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13 好きです*
トイレから戻ってきた二人は、何事も無かったかのように席へと座り直した。啓太も、少しだけぎこちないけどいつも通りに戻っている。
ここで、俺だけうろたえる訳にはいかない。隣へと座る啓太を出迎えて、ビールを呷る。意識しないようになるべく視線を逸らして、なんとかこの飲みは乗り越えた。
「それじゃあ、俺はこっちだから。今日は有り難う」
「はい!有り難う御座いました!」
「有り難う御座いました」
改札を入ってすぐ、まーやんさんから挨拶され啓太同様に頭を下げる。お疲れ様と手を上げてからエスカレーターへと乗り込めばすぐに姿は見えなくなった。
見送り、俺たちも帰る為に反対側のエスカレーターへと乗る。終電に近い時間だったせいで、ホームには誰も居ない。電車が来るまで、あと5分程度…夜風が冷たくて、待合室へと入った。
二人しか居ない室内…いつもなら、すぐに啓太がしゃべり出すけど、今日はずっと俯き黙ったままだった。
俺から話しかけるネタは豊富にある。コスプレなんて未知の体験をしたんだ、感想はいくらでも出てくるけど…どうしても、今日だけは切り出すことが出来なかった。
代わりに、ぼんやりと啓太の指先を見つめていると、電車が到着するアナウンスが聞こえてくる。
「…行こっか」
「ああ…」
お互い目を見ずに会話を交わすと、立ちあがってホームに出た。すぐに着た電車に乗り込み、適当に座る。
暖かい車内に、無意識のうちに詰めていた息を吐く。程なくして扉が閉まると、電車はゆっくりと動き出した。
俺たちしか居ない車内は静かで、ガタンと線路を走る音だけが響く。この沈黙が辛い。乗り換えるまで20分弱…その間これが続くと思うと、苦痛だった。
やっぱり、俺から話しかけた方が良いかもしれない。無難にコスプレの話しを振ろうか…唇を噛んで考えていると、隣からあおちゃんと名前を呼ばれた。
驚きで肩が小さく揺れる。ゆっくりと啓太の方へ視線を向けたら、細められてる目と視線が絡んだ。そんなはずないのに、久しぶりに目があった気がした…。
「今日、楽しかった?」
「え…?」
「無理に付き合わせちゃったかなって思って」
「いや、そんなこと無い。楽しかったよ」
「そっか、良かった」
いつも通りヘラっと笑う啓太に、緊張が解けていく。あれだけ気まずいと思っていたのに、実際に目を見て話しているとそんなことどうでも良くなる。何で緊張なんかしてたんだろう…肩の力が抜けて、普段通りに戻ってく気がした。
「コスプレがこんな楽しいなんて知らなかった」
「やってみると意外と楽しいよね」
「まあ、啓太と一緒だったってのもあるだろうけどな」
一人でやってたら、またやってみたいとは思わなかったはずだ。なんも分からん俺を、ここまで引っ張ってくれた啓太のお陰で今日は楽しかった。
素直にそれを伝えたら、啓太が驚いた顔をする。それからみるみるうちに頬を赤く染めると、涙目に変わっていく。
「…好きな人に、俺が好きな物を好きって思ってもらえるのは…すごく嬉しい」
突然の言葉に反応が返せなかった。
何も言えず見つめる俺の前で、啓太は背筋を伸ばすように座り直すと、俺の方へ体を向ける。
「あおちゃん、好きです。付き合って下さい」
「え…っと、」
「幼なじみだし、男同士だし、戸惑うのはよく分かるんだ。だけど、一度で良いから、考えてもらえると嬉しい」
「あの…」
「今すぐ答えなくても大丈夫。やっぱり無理って思ったら、今後は俺と会わなくても良い。俺の事情は抜きにして、あおちゃんの気持ちを優先してくれれば良いから」
こんな必死な啓太の顔を、初めて見た。
俺が何か言うよりも先に啓太がたたみかけてきて、話させてもらえない。俺の気持ちを優先で良いと言ってる割に、答えをもらうのを怖がって聞きたくない…そんな状態の相手に言葉で何か伝わるはずもない。
何も言わない俺に怯えて、更に続けようとした啓太の腕を引っ掴むと、勢いよく引っ張った。
「わわ…?!」
なんとも情けない声を上げながら体勢を崩した啓太は、そのまま俺の胸へと倒れ込んできた。起き上がろうとする前に、後頭部を押さえつけて動きを止めさせる。
「あおちゃ、」
「いいよ」
「へ…」
力を弱めると、恐る恐ると見上げてきた。しっかり目を見つめて、もう一度同じ言葉を繰り返す。
そうすれば、数回ゆっくり瞬きをした啓太の瞳がみるみるうちに膜を張って、涙が零れてきた。
「嘘…」
「こんな事で冗談言うほど性格悪くない」
「でも、俺、男だし…」
「そうだな、俺も男だ」
「良いの…?ほんとに、良いの…?」
「俺と付き合いたくないの?」
「付き合いたい!好きだもんっ!」
「俺も」
「え…」
「俺も、啓太が好きっぽい」
せっかく、まーやんさんに気付かせてもらったんだ。ここで言わないで、いつ言うんだって話。
正直な気持ちを告げれば、いつも通り全部に濁点が付いたような声で名前を呼ばれた。こんな時までいつも通りの啓太の反応が、面白いし可愛い。はいはい、と軽く流しつつ背中を撫でてやると、好き~と叫びながら胸元へ顔を押しつけてくる。
よくあるやりとりだけど、触れてる部分がやたらと熱い。それに、めっちゃ心臓もバクバクしてる。胸元に顔を寄せられてるから、啓太にはバレバレかもしれない。
「…あおちゃん」
すんっと鼻を啜ってから顔を上げた啓太に呼ばれて、見つめ返す。潤んだ瞳は、細められて色気が漂っていた。
近づいてくるそれに目が離せない。鼻があたる所まで距離が縮み、伏せられる睫。それにつられるようにして、俺の瞳も閉じられた。
唇に触れる温かくて柔らかい感触は、一瞬だけ触れて離れていく。ゆっくりと目を開けると、熱っぽい瞳が下から覗き込んでいた。
「キスしたい」
「だから、もうしてるって…」
「えへへ…もっかい」
可愛く言ってるくせに、有無を言わさず唇を塞いでくる。薄い唇が触れて、軽く吸われる。促されるようにして口を開けると舌が割り込んできた。お互い絡め合い、深い物へと変わっていく。
「ん…ふ…」
息苦しいけど、気持ちいい。もっと繋がりたくて、啓太の頭を両手で掴むと俺の方からも食らいついた。
俺よりも厚い舌に絡みついて舐め合うだけで、背筋にゾクゾクしたものが走る。食みながら続けるせいか、ちゅっと音が鳴って、それがまた興奮していく。
電車の中。他の車両には知らない人も乗ってるって分かってるけど、どうしても止められない。
それは啓太も同じようで、下からだった体勢がキスをしながらゆっくり起き上がっていく。俺が優位だったはずなのに、気付ば上を向かされ啓太の舌を受け止めていた。
「ぁ…、」
酸欠でふわふわとしてくる。頭を掴んでいた手にはもう力が入らなくて、啓太の首元にだらしなく引っかかってるだけだ。
遠くの方で音が聞こえてから少しして、ゆっくりと啓太が体を引いていった。
「は…、ん…ッ」
腕が滑り落ち、自分の膝の上に落ちる。首がすわらなくてそのまま後ろの窓へと預ける。口で空気を吸い込みながら、啓太の方を見れば、相手も息を荒くしながら口元を手の甲で拭っていた。
「ごめん…電車なのに、がっついちゃった」
眉を下げて謝っているから反省はしてるんだろう。だけど、さっきよりも強く混じっている性欲がびんびんに伝わってくる。
それが啓太らしくって、やっぱり笑っちまった。
◆
啓太のマンションに着いて、今日の荷物を片付ける。その間に、啓太は俺の為に湯を張ると言って、風呂掃除へと向かった。
そこまで酒は飲んでないけど、寝不足とコスプレ疲れが酷い。さっさと寝ちまいたかったけど、湯につかる気持ちよさを想像したら、少しだけそっちが勝った。
だけど、体は正直で…早々に片付けが終わって、ベッドに座りながらテレビを見て啓太を待っていたら、いつの間にか寝落ちいた。
軽く体を揺すられ目を開けると、帰ってきてから1時間は過ぎている。
起き上がれば、帰ってきたままの状態の啓太がいた。お風呂入ろうと声をかけられ、寝ぼけ眼に頷く。先に入っていても良かったのに…。
服を脱ぎ捨てる俺の隣で、啓太も同じように裸になっていった。
「あれ…?」
「一緒に入ろうと思って」
「そうか…」
「ねえ、あおちゃん。ローションって好き?」
「…は?」
段々と覚醒していく意識の中、聞き捨てならない単語が飛び込んできた気がする。ズボンを半分まで下ろして止まった状態で啓太を見上げると、やましいことなど何も無いと言った、純粋な瞳で俺の事を見つめてきている。
「ローション風呂にしてみたんだぁ」
何言ってるんだろう、この人。眠気は一気に吹っ飛んだ。
啓太と共に入った浴室。まず充満している花の香りに驚く。こいつの風呂はこんなにバラの香りはしなかったはず。
「湯船のお湯は使わないでね」
「まじでローション風呂…」
半分ぐらいの量でお湯が張られている湯船の中には、粘りけのある液体が詰まっている。すごい、幼なじみの家で、ローション風呂経験するとは思わなかった。
啓太に促され、とりあえず普通に体と頭を洗う。ついでに、風呂でも使えるメイク落としでもう一度顔を洗い流す。
準備が整った所で、先に啓太が湯船へと足を突っ込んだ。
「ひゃぁあ、すごい、何これぇ…!」
楽しそうに声を上げてつかっていく幼なじみ。若干引くけど、どんな感じなのかは気になる…淵に手を突いて中を覗き込んでから、覚悟を決めた。
滑るから気をつけてねっていう注意を受けながら足を入れる。ぬるぬるしてる温かい物が纏わり付いてきて…気持ち悪いけど、気持ちいい。不思議な感覚に戸惑いながらも向かい合うように腰を下ろす。
男二人で入るには狭すぎる風呂だけど、今の状況だとそんなこと気にもならない。ぬめぬめを自分の腕に擦りつけてみて触感を確かめていたら、向かいから手が伸びくる。
「ぁッ…?!」
塗りこむようにして乳首を触られ、思わず声が漏れる。座っていた体勢から四つん這いへと変えて俺へ迫ってきた啓太は、興奮のせいか息が荒かった。
「あおちゃん…」
寄せられた唇に応えるよう目を閉じてキスをする。帰りがけに中途半端に煽られた体だ、陥落するのはすぐだった。
「ぅ、ぁあ…!」
淵に腕を突いて、啓太の方へ尻を突き出す。自ら入れて欲しいとお願いしているような体勢に少しだけ抵抗はあったけど、中を動き回る指のせいでそんな物はすぐにぶっ飛んだ。
尻からは、ぐぽって下品な音が絶え間なく上がる。ローションまみれのせいで、指の量はすぐに増やされて、すでに三本。広がってる穴は、いつでも受け入れられる程にはなっている。
刺激される度にきゅんっと腹の奥が疼いて仕方ない。
「は…っ、あおちゃん、入れるよ?」
背中から覆い被さるようにして耳元で囁く啓太の声に、頷きで返す。尻の割れ目をなぞっていた熱い物がゆっくり下に移動してきた。とうとう、この時が来た…!
思わず生唾を飲み込む。穴の周りを擦りつけるようにしてちんこで円を描かれ、反射的に穴がぱくぱく動いてしまう。
「ん…ッ、焦らすな…!」
後ろを振り返り啓太を睨み付ける。少しだけ見開いた目と視線が絡んだと思った次の瞬間には、一気に入り込んできた異物感に俺の方が目を見開く。
「あぅ?!」
下半身が熱い。両手で淵をしっかり掴んでて良かった。
焦らすなとは言ったけど、ゆっくり入れるとかあるだろうに…!こいつ、一気に全部ぶち込んできやがった…!
今まで入れたこともない質量に、必死に息を吐き出す。普通だったらここまでデカイ物がこんなすんなり入るはずない…そこはローション風呂様々かもしれない。
「すごい…ちゅるんって入っちゃったぁ…」
耳元で喋る啓太の言葉は、俺に言ってるのか独り言なのか分からない。
動くよ、と囁かれると少しだけ腰を引かれ、戻される。
「ひん…!」
「あおちゃんの中、あったかい」
ぱちゅ、ぱちゅって音が早くなっていく。合わせて湯が揺れて、それもばしゃばしゃ音をあげた。啓太が突いてくる度に、体の揺れと一緒に声が漏れる。
すごい…今までしてたアナニーなんて比べ物にならないぐらいきもちいい…。口なんか開きっぱで、涎が垂れそうなのに閉じられそうにない。
「あっ!ふっ、ああッ…!」
「んッ、あおちゃ、きもち?」
「ぁあ、、ぐっ、ぅう…ん!」
「かわい…」
質問に答える余裕なんて無い。奥まで抉ってくる啓太の動きで、何も考えられなくなってくる。
首筋に何度もキスをしながら、啓太の腕が前へと回ってくると、動きに合わせてぷらぷら動いていた俺のちんこを掴む。
「おちんちんも、触ったげるね」
「やめ、あぁあ、やぁ…!」
ごりゅって突き上げながらちんこを扱かれて、堪らず叫ぶ。刺激が強すぎて逃げるように首を振るけど、どんどんと追い詰められていった。
「ど?は…ッ、きもちい?葵」
「~~~ッ!」
「ッ、こら…!葵ッ、締めないの…!」
ちんこを掴まれた時だってゾクゾクしてるってのに、突然ちゃん付けをやめて、名前呼びをされ、脳天まで電流が走ったみたいに痺れる。その反動で締めちまったせいか、啓太の声も切羽詰まっていく。
「やッ、んあ、け、たぁ…!」
「あー…ッ、くっそ、イきそ…!」
これでも遠慮してたんだろう、今までにない程の早さで腰を動かされ、目の前がぼやけてきた。
それが涙なのか、意識が飛びそうなのか…正直もう分からない。
「あああん…ッ、ぁ、イ、くぅ…!!」
「く…ッ!」
痛いぐらいに握られたちんこから、ぴゅっと精子が飛び散る。その一拍後に、中からあったかい物がぶちまけられる感覚。
俺が覚えてたのは、そこまでだった。
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