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《太らせたい》

午前中の講義を終えて、昼飯を二人分調達して急いで自転車を飛ばしてアパートに戻る。 「ただいま!あずまさん!」 「あ、おかえり」 「はぁ、良かった。昼ごはん買ってきましたよ!俺チョイスで申し訳ないっすけど」 とりあえずあずまがアパートに居ることに安堵しつつ、テーブルにコンビニ弁当を広げる。 「ありがとう、充分だよ」 「うん、じゃ食べましょ!いただきますー」 「あぁ、いただきます」 ただのコンビニ弁当だけど、あずまは一口一口味わうように、ゆっくり食べる。 その姿を見るのもなんだか嬉しい。 「とりあえず洗濯物を洗って干して、乾燥器に入っていた洗濯物はたたんでここに置いているから」 「ありがとうございます、助かります」 「掃除はまだ途中だから、少しずつやるよ」 「あ、ゆっくりでいいっすから」 「他にやることがあれば言ってくれ」 「了解っす、とりあえずご飯いっぱい食べて太ってください、それ最優先で!」 ひょろひょろのあずまに肉をつけたくて、そうお願いしてみる。 「それは…、ありがとう」 柔らかく微笑みお礼を言うあずま。 そんな様子をみて、幸せな気分を味わう。 あずまが笑うと嬉しい。幸せでいて欲しいと思う。 そうして午後の講義も終わり、野球の練習をニ時間ほど汗を流して、再び自転車で家路を急ぐ。途中、薬局であずまの髪染めと歯ブラシを買って帰る。 「あずまさん!ただいま!」 「あぁ、おかえり」 穏やかに迎えてくれる姿に安堵しつつ。戦利品を見せる。 「毛染め買ってきましたよ」 「え?」 「早速しましょう、それで乾いたら一緒にラーメン食い行きましょうよ、今日バイト休みだから」 「いや、いいよ、ラーメンを店で食べれるほど金を持っていないんだ」 「何言ってんすか、俺の奢りに決まってるでしょ、」 「いや、悪いから」 「俺、まだ大学で一緒に食べに行けるダチできてないんであずまさん付き合ってください」 「……そのお金はどこから出ているんだ?親御さんの仕送りなら」 「俺のバイト代っす、だから気にしなくていいから」 「けれど、」 「あずまさん、申し訳ないと思うなら、俺の好きにさせてください、俺、あずまさんと一緒にいるの楽しいから、俺のわがままに付き合ってくださいね」 あずまに使う金なら別に惜しくない。 「……こんな、優しい人間もいるんだな」 「あずまさんが優しいから俺も優しくしたくなるんスよ、じゃ、とりあえず風呂場で毛染めしましょう、ビニール袋持ってくるから脱衣所で待っててくださいね」 「わかった、ありがとう」 そうして、俺チョイスの濃いブラウンに毛染めして、バラバラしていた襟足を揃えて切ってあげた。

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