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第12話*
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肉厚なそれへ必死に舌を絡みつける。ひたすらに甘い感覚に酔っているようで、理性はとうに手放していた。もっとこれが欲しい、そのことしか考えられない。
唇を窄め吸い上げて堪能していると、角度を変えられてしまった。離れていくのが嫌で、必死に口外へと舌を差し出す。すると、さっきよりも深く口付けてきたユーグにぱくりと食べられてしまった。俺と同じように舌を吸い上げられ、ぞくりと震える。
「んぁ……! ふ……!」
じゅるって吸い上げる音がいやらしくて堪らない……わざと煽るような音をたてられ、目の前の男から与えられる刺激で頭がいっぱいになる。もっと……もっと気持ち良くして欲しい……うっすら目を開けて、舌先まで丁寧に吸い上げてくれるユーグへ更に強請るよう舌を差し出したら、同じように目を開けた相手はきょとんとした顔をしていた。だけどそれも一瞬だ。
緩く口角を上げると、再び舌を食べられる。今度は甘く噛みつかれ、ピリっとした刺激が背筋を駆け抜けた。
「んぁあ……!」
好きな刺激に抑えきれず声を上げるけど、それすらも飲み込まれる。何回か噛みついた後で、口の中全てを舐め回すように舌が動き回った。上顎の部分を突くように舐めあげ、確認でもするかのように歯をなぞり、舌を扱かれる……あまりの気持ち良さに、縋るようにユーグの胸元を掴むだけで精一杯だ。
高低差の為、上を向いているせいで流れ込んでくる唾液はもうどちらの物なのかすら分からない。喉を鳴らしながら飲み込む。与えられるものならば何でも嬉しいと感じてしまう。
何回にも分けて飲み込もうとするんだけれど、すぐにユーグが舌を絡め取るために飲み切れそうになくて……やっと解放されたと思えば、口の周りはベタベタになっていた。
だけど、それに不快感は感じない。それどころか、遠くへ行ってしまったことに対しての寂しさの方が強い。荒い呼吸を繰り返しながら目の前の人物を見上げれば、荒っぽく口を拭っていた。
こんな、キスだけなのに、明らかに体がおかしい……そうは分かっていても、本能に抗えない……いつの間に疼いて仕方ない体をどうにかして欲しくて、目の前の男のシャツを引く。
「ッ、ユーグ……」
「やはり相性も抜群……最早、私たちは運命かもしれないな」
愛おしそうに頭を撫でてくれるユーグの手に、目を細める。撫でてくれてる……なんでそれだけで嬉しいって思ってしまうのか……わけが分からない。だけど、もっと欲しい。そんな気持ちを込めて見上げると、口角だけを上げた笑いを返された。
熱が篭もる瞳は全く笑っていなくって、逃がさないとでも言われているようだ。優しい手つきで撫でていた手を止めると、顔がぐっと近くに寄ってきた。
「さて……それじゃあ、早速私の魔力を溜めてみようか」
「ためる…」
そうだ、契約、したんだ。ユーグの魔力を体内に溜めるって……どうやって……? やり方についてしっかりとした説明は無かった……だけど、口付けただけでここまでグズグズになった体だ。なんとなく予想はつく。
これから起こることに期待でもしているような体に、理性が引っ張られていく。は、っと荒い呼吸が口から漏れた。
「大丈夫……君が想像している通りの方法だ」
「本気、かよ……」
どうしよう、これからこの男と一線を越えてしまうのか……? 男同士なのに、セックスするのか……?
男としての矜持が嫌だと否定している……なのに、顔は勝手に頬が緩んでいく。触ってもらえる……ユーグの魔力を与えてもらえる……想像しただけで体に快感が走った。
力が抜けきり立ち上がれない俺の体を横抱きにしたユーグが、足早に研究室を横切っていく。
当然のようにキッチンのある作業室を抜け、辿りついたのは大きなベッドが置いてある寝室。
壊れ物でも扱うかのようにベッドの中心へと降ろされ、その上へ覆い被さるようにユーグが乗り上がってくる。二人分の体重を受け止めたベッドが軋む音がやけに耳に付く。
煩いぐらいに聞こえるはー、はー、と言う音は、一体何なんだろう……? とにかく、息が苦しい……口元へ手の甲をあてると、信じられないぐらい熱い息が耳障りな音と一緒のタイミングで感じた。
ああ、そうか……これ、俺の呼吸音だ……
「安心してくれ、マコト。私が、死ぬほど君を気持ち良くしてあげよう」
綺麗な瞳を細めて囁かれた言葉に、どうしようもなく興奮してしまった。
◆
「ぁ……ッ、や、め……!」
「おや……私との口付けは、そんなに気持ち良かったかい?」
胸からなぞるように降りてきたユーグの手がズボンに掛かったと思うと、一気に下着ごと引き下ろされてしまった。
勢いよく出てきた自身の物は、痛いぐらい硬くなった状態で腹に付く程に反り返っている。ひやりとした空気に触れたっていうのに、萎えること無く上を向き続けている。
「ぅ、あ……そんな……」
赤く腫れ上がった先端からは、トロトロとした汁が溢れ、いやらしく濡れていた。ユーグの視線を感じ、更に興奮して……止めどなく溢れた汁がぽとりと垂れて、俺の腹の上を汚す。
しとどになっている自身の先端からは、かなり前から漏れ出てしまっているようだ。与えられる刺激に夢中で全然気付かなかったけど、下着なんて使い物にならないぐらいだろう。
痛く腫れ上がってる自身があるって理解出来てるのに、性別でも変わったんじゃ無いかと心配になるほどだ。
「んぁ?!」
「大丈夫、君はきちんと男の子だよ?」
いきなり反り上がってる物の根元から冷たい液体を掛けられて、思わず高い声が上がる。女みたいな声が恥ずかしくて咄嗟に口を抑えた俺に、くすくすと笑いながらユーグが声を掛けてきた。
高い位置からたっぷりと垂らしたとろみのある液体を止め、蓋をするとその辺へ投げ飛ばし……優しく下っ腹あたりを手のひらで円を描くように撫で上げられる。じんわりと温かい何かが流れ込んできて、ゾクゾクと背筋に鳥肌が走っていく。必死になってそれに耐えている俺をあざ笑うかのように、手のひらはゆっくりと睾丸の裏あたりまで移動していくと、今度はそっと指でなぞりあげられた。
「ひ……ッ?!」
なぞられただけなのに、むず痒い刺激が走る。状況に追いつけないでいる俺に構うこと無く、ユーグは指を進めていった。後ろの窄まりまでやってくると、上から垂れてきている液体を馴染ませるように指を動かしていく。
排泄だけでしか使わないそこを弄られているなんて、不快なだけのはずなのに……言いようのない快感に小刻みに腰が揺れてしまう。
そんなところに入れるなんて大丈夫なのか……不安になりながら下半身へ視線を向ける。さすがに自分の窄まりまでは見ることは出来ないけど、ユーグの掌がこちらへ向けられたことに息を飲む。
「やめ、汚いから……!」
「大丈夫、すでに洗浄済みだ」
「は……?」
言っている意味が分からず聞き返した瞬間、窄まりの中へと指が入ってきた。遠慮無く進んでくる指は明らかに異物のはずなのに、体に痛みは全く無く、歓迎するように飲み込んでいった。
「ッ、ぅう……!」
「分かるかい? 私の指が、君の中へ入っているんだ」
嘘、だろ……? 指入れられてるだけで気持ちいい……!
温かい何かが流れ込んでくる感覚がして、体がユーグの魔力を欲しているみたいだ。戸惑っている俺の様子を伺いながらも、ユーグはゆっくりと指先を動かした。指の腹で擦るように触られ、強い快感に唇を噛む。気を抜けばだらしなく喘ぎ声が漏れてしまいそうだ……!
これ以上を知ってしまうと、本当に後戻り出来なくなる……本能的に感じた恐怖に、止めて欲しいと首を横に振る。ユーグのことだ、絶対に分かっているはずなのに……彼は、優しいぐらいの微笑みを浮かべると、更に中を掻くように指を動かす。
「んぁあ?!」
ある一点を掠めた瞬間、信じられない程の刺激が走った。腰が大きく跳ね上がり素直に反応をする体のせいで、触らないで欲しい場所などバレバレだ。
ここかな? と確信したように何度もそこを擦り上げられる度に体が震える。
「や、めぇえッ、ふ、ぁあッ!」
停止を求める為に開けた口は言葉なんか紡げるはずも無く、ただ嬌声が漏れる。触られる度に気持ちよさが増していくようで、どんどん頭がぼやけていってしまう。
「ひぅう?!」
何の遠慮も無く指が増やされると、2本でさっきと同じ所を擦り上げられた。痺れるような快感がダイレクトに伝わってきて苦しい。
同じような動きが止まると、今度は2本の指が交互に掻き乱される。大きく動いたせいか、窄まりが広がって、水音と共に空気が抜けるような音まで聞こえてきた。
「や、あぁっ、やだ、ぁああ……!」
口を押さえていた手は、いつの間にか必死に頭上の枕へ爪を立てている。気持ちい場所を止めること無く擦り上げてくるせいで、震えが止まらない。
キツく目を瞑りながらなんとか溺れ始めた体を繋ぎ止めようとしている俺へ、無情にも更に指は追加された。
「ぐ、ぁあ……!」
少しだけ引き抜いた後に、今度はゆっくりと入ってくる……段々と広げられていく感覚が分かって、今、有り得ない場所に入れられているんだと再認識させられる。
「マコト……大丈夫、力を抜いて…」
短い呼吸を繰り返す俺に、優しい声が降ってくる。繰り返し告げられる指示に、縋るような思いで従っていく……大丈夫、そう言われると不思議と大丈夫な気がしてくる。
しっかりと収まった指が大人しかったのは一瞬で、さっきの優しさを忘れたかのように弱い所を擦り始めた。
「ぁあッ、あああ! や、あああ……!」
グチュ、グポ、と、本来なら鳴るはずの無い水音が有り得ない場所から聞こえる。激しさを増していく動きに、閉じているはずの目がチカチカし始めた。膝を立てている足のつま先へ力が篭もる、やばい、イってしまいそうだ……!
もう少し、あと少しだけ攻め立てて欲しいと、高く腰を上げたのに、急に指の動きが止まってしまった。
「は、んぅ……」
辛いほど切ない窄まりから、ユーグは指を抜いていってしまう。
なんでだよ……?! 目を開ければ、既に視界はピント合わずぼやけていた。苦しいぐらいの呼吸を繰り返しながら必死に問いかけようとしていたら、太ももを持ち上げられた。
「ふ……ッ、入れるよ?」
先ほどより大きく背中を浮かせるような体勢になり、ぷらりと足が宙に浮く。と思えば、指よりも熱くて硬い物が一気に押し入ってきた。
「がッ、ぁああ、~~~~ッ!!!」
最奥まで貫かれる感覚に息が止まる。火傷するんじゃないかって程熱い物を体が一気に吸収すると、限界まで引き上げられた快感が爆発した。
弓なりに体がしなり、腹に熱い何かが撒き散らかされる。必死に奥へ植え付けようと腰が揺れる。
「ぁ……、あぁ……」
「こら、マコト……!」
解放された熱に浮かされながら声の方へ視線を向けると、苦しげに眉を寄せた美形の顔があった。それでも、目が合えば彼は笑う。
その苦しげに笑う表情から漂う色気が凄い……その色気にあてられたように、敏感な体が再びぶるりと震えた。
「入れた瞬間に達するなんて、酷いじゃないか」
そんな……まさか、尻に入れられて、イったのか、俺……息を整えながら見た腹の上では、白い物がぶちまけられ、未だに自身から同じ物が溢れている。
「そん、な……」
初めてなのに、こんなことってあるのか……絶句している俺へ、今の状況を思い出させるかのように太ももが更に持ち上げられた。
「んぁ……!」
ぐりっと中を抉られ無防備な声が漏れる。そうだ……まだ、入れられたばっかりなんだ……思い出せば、興奮を抑えきれず唾を飲み込んだ。
「私も、簡単に持って行かれてしまいそうだよ……」
「なに、言って、」
「これも、私たちが相性の良い証拠かな」
「ッ、ああ!」
円を描くように動いたせいで、甘い痺れが走る。どうしよう、これだけでも気持ちいい……だけど、もっと中を抉って欲しい……歪む視界でユーグを見上げたら、俺の太ももを肩へと掛けてから、ペロリと自身の唇を舐める。
「まずは、中に出してどれほど溜まるのか……試してみようね」
「ぁ……、」
「動くぞ」
そう宣言するよりも早く、俺の中に埋まっていた硬い物が外へと抜けていく。出っ張りが引っかかる所まで抜いたところで、ゆっくりと元の位置に戻ってきた。
「あ、ああああ……!」
擦れてる……ユーグのが擦れて、とろりとした物が流れ込んできて、どうしようもなく気持ち良くて……だからなのか、体を気遣うようなゆっくりな動きが物足りなく感じてしまう。
「ユー、グ……ッ!」
もっと、動いてくれ……! 本当はそう言いたかったのに、実際は名前を呼ぶだけで精一杯で、そこまで声が出なかった。それでもしっかり伝わったのか、口の端だけを小さく上げたユーグは、スピードを上げていく。
入れる時一気に全部をぶち込んだ男だけあって、押し入ってくる度に、更に奥へ入り込もうと腰を打ち付けてくる。
「んぅッ、あああ、あぁッ、あ゛ああ……!」
俺の為ではなく、ユーグ自身の欲望のままに動いているってのに、恐ろしいぐらいに体は快感を拾ってしまう。まるで、中からユーグに塗り替えられていくようで……溢れるような熱に、腹の奥が疼く。
この渦巻いている熱をどうして良いのか分からない……自然と右手は自分の局部を触れていた。
「ぁあ、んんッ、くッ、ぁ……!」
中を大きく叩きつけられながら、再び勃ち上がってしまった自身を擦り上げる。先の割れ目辺りを触っていた指が、ユーグの突き上げによって滑り強く擦れてしまい、目の前に火花が散った。
「あ゛ぁあ……?!」
こんなの、いつも通りの自慰じゃもう満足出来そうに無い。それぐらい強い刺激に爪先が伸びる。気持ちいい、もう止めて欲しいぐらいに気持ちいいのに、何かが足りない……
「予想、以上だな……!」
蕩けだした頭じゃユーグの言葉を理解することは到底無理だ。もっと、もっと欲しい……ユーグの魔力を、体の中へもっと入れて欲しい……!
「あッ、ちょう、だい……! ユーグの……ッ!」
「いいとも、受け取れ……!」
「イく、イっ、ぁああああ……!!」
一際強く右手で扱けば、再び自身の先端からは熱い液体が飛び散る。イった感覚に腰が揺れ、勝手に中を締め上げたら、ユーグからも噛み殺すような悲鳴が漏れた。
勢いよく相手に腰を打ち付けられた途端、腹の奥に今まで一番強烈な甘い痺れが走る。ユーグが小さく痙攣しながら、俺の腹の奥へと熱い物を吐き出している……それを、待っていたかのように、切ないと感じた場所が震えた。
中に出して貰った魔力を少しでも吸収しようと、奥が動き、体中に甘い痺れが広がる。まるで、ドロドロに甘い毒が体中に回っていくようだ。
視界がぶれる……思考が蕩ける……全身が性感帯になったみたいだ……
「あぁ……、ん……」
「は……ッ、大丈夫か?」
中に入っていた物を引き抜き、覗き込んできたユーグが何かを言っている。軽く頬を触られた感覚にすら体がビクつく。
「飛んでしまったか……? それほどとは……光栄だよ」
あめ玉みたいな瞳が満足そうに笑っている。
ああ、ユーグの魔力は、甘すぎるイチゴジャムみたいだなあ……胸焼けしそうな程甘いのに、癖になってしまいそうだ。
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