ…」 「何が?」 「助けて、くれるんじゃ、無いのかよ…」  荒い口呼吸を繰り返しながら、腹に顔を埋め目だけをこっちに向けてきていた賢者を睨み付ける。言ってる事とやってる事が違い過ぎる。一向に症状は改善しない。文句をつけた俺に、賢者は一瞬ポカンとしてたけど、また笑い出した。けど、その笑いはさっきまでとは違って、クツクツと喉の奥を鳴らすような感じで雰囲気が変わったような気がする。 「お前、可愛い所あるね」  中途半端に寛げられていたズボンに再び手がかかったと思ったら、下着ごと一気に引き下ろされる。布の擦れる感覚すら気持ち良くて、甲高い声が漏れる。それを気に掛けるよりも先に、直接自身を掴まれて、更に声を上げてしまった。 「ああぁ…!」 「うわ、すごい、びしょびしょ…自分でも分かってた?」 「ひっ、あ、ああッ」  勃ち上がりすぎて、先端が腹についてるそれの竿の部分を軽く擦られ、全身に刺激が走る。賢者の問いかけに答える余裕なんてなくて、与えられる快感にすべて持ってかれる。流石男だけあって、気持ちいポイントをおさえた刺激のせいで、簡単に限界まで追い詰められた。 「あ、だめ、イく…!」 「今更何言ってんの」 「だめ、あ、あああ、やだ、やぁああ!」  生暖かい液体が勢いよく飛び出して、自分の顔にまでかかる。何回目かの射精なのに、それでもまば勃ちっぱなしだし、普段顔にまで飛んでくる事も無いのに…自分の体が異常すぎて、戸惑いよりも恐怖を感じる。  白い天井を眺めながら、このままどうなってしまうのかぼんやりと考えていたら、ヌメヌメした何かが、有りえない所に入り込んできた。 「あっ、や、なに?!」  驚いて視線を下半身へ向けると、ほんのりと白い頬を赤く染めた賢者と目が合う。意地悪く目を細めると同時に体の中に入り込んできた何かが動き出す。 「悪い…俺も自爆った…」  くちゅっと音を立てながら激しく動きだす場所は、間違いなく尻の穴で…中で動いてるのは賢者の指なんだろう。認めたくないけど、目に映る現実に驚きで固まったのは一瞬だった。指先が中を擦って、もう片方の手でペニスを擦りあげられる。両方からの刺激が強すぎて、必死になってシーツを握りしめた。 「ン、あああっ、あ、ああ」 「淫魔の体液ってすごい…ほぐさなくても、どんどんはいる」  さっきから聞こえてた水音って、もしかしなくても吐き出されて服ついてた体液だったのか…?ローション替わりにそれを使うなんて信じられない…!直接体内に塗り込まれたせいか、後ろが熱くて堪らない。指で掻き混ぜられ、空気が抜けるようなぐぽって音に更に煽られていく。信じられない所に指を突っ込まれてるってのに、刺激が気持ち良すぎてやばい。 「ッ、あっ、そこ、ヤ、あああ!」  何かを探すように動かしてた指が、一か所を掠めた瞬間に背筋が痺れた。大袈裟に体が震えるのに驚いて、賢者に触るなって言ったのに、ニヤっと笑うとそこばっかりを引っ掻いてくる。指が当たるたびに、ペニスからぴゅぴゅって液が飛び散ったけど、そんなのに構ってられない。 「やだ、やあああっ、さわん、なあああ」 「嘘。ここが気持ちいいんでしょ?」 「あああ、イくッ、!」  またイきそうになったのに、寸での所で指の動きが止められた。ペニスを擦っていた手も止まり、穴から指も引き抜かれる。触るなとは言ったけど、この状態で止められるなんて辛すぎる。訳も分からず賢者をみあげると、ズボンを乱暴に寛げていた。飛び出してきたのは、赤く勃ち上がってる男の象徴。あんな綺麗な顔してるのに、勃起したペニスがついてるなんてなんか不思議だ。  俺と目が合うと、苦笑を浮かべた賢者が覆いかぶさってきた。はーはーと息を荒くした賢者が自分のデコを俺のデコへくっ付けてくる。 「悪い、我慢出来そうにない…」 「ぁ…ッ」 「挿れていい?」  両足を広げられ、窄みには既に賢者の先端が押し当てられている。俺の了承なんて取らないで、入れて欲しいのに、返事をしない俺を急かすように細かく擦り付けてきた。ビクビク震えながら、賢者のペニスを穴に入れようと腰を上げて追いかけても、あと少しって所で腰を引かれてしまう。 「ゃ、あ…!」 「こら、言えないの?」 「だって…!」 「ねえ、挿れたい…俺は挿れたいよ」  掠れた声で、こんな間近で囁かれて、おかしくなりそうだ。  もう、どうでもいい。とにかく、今は目の前の男が欲しくて堪らない。掴んでいたシーツを放すと、賢者の背中へと回した。 「早く…挿れて」 「よくできました」  蕩けるような笑顔を浮かべた賢者の硬くて熱いペニスが、俺の尻の穴の中へと入り込んでくる。ゆっくりとした速度で入ってきたと思ったのに、三分の一ぐらいまで入ると一気に奥まで突っ込んで、痺れが走った所を擦りあげてきた。 「 ――― ッ、ぁあああ!!!」  目の前がスパークして、背中が仰け反る。もう水みたいな精液が、俺と賢者の腹に飛び散った。 「っは、挿れただけだよ??」  口の端を上げて笑いながら、賢者は腰を振り始める。イったばかりなのに、そんなのを全く考えもしない激しい動きで、視界がガクガクと揺れた。 「あっ、ああっ、らめ、あああっ!」 「ッぁ、クソ…ッ、!」 「あああ、あんっ、んあああ」  気持ちい、熱い、蕩けそう…。賢者の動き全部が快感で、もっと欲しくて無意識に足を絡ませてた。敏感すぎるせいで、快感が辛いはずなのに、もっと欲しくて堪らない。ずっとこのまま、突き上げていて欲しいとまで思ってしまう。 「やら!ああ、きもち、あああ」 「ふっ、ん、どっちなの?」 「もち、きもち、あああっ!!らめ、ぁあッ」  奥の方を何度も突き上げられて、また簡単にイってしまう。痙攣する体のせいか、賢者が小さく呻くと、俺の膝裏を持ち上げる様に掴むと、速度を上げて腰を振る。 「ああああっ!はげし、あ、ああ!」 「出すよ…!」  奥まで突っ込まれたら、今度は温かい物が流れ込んでくる。ぴくっと震えながら出ている物を奥の方へと押し込んでくる動作に、まだ快感を拾ってしまう。 「ぁ…あ…」  この地獄みたいな状態はいつまで続くんだろう…本当に助けて欲しい。  俺の肩に倒れ込むように顔を埋め、呼吸を荒げる。息を整え終わるよりも先に賢者は顔を上げると、目にかかっていた自分の長めの前髪をかき上げた。焦点の合っていない目が、俺を見つめている。 「まだ、足りない?」  形の良い唇を舐めあげながらそう問われ、自然と頷いていた。俺の答えに、賢者は満足そうに笑うと腰を動かす。 「ん…っ」  抜かなかったペニスは、イったはずなのに硬さも大きさもそのままで俺の中に残っている。両肘を俺の顔の横について、顔を寄せてきた賢者は見た事も無いぐらいエロい顔で笑う。 「俺も…全然足りない」  付き合って、と囁きながら再び始まった律動で、俺から出てるとは思えない甲高い声が溢れ出す。  まだ、この地獄は終わらない…体の飢えが収まらない。辛いはずなのに…。 「ぁああん、やったぁあ、これ、すきぃ…!」  虚ろな賢者の目に映ってる俺は、だらしない顔で嬉しそうに笑ってた。 (大変なことになった話。)

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