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《キスの意味》
「どうしたんだ?大丈夫か?」
挙動不審な様子をみて、小さく首を傾げ心配するあずま。
「ちょっとお願いがあるんすけど」
「なんだ?」
「俺のこと嫌いにならないでもらえます?」
「え?なるわけ無いだろ?」
こんなに良くしてもらえたのだから…
「本当に?何しても?」
「??あ、あぁ、世話になってるし…」
「……あずまさん!」
頷いたのを確認して、ぎゅっとあずまを抱きしめる。
そうして、少し力を緩め、困惑するあずまを見つめ…
優しく口づけを落とす。
「ん!?…ちょ、敬大…ふ、っ、んっ?」
「……静かに」
驚くあずまの耳元で囁いて、さらに柔らかな感触を味わうため、その唇を舐め、吸いつくよう、二度三度とキスを続ける。
「ん、ん??」
「あずまさんの唇、柔らかい」
「お、落ち着け、どうしたんだ」
「…どうしたと思います?」
「…よ、欲求不満?」
「ぶっ、」
天然な答えに吹き出してしまう。
「こんなおじさん相手にしなくても、お前なら若い子で、相手はいくらでもいるだろう?」
「……俺、あずまさんがいいんです」
「は?」
「意味わかります?」
大学生がおじさんにキスをする意味…
「意味?ギャグか?」
「ぶぶっ!ダメだ、あずまさん天然すぎる!」
「なんだ、からかうなよ」
「からかってなんかないんすけど、ま、いいか、ごはんにしましょ!」
とにかく、あずまと初めてキス出来て、あまり嫌がられなかったためテンションがあがる。
「あぁ、けど、それは食べなくても…」
「せっかくだからいただきますよ、結構うまそう、ありがとうっす」
「あ、あぁ」
自信がないのか、若干不安そうなあずま。
「じゃ、先にこっちもいただきます」
雰囲気を変えようと、すっと、あずまの後頭部を支え、柔らかい唇へ、キスを落とす。
「ん、敬大っ!」
驚いて顔を赤く染めるその表情が可愛くて、つい心の声が漏れてしまう。
「はは、可愛い」
「は?」
今、可愛いって言われたような…
首を傾げるあずまに、そのまま笑って誤魔化しながら料理に箸をつける。
「ん、美味しいっすよ、本当にありがとうございます、材料費、渡した二千円使いました?」
「あぁ」
「じゃあずまさんは晩飯食べました?」
「いや、敬大くんのお金だから、」
やはり食べずに待っていたあずま。
「もう、じゃあずまさんの分、買って名前書いときますから、明日はちゃんと食べてくださいね」
「いや、そこまで世話になれないから」
「いいんです!あずまさんが太るまで食べさせ続けますから、覚悟してくださいね!」
「え?」
「じゃこれ食ったら、風呂入りましょう、手伝いますから!」
「ふ、本当に変わった子だ、…ありがとう」
今時珍しい世話焼きな青年に、呆れたようにくすくす笑いながらも感謝する。
「どーいたしまして」
そうして、このかわいいおじさんをほっておけなくて、あずまの世話を焼きつつ同じ時を過ごしていく。
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